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第1章10話 雷神!


 食堂の椅子を三脚借りて寝てもらい、ノレルさんのローブを上げ足を出す。

 怪我以来、痛くてズボンが履けないのだそうだ。

 透視で見ると、幸運にも単純骨折らしい。

 洗浄と殺菌を魔法でしてから触ってみる。まだ大丈夫そうだ。

「単純骨折くさいですね。治して良いですか?」


「治るなら是非!」


 足を引きずって移動してたので少し悪化している。

 手で出来るだけ元の位置に骨を移動して出来上がりを想像する。こんなモンかな?


「では、いきますね」


 頭の中で柏手を打って拝みながら治療魔法を発動すると、足の患部が青く光り出す。光りが無くなるまで、治りますようにと心で唱えていると光らなくなった。透視で見ると治っているように見える。


「ゆっくり立ち上がってください」


 ノレルさんは恐る恐る立ち上がった。少し動いてから、軽くジャンプまでしてから。


「ありがとうこざいます! ミノル坊ちゃん。これで、また食べていけます」


 周りから拍手が聞こえる。見物人がけっこう居たようだ。

 さて、狩りにでもと思って立ち上がると、ジグロさんが申し訳無さそうに


「この子達も治してみて、いただけませんか? このままだと、この子達は路頭に迷いかねない状況なんです……」


 結局、追加で12人治した。


 まだ午前10時くらいだったので狩りに行くことにした。


「ではこれで。狩りでも行こうかと思いますので」


「坊ちゃん狩りは、どこで?」


 ノレルさんが心配そうに聞いてくる。


「街の右手の森にでもと考えてます。新人ですから」


「危ないですよ。あの森の熊が魔獸化して大型になっているのです。私もあそこで怪我したのですから。森の外を大型の奴がウロウロしてます」


「数匹が魔獸の森から来たらしいのでが、一匹が怪我すると数匹が森から飛び出して来て猟師や冒険者を蹴散らすらしいのです」


 とジグロさんも補足する。


「軍隊を出すようにホフマブルグ警備隊隊長を通して家宰様に御願いしたのですが、魔獸化した大熊くらい冒険者ギルドが狩ると言っていたと軍を止めているという話しも聞こえる始末でして……」


「門の辺りから見るだけでも、したいので行きます」


「じゃ私が案内しますよ、今日はギルド員がお世話になりましたし」


 断ったのにジグロさんが一緒に行くことになった。


 ジグロさんとテレポートで正門に着くとピーター騎士隊長が居た。


「ミノル坊ちゃん、おはようございます」


 挨拶したついでなので先程聞いた家宰と警備隊隊長が魔獸化した大熊の件を、握り潰している可能性を話しておいた。

 ピーター騎士隊長は慌てて念話を始めたようだ。


 警戒で見ると大熊は森から出て正門との中間くらいに居るようだ。

 正門の小さい扉に行き、ホフマン家のプレートを見せて開けるように言う。矢入れを背負いミスリルの弓を持って待つ。

 遅い。


「ホフマン家の命令が聞けませんか?」


 脅したらすぐに開いた。

 俺は開いた扉から飛び出し、少し扉から離れた場所で大熊を見る。

 大熊は既に俺に向かって走っている。

 100メートルくらいかな?

 矢入れから二本矢を抜き弓をゆっくり抜き狙撃スキルを発動、大熊は早いスピードで近づいてくる。

 矢を放ち、二本めの矢を引く、一本めが当たったようだ。大熊がもんどりうって倒れた。次の4頭が走って向かってくる。

 俺は加速スキルも発動して矢を放ち、矢入れからまた二本矢を抜く。

 二頭めが倒れるのと三本めを打つのは同時、即座に4本め、矢入れからまた二本矢を取った時、ピーター騎士隊長とジグロさんが剣を抜いて走り出して来た。スローモーションに見える。


「ミノル坊ちゃん無謀です!」


 無視して次の矢を引くと今度は6頭来る。少し押され気味なので三本取って打つ。

 スピードアップして打っているのだが、次のが10頭以上走り出しいるのが、警戒で見えている。

 残りのを片付けた最後の一頭は10メートル手前くらいだった。

 矢で片付けるのは限界だなと思っていると、騎士団が飛び出して来た。


「ミノル坊ちゃんに負けるな! 弓隊構え。後方の大熊大群を狙え! 射程圏に入るまで待て……もう少し……打て!!」


 ピーター騎士隊長の命令口調がカッコ良い。


 俺はその時大群の一番後方を走る特大熊の上に何か見えないのがいるのに気付いた。

 見えないがターゲットにのる。

 矢を三本連射した。当たったような感触。

 騎士団弓隊の矢は半分以上の大熊を倒しているが特大熊と、それを守るようにもう三頭くらいが突進して来る。

 特大熊の上は人型の者が見えている。矢が当たったのか熊の背に伏せている。


 ワンドを出して雷撃魔法の上級を一発!


「雷神!!」


 無詠唱でいける筈なのだけど、《上手くいって御願い!》の気合いを入れるために、大声で言った。

 超特大の雷が落ちた!

 地響きがするくらいだった。

 打った本人がボーゼンとしている。


「坊ちゃん。凄いですね…」


 ジグロさんが誉めてくれたけど…


「ミノル坊ちゃん……無謀過ぎです…」


 ピーター騎士隊長は昨日からの疲れが出たようだ。

 隊長ゴメンね。


「スミマセン、ティーマーを引きずり出したかったんですよ‥…」


「うん、居たよね、巨大熊の上に」


 ピーター騎士隊長も見えていたようだ。


「なんか、まだビリビリしそう」


「第一分隊、確認任務!」


 中隊長さんが気を利かせ分隊を出した。

 分隊長さんが頭の上で両手で丸を作ったのを確認した途端、ピーター騎士隊長が俺に向かって鬼のような顔で口を開いた。

 ヤバイ。本気だ。


「ミノル坊ちゃんは無茶し過ぎなんです! 昨夜も短剣で本職の殺し屋に飛び込んで切り付けたり、今日は一人で魔獸大熊の大群に弓を打ったり。怪我ならまだしも、死んだらどうするのです!」


「……済みません…」


「そもそもミノル坊ちゃんは10才くらいから無謀なんです! 初めて乗った馬で走ったり、初めての魔法で庭の枯れ木にファイアーボールをぶち込んだり。結果というものを考えて無さ過ぎなんです!」


 経験的に後10分は続くな。騎士団の人達はニヤニヤ見ているし……全員に子供の頃からドジはバレているし……


「……御免なさい……もうしませんから…」


 俺は、ただひたすら謝ってるしか無かった。




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