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第1章14話 金貸しミノル


 応接間にヘンドリックス辺境伯は斉藤ヘルンブルグ支店長と一緒にやって来た。


「護衛の方は?」


「要りませんよ。斉藤さんに守って貰いますから」


 ヘンドリックス辺境伯は明るい40歳くらいの人で黒髪で、もみあげがカッコ良い。

 陸奥銀行の斉藤さんは護衛出来るとは思え無い、やはり40歳くらいの中間管理職風の少し頭髪が薄めの人だった。


「あなたが私に救いを申し出てくれた方ですか?」


「うちのミノルです。宜しくお願いしますよ」


 フレードリッヒ叔父さんが紹介してくれる。


「陸奥銀行の箕輪です」


「今日はお世話になります。ノアさんにハリーさんですよね。お久しぶりです」


「緊急状態なので、いきなりですが借財はどのくらいです?」


「4670億デルです」


 箕輪さんが俺を見て確認する。


「良いですよ」


 ヘンドリックス辺境伯の安心した顔を見ながら箕輪さんが


「では条件の説明をします」


 先ほどしていた条件を話し始める。


「利息5%で良いのですか? とても助かりますが、申し訳ないです。返済期間の最長のが12年、最短が7年です。5%なら相当楽になるので借り換えは他に頼めると思います」


「当行も協力しますよ。今の状況を長く続ける力は国には無いでしょうから」


 斉藤さんも将来の協力を申し出る。


「私もそう思います。兎に角、この緊急状態を乗りきってしまいましょう。後はどうにでもなりますから」


「では預金の移動にうちの支店に」


 箕輪さんが言うと、


「先に支払って貰えるのですか?」


 とヘンドリックス辺境伯。


「良いですよ。信用してますから」


 と俺が言う。


「助かります」


箕輪さん、斉藤さん、ヘンドリックス辺境伯と俺で銀行に向かうと、


「ハリーさん、近いうちに寄ってください。穀物売却の相談をしたいので」


「ホフマン辺境伯。今回は有り難う」


 支店に飛んだ。


「4670億デルですね」


 箕輪さんが魔道具を操作した。


「確認してください」


 銀行プレートをヘンドリックス辺境伯に渡す。


「契約は書類が揃う二日後で。斉藤さん作って貰えます?」


「出来ますよ。おまかせください」


「ミノルさん。是非気軽にヘルンブルグに来てください。ゆっくりと話しもしたいですし。念話をオープンしていただけますか?」


 念話友がまた増えた。


「では二日後にまた」


 二人はあっと言う間に帰って行った。

 一つ解決。


「もう一つはどうなったかな。戻りますか」


 箕輪さんと俺は応接間に飛んだ。



 シュナイダー辺境伯はそこに居た。

 30歳を過ぎた辺りの金髪で長身のイケメンオジサンだ。

 隣に居る45歳くらいの中肉中背の日本人は銀行の人だろう。


「お会い出来て光栄です。シュナイダー辺境伯です」


「ミノルと申します。宜しく」


「今回は、借財の肩代わりをしてくださるとの話しで」


「はい、フレードリッヒ叔父さんのご友人の力になれればと思いまして」


「友人など、とんでもない。若輩者に過ぎません」


「箕輪と申します。陸奥銀行ホフマブルグ支店長です」


「山形と申します。陸奥銀行シュテンブルグ支店長です」


 山形さんが俺に挨拶をした。頭の良さそうな人だ。


 シュナイダー辺境伯の借金は4430億デルで、最短が三年で最長が8年。最短は状況が許さない場合、借り換えの面倒は俺が見て残りは出来るだけ陸奥銀行さん。利息は5%に下げてあげるということで決定。

 貸しはがしに参加した御用商人は全員出入り禁止で、後をマイヤー商会が引き受けるということになった。

 シュナイダー辺境伯は大喜びで三日後契約、本日お金の先渡しで帰って行った。

 俺の念話友がまた一人増えた。


 銀行から帰っで来てフレードリッヒ叔父さんに顔を出した。


「ミノル、ご苦労様。今回の件はとても助かる。王室はこれで三辺境伯に強く出れなくなった。政治的にはすごいことなんだよ」


「お役に立てれば、それで良いことです。別に必要なお金では無いので」


「うちも仕事させていただき、助かりました」


「いえ、ハリーさんが稼ぐと私にも入りますから」


 3人で笑いながら話していると、本当に暗躍しているような気分になる。


 ノア兄さんは、今日ひたすら念話で誰かと話しをしている。

 凄く忙しそうなので、余計な声を掛けないことにした。


「辺境伯様も大変忙しいところ、時間を割いていただき有り難うごさいました」


 ハリーさんは今日の書類の決済をすると言って帰った。

 俺も叔父さんの邪魔をしないよう、自分の部屋に帰った。

 まだ昼前だ。大仕事をアッサリと終わらせた周囲の人達の有能さに、改めて感心した。

 まだ17歳になっていない自分が能力不足なのは仕方ないのだ。

 などと言い訳と自己暗示をかけて、武装フル装備で冒険者ギルドに行くことにした。


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