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第1章12話 医療汚職


 館に帰ってマントを脱ぎ、ポケットの中の武器を机に並べる。

 今日も中剣の出番は無かった。どこかで使ってみなければと思いながら、風呂に湯を張る。

 ここは国の東南辺りにあるので、暖かく汗をかきやすい。

 熊騒ぎでホコリだらけで、治療で脂汗のダブルパンチ。

 汚れを落としてさっぱりする。

 歯を磨いてから、ミリーさんが洗って置いてくれたものに全部着替えた。

 また黒ずくめになって、ブーツも代える。磨いてくれたようでピカピカしている。

 靴の中は乾いていたほうが気持ち良い。

 短剣を装備してカンペキ。


 ベランダに出て新鮮な空気を吸うと、気分も良くなる。

 明日は怒られないように過ごさないと。

 また近くの木の枝をターゲットして魔法の練習をする。

 初級レベルの魔法を連射するのは、少し上手くなった。

 俺の部屋は裏の森に近いのでターゲットには困らない。

 火魔法を使う場所が無いよな。


「30分後に夕食となります」


 ミリーさんが夕食を伝えて、汚れた服とブーツを回収した。


「正門で今日も活躍なされたそうで。怪我に気をつけてくださいませ」


 もう伝わっている。晩ご飯は目立たないようにしていないと。


 ファイアーボールを空に向かって打っみる。これなら危なくないだろう。

 夕空にファイアーボールの連射は綺麗。

 どの魔法でも、こめかみの辺りから発射できるようになってきた。

 これなら両手が空くので便利だ。


 時間になったので階下に向かう。


 食堂には皆さん既に居て俺が最後だった。今日もピーター騎士隊長とアデル魔導剣士が来ている。


「遅くなりました」


「いや、儂が早いのだ。聞く報告が多かったのでな。ところでミノル、また派手にやったようだな」


「いや、あの……弓の練習がしたかったので……」


 全員に大笑いされた。

 話しを逸らさないと。

「実は、ピーター騎士隊長にも伝えたのですが、熊騒ぎの件はギルドから警備隊隊長に報告して討伐依頼を家宰に出すように依頼したのに握り潰しが行われたみたいです」


「儂もさっき聞いた。ピーター騎士団隊長が現在調査中だ」


「それだけじゃ無いのです。警備隊のピンハネが横行してるようなんです」


 俺は熊を研究名目で没収状態にされた事をギルドの明細を見せ説明した。

 フレードリッヒ叔父さんもピーター騎士隊長も明細を見て驚いている。

 医療許可を利用した不正の可能性も伝えた。


「儂は医療許可のレベル引き上げなど始めて聞いたぞ」


「私も始めて聞きました」


 とピーター騎士隊長。


「ノア。即座に是正せよ。騎士団隊長は警備隊隊長を確保。これだけ証拠があれば問題無いだろう」


 ノア兄さんとピーター騎士隊長は念話で誰かと連絡を取り始めた。


「アイラス教団が全ての原因になっているようですね」


 と俺が言うとフェン兄さんも同意する。


「昨夜の襲撃だって怪しいと思う。貴族や軍ならあんなやり方はしないと思う。ナンカ芸風が違う。キチガイじみている気がするな」


 フレードリッヒ叔父さんも頷いて俺を見ると。


「さてミノルよお前なら、どう対処する?」


 叔父さんはニヤニヤと俺を見ている。


「また僕ですか?」


「ミノルの意見が一番面白いからね」


 フェン兄さんがからかう。


「そうですね、医療許可をレベル60に戻す前にアイラス教団に調査を入れ、レベル70以下で医療を行った者や診療拒否をした者は逮捕し罰した上で領外へ追放します。ギルドで聞いたら医療許可を持った者は診療施設を開いた場合、余程の理由が無い限り医療拒否を出来ないとか。状況が酷い場合はアイラス教団の医療部門を閉鎖します」


「面白いミノル、いいよそれ。ジワジワと脅す。貴族だわー」


 フェン兄さんが乗っている。

 叔父さんは眼をつぶって考えている。


「枢機卿がうるさいだろうな。でも、やってみるか。舐められたまま引き下がる訳にもいくまい」


「警備隊隊長は逮捕しました。熊の没収状態を作った者を現在調査中、確認次第逮捕予定です」


 ピーター騎士隊長は報告を入れる。


「今晩中にアイラス教団に調査。調査結果により関係者の逮捕も許可する」


 叔父さんの大英断でピーター騎士団隊長は忙しそうだ。


「医療許可のレベル引き上げの件は三年前に家宰の独断で発行したようです。辺境伯のサイン無しの命令書を発見しました」


 ノア兄さんが報告する。


「どこまで癒着が出てくるのかのう」


 フレードリッヒ叔父さんがウンザリした顔でつぶやいた。


「森の調査は一応終わりました。大熊二頭とオークメイジを討伐。明日も調査を続行しますが、猟師が入れる状況にはなっていると思われます」


 アデルさんの報告に叔父さんは満足しているようだ。


「オークメイジも居たのですか」


「何かきな臭い気がするな」


 アデルさんが応える。


「一度に色々起き過ぎですよね」


「ミノルも毎日大活躍だしな。たが熊4頭に雷神は派手過ぎだぞ」


 アデルさんが俺を見てニヤニヤする。


「スミマセン……」


「そろそろ許してやれ。ミノルの活躍が無ければ今日の進展も無かった。明日は何をする?」


 叔父さんが笑いながら聞いてきた。


「明日は銀行でハリーさんと契約ですので、騒ぎは起こしませんので……」


 大笑いされた。


「ミノルお母さんは鼻が高いわ。一人で大熊の大群を相手出来る子なんて滅多に居るものではないのよ」


 今日、初めて誉められた。嬉しかった。叔母さんだけは子供の頃からいつも味方してくれる。ドジが多い俺としては本当に有り難いと思っている。


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