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第1章13話 聖樹の種


 昨夜ダニエルは帰って来なかったようだ。

 朝食で誰もダニエルの話しをしない。マズイ雰囲気だ。

 念話で連絡しても返答無し。


 9時に銀行に行った。


「お早う御座います」


 ハリーさんとパトリックさん番頭さんは既に来ていた。


「おはよー。今入った情報。ヘンドリックス辺境伯が軍を用意してるらしいよ。シュナイダー辺境伯も同様らしい」


 箕輪さんが、にこやかに言う。


「どちらも今回の。王立銀行主導の借金取り立て問題ですかね?」


「それしか無いでしょう。ここをホフマン辺境伯主導で丸く納められれば、政治的にはホフマン辺境伯の大勝利ですが」


 ハリーさんが腕を組んで考えながら言った。


「三家は仲は良いのですかね?」


「悪くは無いと思います。三家とも同じ派閥ですから。私も全辺境伯領に店を出してますが交易も程々に有りますし。どちらも特別大きな商人が居ないのが弱点ですね」


「じゃ、これ丸く納められればハリーさんが利益を出せます?」


「良い状況になるとは思います。どちらも辺境伯は助かっても、大手の商人は潰れる可能性は高いでしょうから」


「ハリーさんの予想は当たりと思うよ。あそこの辺りの商人は資本が無いのに手広くやり過ぎてるし、辺境伯も利用する事ばかり考えて助ける気は無いと言うか余裕が無い」


 箕輪さんは話しながらサイン場所を指差す。


「どのくらいの借金額との予想です?」


 俺はサインしながら質問した。


「そうだね両家合わせて1兆くらいかな。ホフマンさんより、どちらも小さいから。これと次のページにもサイン」


「1兆出しても良いけど、説得できます? 顔潰さないように」


 指示された場所を探していると、ハリーさんが指差して教えてくれた。

 箕輪さんはサインを確認しながら、次の書類をハリーさんに渡す。


「私が言ってみても良いですけど、最初にホフマン辺境伯の許可と言うか作戦をしませんと」


「そうですよね。ミノル君ここも。やはり1兆あれば間に合うみたいよ」


「サインする場所多いですね。借金は肩代わりして、返済期間を元に戻してあげれば良いですかね」


「サインは少ないくらいなのよ。これで。ここもねサイン。利子も少し安くしてリスク減らしたら良いかも。5%くらいで」


「5%なら飛びつくと思いますよ。今7%以上取られてると思いますから。その代わり、あまりに返済期間の長いのは短縮して貰うとか」


「そうね。でも貴族の借金は短期で利息の高いのが一般的で、借り換えして生き延びるのよ。次の借り換えは他で、金貸しでは無いのでというかたちで念押しとくとかね。うちの銀行もかましてくれると嬉しいなー」


「当然、陸奥銀行さんが影で中心にならないと、王立銀行がまた悪巧みしますよ。今回のは王国の貴族潰しだと思いますから」


「これで書類揃いましたかね。じゃ契約成立ということで」


「こんな話ししながら契約は始めてですけど、楽しいですね」


 ハリーさんが笑って言う。


「これ、契約成立の記念というかお礼と言うか。昔、辺境伯の館裏に有った聖樹の残した種と言われてます。3粒有りますがどれか生えるかもしれません。なんせ200年前の種ですから。森の真ん中あたりでウロウロすると、種が植える場所で光ると言われてます。埋めて聖水をかけるのだそうです」


「有り難うごさいます。昨日この聖樹の話しを聞いたばかりなんです。早速光る場所を探してみます」


「それと、これも。ダガー必要でしょう。ミスリルですから切れますよ。お使いください」


「貰ってばかりで申し訳ないです」


「気にしないで。それよりお互いに念話オープンにしませんか?」


「是非! 喜んで」


「ミノル君。俺ともしない?」


 ハリーさんと箕輪さん。念話友が二人出来ました。


「じゃ、ホフマン辺境伯に連絡して説得しますか」


 箕輪さんが気軽に言った。


「そうですね。早い方が良いですね」


「最初は三人で話した方が良いでしょう。話しついたら呼んで下さい」


 俺は大切な聖樹の種を仕舞いに部屋に帰った。

 種を引き出しに仕舞って、さっき貰ったダガーを見る。

 黒の鞘から抜き眺める。グリップも黒の美しいミスリルのダガーだ。

 大切に使おう。

 剣帯に付けると重くなるので、ダガーをズボンのポケットに入れた。



 ハリーさんから連絡で箕輪さんと館の応接間に居るので来るようにと言われた。

 階下の応接間に向かう。

 扉の前に執事のフィンさんが待っていた。


「ミノル坊ちゃんです」


 宣言して扉を開けてくれた。


 ノア兄さんも居た。


「朝から暗躍しているようだな」


「暗躍なんて、叔父さんの立場が強くなるならプラスかなと」

「うん、上手くいけば確実にプラスになる。相手が拒否しても、こっちは困らない。奴らが破産するだけだ。顔を立てろと言われても、どう立てたら良いのかわからん。それよりミノル、良いのか? また1兆デルだぞ」


「構わないです。これでハリーさんも箕輪さんも仕事になるし、叔父さんの力が強くなれば王国も少しは大人しくなるかもしれませんし」


「そうか……提案してみるか」


 フレードリッヒ叔父さんが念話を始めた。


「ヘンドリックス辺境伯がお願いしたいそうだ。相当参っているようだ」


「交渉は箕輪さんお願いしますよ」


「いいよ。すぐ来られるのですか?」


「来るそうだ。今、陸奥銀行の口座開設している」


「斉藤さんか」


 箕輪さんが念話を始めた。



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