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閑話休題~過去編③~

閑話休題

過去編これにて閉幕

本編に戻ります

 俺は必ずこの街から出る。その思いは日に日に強さを増していく。

 200万なんて大金をガキが持っているんだ。狙われないわけがない。

 以前は小銭稼ぎに様々なことに手を出していた。俺がガキということを利用し危ないブツの運び、貴重品のトレースに始まり闇討ちすらも行った。

 歳のは5,6歳のガキすらもゴミ扱いする程だが警戒心は薄いのである。それでもバレたら殺されかねんのだが逃げ切れば大抵は深追いされ続けることはない。なぜならこんなガキに重要な情報なんて与えないし使い捨てというのが普通だからだ。


 だが失敗もあるなか確実に成功を収めていたがために顔は覚えられていった。

 俺は自分の観察眼を信じ少ないながらも信頼できる者を選び抜き裏の流通ルートはほぼ抑え込み1年で2億を稼ぎ切った。その時に一番培ったことと言えば裏切り者に容赦は不要であること。どれだけ絆を強く保とうとしても自分の身を一番優先させてしまうことは仕方ないことだ。だから俺は不満があれば話を通してきた。それでも裏切った者には根源的恐怖を植え付けた。大抵は街に呑まれ消えていったが自殺者が多数であった。


「2億は稼いできた。脱出の方法を教えろよ。」


 俺は薄々感づいていたがツッサンに再度聞いた。

 2億稼ぐほどに大きく動いたにも関わらず全く動きがないのだ。テロでも起こすかと思案もしたが無駄だろう。脱出にはコネが必要だ。


「1年で成し遂げたか...。方法は言えんな。言わなければ渡せないか?」


 口元を歪ませながら問う。

 この2億は正直どうなっても構わないとさえ思っているからいい。所詮は世の中を生きやすくするだけで根本的解決にはならない。だが俺は金のことはどうでもいいが我慢ならないことがある。


「脱出に関して言えんならそれでもいい。だがやつらが何なのかは教えろ。」


 流通ルートを抑える際に確認したのだ。なぜこんな街に支給される食べ物があるのか?

 こんな街なぞ潰してしまえばいいのだ。欲に目が眩んだ豚共が醜く這い釣り回る様を観ている。それがこの一年での感想に他ならない。


「それは誰のことを聞いているんだ?やつらと言われてもさっぱりわからんぞ?」


 本当に嫌になる。

 俺の推論は確実に解答を出していた。

 だがそれはどうしても避けたかった。俺は正直この2年程は有意義に過ごせた。知識に力、何よりも俺が生を受け少なからず恩を感じられたやつがいた。


「とぼけんじゃねぇーよ。クロさんよ~今すぐ落とすぞぉ!」


 俺は観てしまった。肌が浅黒く特徴的な三日月の瞳が常に獲物を求める【殺意】を抱く。

 何より....


「俺の本能的な敵愾心を抱く白いオーラ。これは死が近づくほど濃く映る。だが違ったんだ白く映るのは死が近づく者もそうだが死を纏うほどの濃密な【殺意】を持つものも白く映る。狩られる側ではなく狩る側なんだろ?ツッサンよ~」


 この街の人間は何かの目的があり生かされている。

 しかも怯えや恐怖ではない絶対的な負のオーラを張り巡らせている。

 それは意図的に仕組まれていることは確信している。どれだけ統制しようとしても異常者は出る。俺の支配は絶対だ。本来なら多数の裏切り者なぞ出るわけがないのだ。


「....。

 ここは笑うとこなんかねぇい。

 それとも逆キレでもするとこなんかね~

 そうさ人ではない。ダークエルフって通称はなっているがどうでもいいか。

 姿は上手くごまかしていたつもりなんだが....お前の目はごまかせないよな。

 やれやれ....。

 」


 面倒なことになったなと表情で表しツッサンは溜息を吐くと同時に姿が少し歪み。浅黒い肌と三日月の瞳を露わにする。姿を変質させることができるということはこれまでも多くの人に化けて来たのだろうな。

 これまで会ってきた人の中にもツッサンと同じようなやつがいたかもしれないと思うと反吐が出そうである。こちらは本気であるにも関わらず高飛車ぶりやがってという感情は否応なく俺をいらだたせる。


 今更自分はお前らとは違うんだよぉ!たかだか人間風情がぁ!

 とか言わないのかよ~つまんね。

 正体は確信してたからさっさと2億持っていっていいよ。

 」

「ちょい!何か意味ありげに正体明かしといてそんな反応なのか?」


 五月蠅いツッサンだな。どこまでいらだたせるつもりなんだか。なんであんなやつらと同種に生まれてきてしまったのだか....残念である。


「おいコラ!なんでそんな憐みの目をむけるんだ!おかしくない?お前だったらここで脅して命が惜しかったら脱出手引きしないと分かってんだろうなくらい言う者かと。」


 なんでそんな風に思われるのだろうか?この街で支配した時も同じようなことを何度も....俺ガキだよ?何を怖がるんだか?


「そんな悪鬼羅刹のヤクザでもないんだしそんなこと言わんぞ?ツッサンのことなぞ数にも入らんからさっさと仲間の情報を吐いてくれ。日がよく照る場所に磔にして丸焼けにしてくるからさ...フフ。」


「おい!ガキ!どこまで知ってるんだよ!

 冗談だよな?冗談と言ってくれよ!

 ニヤニヤされるのマジ怖いんだけど!

 ダークエルフって基本的に日に弱いんだよ。基本フード被るか室内籠るんだよ。日に当たり続けるとか地獄の苦しみなんだけど!」


 あらあらツッサンもう弱音ですか?お仕置きし甲斐がありませんね~

 やつらは身を隠すのが上手いなとも思ってたが日に弱いとは...通りでしっぽ掴むのに苦労するわけだ。


「ツッサンのお仲間達は流通ルートで支給物を渡す際のみ接触が可能だった。擬態してるんで普通は分からないんだけどな。まぁ誑かしてとりあえず1人とっ捕まえて尋問したんだがこれまた厄介でさ口割らないのではなく何か特殊な力で脅しも薬も効かなかったよ。衰弱させてなんとか正体が人ではないことは分かったんだが...。地獄の苦しみか..すまん。」


 俺はとあるダークエルフに心で心無い謝罪をした。

 ツッサンの仲間かもしれないから人質にしようとしたんだが生命力というかなんというか人間とは大違いで傷つけるのも苦労したのでなんとなく椅子に括りつけたまま外の空気吸わせてやったら苦しみだした。

 いい尋問方法だと思ったんだがな。


「同胞が死んだ!この人でなし!...くっまさか俺のせいで同胞が死ぬことになるとは...。」


 この反応からするとツッサン....。

 そうだよな同胞を自分の手ではなくても殺めてしまったと後悔するよな。


「すまん。すまんなツッサン......。」

「いやいいんだ。俺が悪かったんだ。俺がもっと早く言うべきだったな。」


 ツッサンは溜息を吐きながら。

 遠い目をして物思いに耽る。


「まぁ死んでないんだけどな。」

「......。はい?」


 俺がいつそのダークエルフを殺めたなんて言ったのだろう?

 尋問しただけだよ?裏切り者には死を的な狂人でもなければ殺人鬼でもないから。


「いやだから殺してないよ?苦しみだしたからそれも利用して尋問したんだ。今も口を割ることはないからツッサンから聞こうと思っただけだ。ツッサン口軽そうだし。」


「これは逆キレしていいだよな?俺も舐められたもんだぜ...口を割ると思うか?」


 ツッサンは威勢よく宣言した。

 こんなとこで二年以上も俺を暇つぶしの玩具にしてたんだぞ?

 本当に同胞への思いがあるのかね?


「今あのダークエルフ元気にしてるかな....。日光浴で身体の気分をリフレッシュさせ、乾いた身体を次はゴキブリ風呂に付けて今度は心の気分をリフレッシュさせてるんだ。廃れた廃人レベルまで真っ白になり今度は恐怖のどん底レベルで真っ黒に染まる。今何周目だったかな?」


「.....ぐすん。俺が悪かった。ダークエルフというかエルフ全般は潔癖症と言われるくらい高潔な種族なんだ。ゴキブリ風呂なんて拷問すら生ぬるい所業なんです。解放してあげて!お願い!」


 あらあらツッサンもう弱音ですかだらしがないですね~

 言ってましたよ。ダークエルフは最も誇り高い部族なんだって。口なぞ死んでも割らんとね。

 ツッサンがこれ以上キャラ崩壊すると話が進まないので矛を収めるか。


「んじゃ早く話せ。ツッサンを廃人いや廃エルフにはしたくないんでな。」

「....。どこから話せばよいもんか。」


 ◇


 俺はようやくここがどういった場所か理解した。


 この場所は養殖場らしい。

 エルフは基本的には水分を取りさえすれば食事に困らない。

 だがダークエルフは負のエネルギーを食べるらしい。本来なら水分でも良かったはずだが、負のエネルギーの味に落ちてエルフ落ちしてダークエルフとなる。

 この時外の世界がエリアとして別れていることを知った。エリア0である人界は世界の端にある。

 そしてこのダークエルフはエリア2からこんな辺ぴな人界まで来たそうだ。

 理由としては同族のエルフからはあまり負のエネルギーは手に入らず、エリア1のゴブリン共は知性があまりないせいで負のエネルギーが得づらいからである。

 ぶっちゃけ恐ろしいほどのとばっちりでありキレそうだった。

 要は人界の一部奪って隔離しエリア1に紛れ込んだ人間を補給として街に入れる。

 人類はエリア0から出たいらしくエリア1侵略をしているため補給は困らないそうだ。


「ツッサン弁解の余地あんのかよ?」

「ありません」

「ツッサンさ...俺の狂気的レベルの負のエネルギー食ってたんだろ?正直手当り次第なにもかもぶっ壊そうくらいの負の心あったと自覚してる。」

「美味でした。」

「ツッサンはさ実は同胞とかどうでもいいんだろ?なんというかハブられてここに捨てられただろ?なんか残念すぎるからさ。」

「自由という意味を履き違えて生きてきましたよ。ええ。なにか文句でも?」


 こいつ開き直りやがったぞ。


「なんで俺に鍛錬なんてさせたんだ?」

「自分は食事する必要なんてないから自分の食いもんは自分で取れよと思ってました。」

「なんで俺に2億稼いで来いと言ったんだ?ツッサンにコネなんてないだろ!」

「ええ!ありませんとも!正直2億貰ったらトンずらする予定だったのに...。ガキがなんかいつのまにかとてつもない化け物に育つんだから困るぜ全く。」


 まだキレるんじゃない。まだだ。落ち着け。ふう~


「お前なんか落ち着いてるな?最後くらい最上級の負のエネルギー食えると思ったんだがな?

 あっそういえばお前が裏で流通ルート抑えるために組織作ってたっけ?その妨害のため裏切り者になりそうなやつそそのかして、さらに自殺に追い込んだの誰でしょう?良い負のエネルギーだったよ?名前なんだったかな~ランザ...」

「【生】きとし【生】きるお前に死なぞ生ぬるい罰が下ると思うなよ。」


 俺はこの世に生を受けて初めて本気でキレた。

 この後起こったことはもう既に俺自身あまり覚えてはいない。


さぁシンドウさんをキレさせる怖いですよ~

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