11-6 嘘の本流は正義に輝く⑥
シンドウの策略とダグザの知略が邂逅を始める
人を焚き付けるだけ焚き付け再度建物屋上より俯瞰に徹する。
「ダグザはどこだぁぁぁ!!!!」
「殺す!絶対許さんぞぉぉぉぉおお!」
あの後は子供には俺達マフィアを足止めしろと先に命令を与えて足の怪我もとい毒を治してやった。絶対服従モルモットで出荷だがな。
そして子供が死ぬ前にボスが倒されれば救えるだろうなと青年達を煽りまず間違いなく返り討ちに会い殺されるだろうが目的は疑心暗鬼に錯乱してくれることなので問題ない。
ちなみにボスはダグザと語られているらしい。神の概念はこちらでも共通なようで慕われると同時に畏怖の存在であることを考慮し破壊と再生せし神として名が通っている。
正直敵でなければスカウトしているところだ。
既に逆鱗に触れた以上生かす選択肢はないが追い詰められたことは事実だ。
最初の選択肢からミスをしていたことからもう取り返しは付かなかったのだろうな。治療のため匿って貰っていた時点で同調を選ぶこともできたし、クリスをそもそも信用してなかったので駒として動かすことしか考えていなかった。快復を待つ前に洗いざらい吐かせることもできただろう。
「感が戻らんもんだな。最悪のケースをいつでも思考することこそ最善の道もおのずと観えるものだ。」
反省はもう終わりだ。
建物伝っていき青年達を追いかける。絶望として変換されたエネルギーよりステータスは底上げされている。もしステータスの概念が根付いておれば通常時の4倍には上っているだろう。
今であればエリア3に再び踏み込むことはできそうだ。
青年達の動向を伺いながらようやく目当ての人物を引き当てることができたようだ。
「かああああつ!!!!」
先ほど焚き付けた青年達が吹き飛ばされていく様子が見える。
ダグザと思わしき男は身長2メートル程の巨漢。彫の深い顔に背中龍の紋を象っている。
気迫と技なのか?自分を巨大な大木のようにどっしり構え両手を前に掲げ押し出す。圧力に似た力技の一種の極致を見ることができたのかもしれん。
だが殺すような真似はせず意識を刈り取っているってところだ。青年達の尋常ではない様子を見て話すよりも再起不能にさせる方が良いという判断を下したのだろう。
「ダグザぁぁぁああああ!俺達非戦闘員はもう必要ないってか!死ねやあああ!」
吹き飛ばされたのは青年達の約2割というところだ。総員を考えて第4陣までは来るだろうから時間にして10分は持つ。
「ダグザさんこいつら陽動ですかね。この鬼気迫る様子からして何かに突き動かされているのは間違いない。」
「そうだろうな。敵の正体は二人...シキかシンドウという男だろうがクリスの話を聞く限りだとシキは外れているだろう。シンドウという男の暗躍だろうな。」
気配を殺し隠密行動に徹し伺っているが敵さんにはもろバレの様子らしいな。
50メートル離れた位置から読唇術である程度話している情報は分かっている。
敵の思考を読むならば当然陽動の線は濃いと判断するだろう。こんな戦力にもならんやつらただ無意味にぶつけるだけなぞ足止めかこの場所に陽動として使われたかのどちらか。
足止めに関しては敵さんの本拠地にいるのだからする意味がないと判断するだろう。必死に思考し続け考えているといいさ。
「シンドウという男のプロフィールは監守共から買いましたが正直不気味なやつという以外に思うことはありませんでしたからね。あの時始末すべきじゃなかったんですか?」
「経歴なぞは結果論にすぎん。やつの実力は上から降りてくるまでの様子を聞いた。正直修羅場はくぐっているだろうが甘さが抜けんひよっこに過ぎんと思っていた....しかしパンドラの箱を開けたのかもしれんな。」
話ながら状況を分析し対応を考えているようだな。怯えて出て来ない羊くんではなく向こうさんもこちらを喰いにかかる蛇のようであるらしい。
戦力は削ってはいるもののまだあちらが有利である。しかし一対一での戦闘において無敵を誇るケンジに対し一対多数の戦闘いや戦争に限っては最も戦果を出したのは俺である。
あらゆる手段を持って駆逐してくれよう。
そうこうしている内に焚き付けた青年達は全滅していた。
「状況報告が入りました。各地で暴れていた仲間、そして子供達は取り押さえるか...始末が完了したそうです。避難民達はその...惨いありさまのようです。」
「報告ご苦労。激情に任せただけの行動か....短絡的な思考に沈むべきではないな。引き続き警戒をしておけ!」
「了解です!」
シンドウという男の思考は読みやすいと高を括りやすいと侮ったか...もしくはただの復讐か。
相手に感情があり思考する者である限り取る行動とは大きく分け二つある。感情的行動か理論的行動のどちらかだ。今回に限れば間違いなく感情的行動に他ならない。だが侮るべからずである。敗者が敗者となるのは偶然ではない。必ず必然性が含まれるものだ。
こちらのキーとなる物はクリスという人質にシンドウの激情のキッカケとなった死体であろう。この二つに価値がないのであればこのような騒動を起こす必要はないはずだ。
「さてシンドウよ。どう動くか....この貸しは高く付くと思え。」
全てを壊し、全てを思いのままに作り上げてきたダグザは天を軽く見上げながら獰猛な笑みを浮かべた。
ダグザさんもこんなことになるなら殺しておけばと後悔もしている内情です




