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2-1 嘘の若獅子の夢は紡がれる①

新たなシンドウの物語を

ご賞味ください

「よう!ヤマタケ。散々だったな。お前が死ぬという最悪のパターンだけは回避できてよかったぜ。」


 俺は息も絶え絶えのボコボコにやられた姿のヤマタケと気絶しているジロキチを交互に見ながら感想を述べてやる。ユイ女神バージョンがいなくなってしまったことで術が解けてしまったのだ。


「その子が乱咲が新しく部下にした子供かい?」


 マカベには電報で伝えておいた。この世界はネット環境はないが電報を送れるくらいには技術がある。こんな田舎村を指定していたのも、電報が普及されたばかりなのを知っていたからこそ選んだ。ユイ(仮)に伝達手段を与えないために。あいつらに何か細工ををされ俺の存在が知らされる可能性があったからだ。

 流石に考えすぎかとも思ったが。


「いいや。この結果であれば配下レベルがいいとこだろ。マカベ俺のことはこれからシンドウと呼べ。そして神藤結のことはそのままユイでいい。マカベにはユイの目が覚めるまで介護を頼みたいんだがいいか?」


 愛華紅姫は技術者であり戦闘力も人間としてはトップクラスである。俺の仲間である。それにしてもあの可愛かった後輩のマカベが今では大人の魅力的な女性となっていようとは。26歳か姉御と呼びたくなるカッコイイ雰囲気を出している。


「初めからそのつもりだよ。それにしてもシンドウと呼べねぇ~。どれだけユイ先輩のこと守りたいんだか、ナイト先輩。愛は人のこと変えるもんですね~。..プ~クスクス..。」


 いややっぱりなにも変わってない。あのくそ生意気な後輩のままだ。今度仕返ししてやるから覚悟しとけよこんにゃろう。シンドウと名乗るのには理由がある。そもそも乱咲という名前の人間はこの場に存在しない偽名だ。フェイクとしてあいつらに植え付けておくための名前だ。だが記憶を覗かれたユイは別だ、確実にばれているだろう。だからこそバレた時のため俺が名乗り標的とさせる。ちなみに神藤の記憶から俺達の情報がバレる可能性はない。ユイには悪いが細工をさせて貰った。


 近いうち女神が落とされたことに気づかれてしまうだろうからな。それまでに戦力を整えねばならない。


「ユイは計画に今後も賛同するだろうが、マカベはどうする。12年の間に気が変わったなら降りても構わんが。」


 12年で変わってしまったこともあるだろう。仲間だからこそマカベには選択権を与えなければならない。これだけは嘘にしてはいけないことだ。...まぁ結果が分かり切っているからこそ言うんだがな。


「結婚でもして家庭でも築いていたら迷うとこなんだろうが、生憎研究と自己鍛錬にしか興味がないくね、シンドウが楽しませてくれるなら今後も協力するよ。それと愛しのユイ先輩が戻って来てくれたのだから。」


 俺はマカベという人間が苦手だ。仲間になった経緯もユイが絡んでのことだったため、不承不承認めるしかなかった。こいつ学園に居た時からユイを尊敬..いや崇めてたからな。


「んじゃこれからもよろしくマカベ、別の連絡手段を用意してくれ。..いや用意はしてくれているんだろ。ほぼ無一文なんだ。」


 流石に毎回村の電報を使うのは面倒だ。


「ユイ先輩の貞操を譲ってくれるならあげてもいいですよ。....先輩。」


 俺の中でふつふつとした。悪鬼が目覚めるかのような怒りが湧き出した。たとえマカベでも容赦はしないだからこそ。


「ユイに手を出したらお前に地獄でも拝めない最低のショーを体験させてやるが構わないな。」


 俺は無表情でマカベに語りかける。そんなことをしたら俺はたとえ仲間であっても許す気はない。


「....!?冗談ですよ冗談。先輩がいやシンドウが変わってしまっていないか鎌をかけただけですよ。怒らないでくださいよ。」


 謝罪を受けた後、やはりこちらの世界でも同じか、ケータイなるものを渡してくる。


「盗聴の危険性はどれくらいある?」


 いくら便利でもそこが疎かになってしまったら意味がない。


「危険性は0とはいかないね。でも電報より安全だよ。私より頭がいいやつがハッキングでもしたら悪いが無理だ。」


 そうかなら大丈夫だ、ハッキングできるやつが仮に敵対勢力に大勢いて無差別に傍受したら。あきらめるしかないが、このケータイはおそらく多く普及されているだろう。ならば俺のケータイを特定させなければいい。それにマカベより頭がいい人間は当然いるだろうが多くはいないはずだ。


「わかった。この連絡手段の道具、俺はケータイと呼ぶ。直近これを3つ用意してくれ。以後必要な分の確保を頼む。資金は昔のを使ってくれ。足りなければ用意するが立て替えといてくれ。」


 昔俺たちが調達した資金がどれくらいあるかはわからない。すべてマカベに預けたからな。研究に使ってもらい戦うためのインフラを整えて貰わねばならん。


「ケータイね。分かったわ。ではユイ先輩を連れて行くわね。目が覚めたら連絡するわ。」


「よろしく頼む。俺はこの村を救うことを決めてしまったからな。後で合流しよう。」


 マカベはまた自分が開発した戦闘用兵器で飛んでいってしまった。


「おい、いつまで寝こけていやがる起きやがれ!クソジジィ!」


 こうして俺の異世界に来てから初めての嘘で救う物語が始まる。



「最近の若い者は口が悪くていかんのう~。これで後の方の報酬は頂いてええんじゃろうな?」


 俺はこの爺さんと取引をした。もちろん金でだ。この村には昔財産を少し隠しておいた。

 おそらく金策に始め苦労するだろうと考えるのは当然のことだ。金を渡し電報の使用方法を教えてもらったからこそスムーズに使えた。この爺さんのものを使用したからだ。そしてこのゲームの参加に関しても報酬の話をすると食いついてきた。


 店で買い物をする時も俺の財布で俺の金で払う予定だったから、本当に詐欺師のような真似する気はなかったんだよな...。


「俺は約束を守る男だ、これが報酬だ、さらに上乗せしてある。そしてこの村にいる間の俺の名前はロウチだ。その意味は分かるな。」


 俺は約束の報酬に加えロウチとしてこの村に滞在することを伝えるその分だ。


「はいよ、このクソ坊主に腹いせできたことじゃし、さらには報酬まで貰ったんじゃ。あんたはワシの孫、ロウチであり、ワシは何もここで聞かなかった。それでいいんじゃろ。」


 この爺さんやはり猫被ってやがったな。馬鹿なセリフ吐いてる時は大抵嘘をついていたからな。


「それでいい。あんたに頼みたいことがあるんだが、この町のそうだな身分証明を発行できるところに顔は利くか?」


「流石にそれは無理じゃな、たとえできたとしてもバレたらワシの人生が終わる。これは報酬云々の話ではないわい」


 やはりそうか。まぁいい少し面倒が増えるが問題ない。


「わかった。では帰っていいぞ。ちなみに言っとくが余計なことをしたら、老い先短いあんたの寿命を減らすことになるからな。欲は働かせ過ぎないことだ。」


「ご忠告感謝しておくわい。じゃあの。」


 本当にこの世界は欺瞞に満ちているな。あんな規模の畑を持っており、そして護衛かしらんが人を雇っていやがらせに行くことができる。なによりも防犯カメラの届かない遠くの畑での暴力行為だ。捕まるわけないよな。そんなことができる人間が権力を振り回すだけしか能がないクズなわけないじゃないか。


「さて、ひどくやられてるな。どれだけあの爺さん鬱憤が溜まっていたのやら。」


 まぁ半日以上におよび暴力を振るわれたらそうなるわな。それでも一対一のフェアな戦いの場になるようにしたのにこれだからな。ヤマタケは正直期待ハズレもいいとこだ。


「仕方ない苦手なんだが回復魔術を使ってやるか。」


 俺は基本魔術は嫌いだから覚えていない。覚えようと学園で試しはしたが、理論的でないというか。

 ..正直面倒だった。ガリ勉のユイなんかは好きなのかもしれんが俺には無理だ。


 ◇


 30分経過


「まぁそこそこ回復したんじゃないか。おいヤマタケ感謝しろよ俺の慈悲によ!」


「誰が感謝するか!死ぬかと思ったわ。人取り押さえて無理やり回復魔術を使用ってどういうことだよ!しかも回復箇所が激痛とともに回復するとか。わざとやってるだろ!」


 そう俺の回復魔術は欠陥品だ。癒しではなく苦痛をもって直す。だから基本はユイにやってもらう。はぁ~会いたいな。膝枕してもらいながら癒されたい。


「わめくな負け犬が、話かけるならワンって言ってから話しやがれ。」


「....。」


 そうだよな。例え相手が動けないと思い込んでいたとは言え、決闘で老人一人に勝てないのだから。敗因はその植え付けられた負け犬根性だろうよ。


「あれだけ大口吐いて、俺頭いいんだよみたいなドヤ顔して負けてりゃ世話ないよなぁ~。女の子の前で強がりすら見せていたな。しかも俺が指定したルールを見抜くことすらできず。まだまだあるがどうする聞かせて欲しいかな。ヤマタケ、お前じゃ気づけない真実をよぉ!」


「........くそが!あークソだ。いくら落ちこぼれようが、それはまわりのやつが生まれ持った魔の力や体格に恵まれるてるとかの差だったはずだ。頭の回転の速さは絶対僕の方が上だった。年上にだって負けなかった。...だが結果僕は落ちた。誰かがはめたんだ僕を!あーこれじゃ敗北しか残らない!ちきしょーが許さない絶対許さない。こんなに惨めなのは生まれて初めてだ。あんたは結局なにがしたかったんだよ!僕を見て笑いたかっただけか!それなら大成功だろうよ!」


 あららヤマタケが壊れちまったかな。..だが逆だよヤマタケ。これならお前を配下にはしてやれるよ。


「そうだな。今のお前の表情最高だぜ。制約通り命令に従ってもらうぜ。」


 俺は勝負には勝っていた、爺さんの顔面を殴れなかった時点でな。まぁ早めのリタイヤをオススメしておいて、助けを呼ぼうが空間から出さなかったのは悪いとは思っているよ。


「これ以上あんたが俺に何を求めるんだよ。価値がないことが分かったんじゃないのかよ。」


 価値ね。大分自分を見つめ直すことができているようだな。


「それじゃ命令を下してやるよ。もう一度この村を救うために動け!」


 こいつがあの爺さんを捕まえてでもしたかったことをもう一度させてやる。






お読み頂き感謝します

スペラ@小説家になろう

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