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第4章25話 中途半端な日


 朝起きるとアデルさんは昨夜の服のまま、まだ寝ていた。酔ったより余程疲れているのだろう。

 数分アデルさんの横顔と体温を楽しんでから、起こさないようにベッドを出た。

 歯を磨いて身体を洗い、アデルさんに怒らないように洗いチェックして露天風呂に入る。朝風呂は好きだ、一日がスッキリと動き出す。学校に行っている時はしなかったが、何故だろう? 温泉なんか行くと必ず入るのに。

 考えても無駄な事を考えて風呂を出た。服を着て食堂に行くと誰もいない。皆さんまだ寝ているのだろう。

 朝食をサッサと済ませて、お詣り巡りを終わらせ冒険者ギルドに行く。


「坊ちゃん、おはよう御座います」


「ジグロさん、お久しぶりです」


「今日は? まさか狩りではないですよね」


「先日の協力のお礼に来たんですよ。とても助かりました」


 俺が掲示板の所で冒険者の皆さんにお礼を言うと、拍手されてしまった。

 食堂に入ると結構人がいたので、またお礼を言っておいた。顔見知りも多く皆、手を振って挨拶してくれる。

 何時もの所にバカ娘4人組みとノレルさん、なんとダンクさんまでいた。


「ボチャン、ヒサシブリ」


 皆、ニコニコと迎えてくれた。


「皆、ゴメンね。セリちゃん取っちゃって。


「坊ちゃんが謝ること無いよ。皆、喜んでいるよ」


「ナカマ、シュッセ、イイコト」


「ダンクさんは、ゼンダさんチームに残るんですか?」


「俺はこのチームに入れて貰った」


「お前ら。ラッキーだったな」


 皆、首を縦に振っている。


「今、ダンクにリーダー代わってくれるように頼んでたのですよ。私はもう年ですから」


 ノレルさんがダンクさんの方を見て言った。


「来たばかりでリーダーなんて出来ない」


「良いじゃないですか。安全を守れる人がリーダーが最高ですよ。ところでエール飲みます?」


 皆が歓声を上げ、ダンクさんが苦笑いしている。何時ものように猫耳のイリアが注文に走る。

 既に一仕事終わらせたそうで、午後から再開予定だったらしい。


「坊ちゃん司令様ですか?」


 声の方を見ると見慣れた魔法帽子と杖を持った少し小さめの可愛い娘がいた。


「セリちゃんの後輩かい?」


「はい、トトと言います」


 トトちゃんは魔法帽子を取り、ペコリと挨拶をした。


「プレート見せて」


 全部30くらい、水と風が36くらい。使えるじゃない。俺はトトちゃんの両手を持って魔力を送っていく。魔法壁が柔らかい、将来性が有る。2倍くらいになった。そこらの魔術師より大きくなった。


「2倍くらいだね。今度またやろう」


「トトちゃん一緒にやろうよ。ここセリちゃん、いたチームだよ」


 話が決まったようだ。エールとソーセージが来て、勝手にダンクさんのリーダー就任とトトちゃんの歓迎会が始まった。


「坊ちゃん、マネからゼンダが何やったか聞いてる?」


「聞いて無いですけど」


「いきなりマネを追い出したんだよ。マネが人望厚かったからね。それ知って皆が怒って解散さ」


「ゼンダさん、馬鹿な事を……」


「前から性格は悪かったんだよ、皆が我慢してただけさ」


 俺は人を見る眼が無いなぁと思った。

 皆にソーセージとエールのお代わりを注文して、失礼した。


 トレル隊長に『瘴気の沼』近くの集落に行ける人が居ないかと聞いたら、トレル隊長が連れて行ってくれる事になった。

 炭焼小屋や猟師の家が8軒ばかりの集落だった。瘴気は感じられない。危険区域は40メートルくらい後退したようだ。


「何を調べるのです?」


「精霊の守護人が居る可能性があるような気がするんですよ。きっとお婆さんみたいになっていると思うんですけど」


「聞いてきます」


 トレル隊長が聞き込みに行ってくれた。


「一番奥の小屋にお婆さんが住んでいるそうです」


 トレル隊長と行ってみる。戸が少し開いているので中を見ると誰もいなかった。

 来たついでに森を再生していく。上空から見える範囲で再生してゆく。音を立てて森が再生された。


「凄いものですね。びっくりしました」


「瘴気が消えるのが早まるような気がするので」


「捨てられた街を再生して、早めに人を入れ出すと警備隊が困ります?」


「少々人手不足だと思われます」


 2人で見に行った。閉鎖中の街はガランとしている。


「再生魔法で使えるようにするのは出来るのですが、管理と治安なんですよね」


「規模が大きいので最低100人は必要かと思われます」


「100人教育するのを考えると駄目ですかね? 今だと他領の職人や商人を簡単に取れるチャンスなんですけど。ホフマブルグだと店舗が高いですし」


「少しずつ増やしながらなら何とかですか」


「ホフマブルグの警備隊だけでも足らないのでしょう?」


「はい、あと50人は必要かと。人口が増えて3万近いらしいです」


「増えましたね」


「我が領だけ景気が良いですから」


「とりあえず20人の募集を許可します。厳選して下さいね」


「有り難う御座います!」


「騎士団も消えてしまった見習いを20人と3人の予備の募集を許可しますのでコロンさんに伝えておいて下さい」


「喜ぶと思いますよ。ドロン隊長が頭抱えてましたから」


「早急に手配して下さい」


「了解しました!」


 トレル隊長がワープで消えた。

 そろそろ解任してくれないかな。司令は16歳のガキがする役職じゃないと思う。


 宿の部屋に戻るとアデルさんは裸になりベッドの真ん中で大の字の仰向けになってまだ寝ていた。

 よだれを流し、シーツをヨレヨレにしている。凄い寝相だ、初めて見た。なんか色っぽく見える、美人の特権だ。

 服を脱いで寝直したのだろう。相当疲れているようだ。

 アデルさんに毛布をかけ散乱している服を片付けてから、起こさないように静かに部屋を出た。


 次はマイヤー商会だ。俺もアデルさんと寝ていたいなと思った。


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