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2-5 嘘の若獅子の夢は紡がれる⑤

さてシンドウ VS ミッシー の勝負行方はどうなってしまうのでしょうか。

ご賞味ください

 ミッシーとのゲーム開始日から三日後。


 流石に飽きるな。周りからの視線が痛い。怯え、緊張感、委縮、絶望。村全体で負の感情が漂ってくる。回復させてはやってるが毎日ヤマタケを馬として扱ってるため、疲労で死にそうだな。体は治っても精神的にはかなり辛いだろう。それでも耐えるのだからこいつなりに何か思うことはあるのだろう。


「さて三日目にしてやっとお出ましか。」


 この三日間何をやってたか知らんが、やはり助けに一度も訪れなかったってことは。忙しなくしてたか、兄が潰れても構わないということだろうか。


「ロウチさん流石にお兄ちゃんが死にそうなので、今日のところは止めて頂けないでしょうか。お願いします。」


 ミッシーは土下座して懇願してくる。この人目に付く公道でミッシーが言うのだから仕方ない。


「はぁ?何言ってんだ小娘がぁ!お前この馬鹿の妹なんだってなぁ?こんなになるまで放置して今更助けて欲しいだと。それは優しい優しい兄思いな妹だなーおい!」


「ごめんなさい。でもどうしても足が竦んでしまって。でもお兄ちゃんが死んじゃうのは嫌なんです。お願いしますから許してください。」


 周りからの視線が動揺の色を表し始めているな。計画通りだがまだパンチが足りない。それは今後に期待だな。


「まさかとは思うけど、私が悪いとでも言いたいのかな。これは仕置きだよ。たったの1週間だけの。なにも今後もずっと子供達にこんな真似をし続けるわけではないよ。」


 そう俺の計画の第一段階としては、クズヤロウ達がやってることをクズヤロウ達に認識させるためだ。ここまでではないにしろ自分達の行いが何を意味しているのか、結果どうなるかを。


「それでも!」


 ミッシーは涙目になりながらも訴えかけてくる。


「くどい!どけ!邪魔だ!一週間で人がそう簡単に死ぬわけないだろ。仮にこいつが死んだとしてもそれはとっても不幸な事故でもあったのだろうよ!」


 俺はヤマタケか降りミッシーを蹴りあげ引き離す。かなり手加減しているから見た目ほどのダメージはないはずだ。そしてまた乗り直す。


「行け!無駄な時間を過ごしてしまった。」


 ミッシーを放置して、ヤマタケを誘導する。倒れたまま動かないということは、この一連のやり取りは演技なのだろう。ホント迫真の演技すぎて、こいつなら部下にしたいと思わせられたよ。


 ◇


 次の日。


 また人目に付く公道でミッシーがやってきた。


「ゲームは私の勝ちですよ。100枚署名付きで持ってきました。これでお兄ちゃんを解放してください!」


 やはり成功したな。このゲームに関してはこいつが勝とうと思えば簡単にできると思った。


「おうそうか!100枚集めたか!凄いじゃないか!署名もしっかりしてある。だが本当に内容を確認して書いた証拠はどうする。内容は伏せ偽装した可能性があるぞ。」


 俺はその可能性はないと分かっていても確認をとる。ミッシーがそれを想定していないわけがないと思うからな。


「はい、全員ではありませんが半分ほどの人数はこの場に来ていただいています。確認を取ってください。そしてこの署名を書いたからと言ってロウチさんに反発したいわけでは皆なのです。だから確認を取っても、お願いします許してください。」


 ミッシーは土下座しながら懇願してくる。いや~最高の結果だな。やっぱりミッシーは部下にする。


「そうか来ているのか、それなら話が早いな。...おっと手が滑っちまった。」


 俺はあたかも偶然かのように署名用紙を破いていく。


「すまんな不幸にも確認する前に紙が破けてしまった。紙はいくらでもやるからもう一回もってきてくれ。100枚300円で買えるからな10000枚でも20000万枚でも用意してやるよ。さぁ行くぞ、動いていいぞ。」


 周りから絶望の感情が漂い、そして一部からは凄まじい怒りの感情が読み取れる。


 ミッシーは膝から崩れ落ちた。


「...そんな、..うぅ.お願い..お願い!誰か助けてください!誰か私のお兄ちゃんを助けてください!!!」


 魂を揺さぶられるほどの、感情がこもった叫びがこだまする。流石にミッシーも想定外だったか。


「おい!てめぇ!よくも詩歌ちゃんを!」

「このクズが!お前ら武器もってこい!こいつだけは殺す」

「このこと伝えろ!仲間呼んで来い!」


 子供たちが咆哮している。想定外があるとしたら。やはり人ではない異物ゴブリンはいないのか。


 喧噪が広がっていく。怒りの限界点を突破したか。署名活動とは仲間を増やすことだ、仲間ではなくとも応援者にはなる。ただただ言葉だけで応援よろしくお願いします!とか言ってるやつは無駄ではないと思うが、効率が悪すぎる。署名という形で自分から書かせることで、他者が応援者に変わる。それは安易に証拠として残るし、内容への印象や同意を得られやすい。今回は大分手助けしてやったんだ。ゲームの勝利はいただくぞ。


「皆どうして...だめよ。やっぱりだめ。私のせいで..逆らったら皆が!」


「詩歌や掛のことだけじゃあないんだもう!この村には我慢ならなかったし、なによりコイツのようなクズがまた現れたらもう俺達は終わりなんだよ!」


「そうだ!もう反逆するしかないんだ!さあ武器だ。こんなことさせたくはないがもうやるしかない!」


 くくッははは、いいぞ!その目は皆明日に絶望しているような、腐った目をしてやがったのに今はどうだ!皆活き活きした良い目してんじゃないか!さぁぁてぇクライマックスだ!悲劇と反逆をおりなす最低なショーを俺に見せてくれ!



「死ねや!このクズヤロウが!...ぐッ」


 これで14人目か、俺はヤマタケを踏みつけながら。子供達を体術を駆使し捌いていく。言い忘れたが、俺は勉強もできんし、魔術もろくに使えんが体術に関しては中堅クラスだ。アホみたいに強くはないが自分の身は自分で守らないといかんしな。


「強いな....くぅ..なんでだよ俺達は反逆すらできないのかよ」


 5分くらい経ったか、あららせっかくの怒りのボルテージがだだ下がりだな。刃向ってくるやつの武器を手刀で叩き落とし、遠くに放り投げながら、ひたすら弁慶の泣き所蹴り続けている。周りには痛み苦しんでいる子供達が悶えている。殺す気で来ているんだ、手加減してそのくらいの痛みにしてやってんだ。ありがたく思って欲しい。


「皆遠距離から攻撃して!お兄ちゃんごめんなさい!必ず助けるから耐えて!」


 .....ふぅ~。ミッシーよマジか!確かに踏んづけてる理由は遠距離攻撃されると面倒だから人質として使っているが、お前がそれ言うかよ!人の愛の形は不可解であり、迷宮のようだ。


「いいんだな詩歌、悪いが俺達も引き下がれん!すまん掛死ぬ時は俺達も行ってやるから。」


 こいつら本気なんだよな?茶番につき合わされてる気分になる。ダメだ目が本気だ嘘言ってないな~

 そして刃物投げるのは止めろ。仕方ないにでヤマタケに刺さらないようにもしてやる。


「おい!本気かお前ら、マジで死ぬぞ。君達の仲間なんだろ掛君はよう!」


「お前がそれ言うかそれ!あんた絶対友達いないだろ!この人でなし!」


 やばい泣きそう。なんでこの短期間でこんなに友達少ないやつ扱いされてんだろ?友達いるからね!本当だからな!くッ捌ききるのが辛い。


「お兄ちゃんを離せ!そして死ねぇ!」


 おいおいミッシーここで突っ込んで来るかよ。ドス持って突っ込んで来る女の子って怖いよ!


「詩歌ちゃん危ない下がれ!ぐッ」

「やめろ!お前まで串刺しになるぞ!」


 ミッシー以外の子供は流石に突っ込んでこない。そして悲劇は当然起こる。


「..いやぁ..いやぁぁぁぁぁ!!!」


 叫び声があがる。


 そうミッシーの叫び声が。


「お兄ちゃんなんでよ、なんでこんなクズを庇うのよ。」


 俺はヤマタケに投擲物が当たらないようにしてやったが。ミッシーのドスが刺さるのは防がなかった。ヤマタケに刺さるのをな。ヤマタケは既に動ける状態だったからな。


「妹が人殺しになろうとしてるのを黙って見てる兄貴がいるかよ...ぐぅ...」


「ひっ!血が血がいっぱい。早く!早く病院に..治療しなきゃ..。いやだよ..ねぇ。」


「詩歌ごめんな今まで気づいてあげられなくて..ロウチさんに話したよ僕達のこと。俺さお前を守ろうってずっと思って頑張ってたよ、もう頼れるのが僕しかいないと思って。僕のせいで孤独にしてしまったんだから責任は果たそうって..はぁ..はぁ..。」


「やめて!もう話さないでよ!私はお兄ちゃんに死んでほしいなんて思ったことはないよ!でもどうしても許せないことはあって頭ぐちゃぐちゃになっちゃって。お願いだから!死なないで!ごめん..許してよ。」


「馬鹿だな..大馬鹿が。僕が謝ってんのになんで詩歌が謝るんだよ。でも僕は詩歌が何をしたって味方でいるから..許すよどんなことでも...」


 ヤマタケの反応がなくなったな。さて俺もやらねばなるまい。責任は取るし、無駄には絶対にしない。


「おい小僧!ふざけんなよ俺のせい死人がでるとか、俺の人生に汚点が残るじゃねーか!どけ小娘!」


 俺はミッシーをどかせヤマタケに刺さるドスを引き抜き。遠くに放る


「けっ!こりゃ無理だな。俺には分かる。致命傷だなこれは。はあ~どうす..」


「ロウチ!貴様何をやっとるんだ!」


 現れてくれると思ったよがめじー。この絶望ムードを裂き現れることができるのはあんたぐらいさ。


「じ、じいちゃん!どうしてここの!聞いてくれよ。これは俺のせいじゃない!この小娘がやったことだ。俺は悪くないよ..痛い、痛いよ」


 俺はかなり動揺した素振りをし、懇願をする。あ~痛い。痛いな~杖で殴られた


「この恥さらしがお前は孫でもなんでもないここで死ね!」


「やめてくれじいちゃん、痛い痛いよぉぉ!」


 俺は頭を抱え蹲っているところをがめじーは何度も殴りつけてくる。それはもう鬼の形相で。


「詩歌すまなかったの、掛のことはワシが知ってる中で最高の医療を施すことは約束する。まず我が家に掛を運べ!使用人に介護させる。..死んでしまったら。...本当にすまないのう」


「子供達も言い分は必ず聞くと約束しよう。今まで本当にすまなかった。ワシら一同、同じ気持ちじゃ今後の生活改善を約束する。その変わりと言って申し訳ないのじゃがこの者はワシが処分する。もう君達の前には現れることはないことをここで誓おう」


 がめじーはこの人の本来持つ威厳に圧巻されている。はぁ~疲れるな。


「じいちゃん処分ってなんだよ!嘘だろ!孫だぞ!やめてくれよ!たの..」


「黙れ!これ以上生き恥を晒すようならここで首を切り落とすところじゃぞ!最後の情けとしてお前が昔から好きだったあので介錯してやる!」


「あ..え....」


 俺はすべて諦めたように肩を落とし首根っこをつかまれ。連れていかれる。


 辺りの喧噪は嘘だったかのように静まり、茫然と俺達が去っていくのを見送るだけだった。


 ◇


 俺が女神ユイと別れた場所に辿り着いた。

 そして日本人バージョンを解く


「はぁ~これがお主の言う世界を救うというやつなのか?偉く険しい道を選んどるのう。」


「爺さんの方もよくここまでアドリブでやってのけたもんだ。やっぱりあんたはこの村で数少ないが正常な判断ができている人間だぜ。」


 俺は初めに見たあの畑での違和感が他にもあった。なんでヤマタケを詰る時に、がめじーに欺瞞を感じたのかを。この爺さんを観る目でみた限りでははっきり言おう相当できる人だと思った。抽象的でわかりづらいと思うが、人としての厚みがあるとでもいうのか。


「そして俺も聞くが、俺がやらんでも爺さん、あんたなら村を救うことができたんじゃないのか?こんな状況になる前によぉ」


「ワシが若ければやっていたかものう。ワシは老いてしまった。昔の栄光なぞ、老いてしまえばただの飾りじゃ。無理だったろうよ。そしてお主はまだ気づいておらんかもしれんが、まだ村を救いきれておらんぞ」


 がめじーあんたはやっぱりすげぇーよ。老いても輝いてんよ。


「ゴブリンのことだろ、強いては他種族が入り込んでるこの状況がそもそもおかしいんだ」


「分かっておるようじゃな、すまんがいくら知恵があっても、権力があっても力がもうワシにはない。若さとはそれだけ武器となり力となる。ワシも昔は皆が穏やかに、安心して暮らせるような世界にしたかったができなかった。若獅子よワシの夢を紡いでくれないかのう。」


 がめじー勝手に押し付けてくるんじゃないぜ、全くよ~。高ぶっちまうじゃねーかよ。


「やなこった!そんな世界はつまらんさ!俺は誰もが、明日のことなんて考えられないくらい、今を楽しみ、笑い、時には後悔するそんな人間味あふれる。世界を作るんだよ!穏やかとか安心なんてぬるくするだけだぜ。」


「...ほぉっほぉ..くくっ。若造が生意気言いおるわい。それで構わん。ワシが死ぬ前に見せてみよ。お主の言う世界を」


「あぁいいぜ!待ってな!隠居なんてしてられないようにしてやんよ!」





次はどんな物語が来るのかお楽しみを!


お読みいただき感謝です。

スペラ@小説家になろう

でツイッターやってます。

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