第1章08話 弓練習
部屋に入るとミリーさんは風呂にお湯を張り、俺の服を脱がせてブーツと下着を持って出ていった。
頭を洗うと湯が真っ赤になった。顔も洗ってから湯を張り直してまた洗う。
血の色が出なくなるのに三回湯を変えた。
ミリーさんが大量に置いていってくれたタオルで全身を拭いて、少しサッパリした。
血の臭いがするので窓を開け空気を入れ変える。
外は緑の良い香りがした。
短剣を湯で洗っても血は出なかった。剣帯もタオルで徹底的に拭いてもきれいだった。
ミスリルの鎖帷子は湯船で徹底的に洗ってみたが、全く血の痕跡は無くタオルで水分を取って終わり。
魔法とは凄いものだ。
パンツを履いてミスリルの鎖帷子を着る。こんな事があるなら毎日これは着ないと。
シャツはグレーを着てみる。良い色だ。今日手に入れたソックスを履き、もう一本のズボンを履く。ブーツも二足にしておいて良かった。
ミリーさんがポケットから出していってくれたワンドを胸ポケットに入れ、出来上がり。
階下に行っても食堂は俺が壊しちゃったしなー。
今頃は騒ぎの頂点だろうしなー
腹は減っているけど食欲は無いなー
ベランダに出てみる。
空気が良い。
まだ初日なのにイベントが多かった。疲れがどっと出てくる。
人を三人殺したのに罪悪感は全く無かった。殺さなければ殺されるのが、この世界だ。でも血の匂いや死臭は嫌いだな。
狩りでもやったら慣れるのかもしれない。
疲れたので寝ることにした。
朝、ミリーさんが起こしに来てくれた。
「お客様用食堂の方で30分後に朝食です」
「はーい」
服をまた着て、顔を洗い歯を磨く。日本に居る時と同じことをしているのだが新鮮な気がする。
太陽の色が違うんだよな。
ブーツを履いて帯剣して階下に行った。
食堂には、もう職人さんが来ている。雨は降りそうに無いけど早く直した方が良い。
「おはよう御座います」
皆、口々に挨拶をして席につく。
朝はパンと鳥類のクリームシチュー。美味しい。
「昨晩はすぐ寝たのか?」
フレードリッヒ叔父さんが聞いてきた。
「はい、風呂に入ったら疲れが出たらしく、寝てしまいました」
「昨日は大活躍だったからな。しかし強くなったな」
「毎日、ダニエルと練習は欠かしませんでしたから」
「そうか、エライな」
フレードリッヒ叔父さんはダニエルをジロっと見るとダニエルは下を向いた。
「兵隊さんは帰って来たのですか」
「夜のうちに、戦いは勝ったそうだ。朝食をとってから帰るらしい」
「ミノルは今日はどうする?」
「練習してから冒険者ギルドに行き、登録でもしようかと思ってます」
「そうか。儂は寄子が全員今日に会いたいと言ってきているので、また面倒な1日になりそうだ。なかなかミノルと話しが出来んな」
「ですね」
「俺ちょっと今日は用事があるから、ゴメン」
「良いよ。弓も魔法もやりたいこと有るから」
「お前、何の用事が有るんだ?」
フレードリッヒ叔父さんはダニエルに問いただす。
「キュレット伯爵夫人に呼ばれました」
「あの馬鹿女に呼ばれた? 何の用事だ?」
レナ叔母さんも怪訝な顔でダニエルを見ている。
「あの……知りません」
「何時そんな約束したの? そんな暇あった?」
レナ叔母さんにも突っ込まれる。
「昨晩帰る時に……」
「帰る時って、あの子昨晩は叩き出されたのよ」
「……」
「これ以上の面倒はゴメンですからね!」
ダニエルは、ひたすらだんまりで押し通した。
怪しさ全開ジャン。
「シュルツ男爵がおいでになりました」
ダニエルはこの隙に逃げた。
俺も練習場に行くことにした。
「ミノルごめんなさいね。来た途端に変な事ばかり起きて」
レナ叔母さんが廊下で待っていて申し訳無さそうに言ってきた。
「お母さんの責任では無いですよ。僕の方が変な時に来ているだけです」
レナ叔母さんは、お母さんと呼ばないと怒るのだ。
「叔父さんに許可を貰う機会が無いのですが、冒険者ギルドに入って宜しいでしょうか?」
「あら素敵。私は大賛成よ。辺境伯には私から言っておきますのでお入りなさい」
俺はウキウキしながら練習場に行った。
ミスリルの弓を持って練習場に入った。矢は勿体ないので、練習用のを借りる。
最初は30メートルくらいの的を使ってみる。
弓に矢をかけてゆっくり引いてみる。思ったより軽やかに引ける。矢を放つとヒュンと良い音をさせ凄いスピードで飛んで行き、的を一発で粉々にしてしまった。
うーん、60メートルの距離で打とう。
また、ゆっくりと狙う。弓が良いせいか自分のレベルが上がったからか、弓がぶれない。矢を放つ。またヒュンと良い音をさせ矢が凄いスピードで飛んで行き、また的を一発で粉々にしてしまった。
100メートル。弓のほぼ限界距離だ。矢をぎりぎりまで引く。やはり弓がぶれない。放つとブンと音を立て矢が飛んで行き、また的を一発で壊してしまった。
知らないうちに周りで兵隊さん達が見物していた。ヤバイ目立っている。
係りの兵隊さんが笛を鳴らし練習を止め、的を変える。
俺は係りの兵隊さんにペコペコおじぎして謝っておく。どうしょう、また三発で壊してしまいそうだ。練習にならない。他の兵隊さんにも迷惑をかけるし。
仕方ないので森に行って打つことにした。矢が勿体ないな。




