case1 真実の姿 終
「『真実の姿』」
グランがそう言い放ち、件の異世界人に向かって手をかざすと、青白く発光していた光は霧散し、異世界人はボロボロと茹で卵の殻を剥かれるように皮膚が崩れ落ちていく。
「な、なんなんだ?!何をしたお前!!」
異世界人は動揺を隠せないのか、喚き散らしながら自分の皮膚が崩れ落ちていくのを見続ける。
そして全ての皮膚が崩れ落ちた時、目の前には先程の異世界人とは似ても似つかない人物が立っていた。
「いや、特別な事は何もしていない。ただ、お前の真実の姿を暴いただけだ」
「し、真実の姿?!」
「そう。何日も風呂に入っていないことが窺えるベタついた髪。身嗜みを整えていないのが露見している眉と髭。吹き出物とニキビで見るに堪えないその顔面。外にでていないのか太りに太った醜悪な体型体臭。家に引きこもり、他人と会話しないせいで退化したであろう回ってない呂律。それがお前の真実の姿だ」
「………」
「そう、嘘で塗り固めないと反論すら出来ないその性格。すぐ俯き、ブツブツ蚊の鳴くような声で恨み言を垂れるしか出来ない根性」
「………」
「この世界に来て何か変わると思ったか?女神に甘やかされて元の人生では一生掛かっても手に入らなかった物を悠々手に入れられて快感だったか?」
「………」
「残念だったな。世界はそんなに甘くない。ネットとかいうもので知った気になり、鵜呑みにした他人の知識を吐くだけ吐いたらお前はもう用済みだ」
「!!……っ!」
「死亡宣告されてなお声を出すことすら出来ないとは、哀れにも程があるな。……良かったな?ネットで得た他人の知識が無かったら今ここで首をはねていた所だったぞ?お前と違ってこっちには仕事があるんだ。ペラペラ吐いて最後くらいは他人に迷惑をかけないようにするんだな」
「連れていけ」
グランが喋り終わった後、王の号令により近衛兵達が異世界人の男を取り押さえる。
「!!!!??!!?!?」
「うるさいぞ貴様!」
近衛兵の一人に顔面を一発殴られたその異世界人は涙を流しながらうなだれ、連行される
「こんな男が女神の力を傘に着て調子に乗っていたのですか……臭いうえに気持ち悪い。異世界というのはこんな人間ができあがるような所なのですか?」
「わからない。ただ、今まで俺達ワールドアベレージャー達が捕まえた異世界人は大体似通った人格だったそうだ」
「寒気がしますね。男性に産まれたにも関わらずこんな惨めな人生を送るとは」
2日後、拷問にかけられた異世界人の男は自分の持つ全ての知識を洗いざらい話し、磔にされ市中にて晒された。
傷一つない死体の背中に唯一入った一筋の鞭の跡を見た市民達は、その男が鞭の一打目で口を割った稀に見る情けなさを想像し、死体が朽ちるまで笑い物にされたという。




