10-4 嘘は支配者の傀儡を謀る④
修行を付けようと意気込むが見た者は...
宿で一日を休みとして過ごし
5日目となる。
「いや~森林に戻って来たのはいいが面白いことになってんな。
いつの世も戦いとは空しいものである。南無南無...。」
何十人もの間で抗争が起きていた。そう捉えるべきだろうな。
「私、瀕死で人がこんなに転がってるの見たことないよ?
夜にはシンドウ君に渡しは転がされてしまうんだけどね!」
ミーアには恥じらいというものはないのだろうか?ないのだろうな。
この戦場の後を考察するとおそらくマフィア同士のつぶし合いは4組と見える。
服装に共通点が存在するのも根拠なのだが武器の特性を考えるとおおよそ組分けは正しいだろう。
4組のマフィア
カリノファミリア
ガロンファミリア
ミフネファミリア
ネジリファミリア
俺は町にただ金稼ぎにいたのではない。情報も収集しておいたのだ。
カリノファミリア
少数精鋭での組織作りを行い、戦い方は個人個人に委ねられている傾向が強い。
それでもチームでの戦いに備え下っ端には高度な連携もされ練度を高めている。
オールラウンダでありチームでなくなってもソロでも戦える。
ガロンファミリア
構成員数は中レベルであり、情に強い側面を持つ。
意識統一という観点に置いては優れており裏切りといったことは起こり難い。
他のマフィアにはつけ狙われやすいと思われているようだがボスの力量はこのエリアで3本の指に入ると言われるらしく最も長く生き残っている。
武器はシンプルに拳銃又は拳で語れ的な組織。
ミフネファミリア
構成員数は大レベルであり述べた4つのマフィアの中で最大規模を誇る。
大きな組織だからこそ実力至上主義らしく幹部はころころ人物が変わるらしい。
だがボスの存在は大組織に関わらず全く情報が掴めない。
恐ろしいほどの食わせ者である。
武器は大量生産されているのか赤がトレードマーク銃又はドスを揃えている。
ネジリファミリア
構成員数も幹部の存在も全て謎である。
だがボスの正体だけは明かされており、異名として「切り裂きジャック」と呼ばれているらしい。
ジャックナイフで見た者全てを切り裂く。近距離のみでの戦闘のみを得意とし、近接戦闘に置いてはこの区画最強と言われているらしい。
見た者全て切り裂くなら構成員いないんじゃねーの?と調べたところボスの背後に裏の人間がおり操っている説が濃厚らしい。だが共通していることがあり構成員はジャックナイフでの戦闘を繰り返す傾向が強い。
ちなみに構成員小は100人以上、中は500人以上、大は1000人を超えるとのことだ。
俺が調べた情報を元に考えた結果この4組は昨日より抗争を起こしている。
おそらく理由は俺達に起因しているのだろうな...。
この4つのファミリアは主に西側のエリアを勢力図としている。東側は...ケンジがいるなら酷いことになってるんだろうな。
「ミーアは恥じらいというものを身につけた方がいいぞ。俺はどちらかと言えば従順でおとなしめだけどだけど意見はハッキリと言うし、相手に尽くすしてくれるタイプが好きだ。」
ユイは最高でありドストライクである。もう俺の独占欲をこれ以上ないほど滾らせてきよる。
やっぱり恥じらいは大切であろう。世の男性なら分かってくれると信じている!
「そうなの?
シンドウ君はエッチな女の子は誘惑してきてもおとなしい子が好きで手出し禁止!と言われて耐えられるの?」
「....。うわぁぁぁんん!
ミーアに純情を弄ばれるよぉ~助けてクリエモン!」
「ひゃい!!」
俺は倒れているやつの身ぐるみ剥いでいるクリスの腰に抱きついた。
クリスよ。君は逞しく生きて来たんだねと思うような行動に俺は尊敬を覚えている。
「なによクリエモンって!離しなさい!そして千秋さんも羨ましそうな目でこっち見てないで助けなさい!」
いや~悪いねクリスよ。傷心しているんだ堪忍してぇな。すらっとしていてくびれが服を着ていてもよく分かる。ユイほどではないが癒されるな。
...危ない危ない本気で激怒しそうなので離した。
「冗談はさておきマフィアの抗争があったのは言うまでもないことだな。遠くの方ではまだ抗争は続いているようだから向かうとしよう。」
せっかくのチャンスである。
抗争が激化しているのなら強者が生き残り戦っている可能性が高い。
正直カリノファミリアの下っ端ではもう経験値として得られる量はあまりないだろうからな。
人として壁を越えた人間にとっては強敵との戦闘がなによりも身を強くする。
戦いに挑む覚悟である精神力の向上
負けられないという意志が己の動きを洗練させる技術力の向上
戦えば自ずと肉体にも影響を与えより強くするステータスの向上
心技体を鍛えるなら危ない橋を渡ってでも茨の道を進むべきであろう。
「せっかく金目の物が転がっているのに拾わないのかしら?今後の資金に必要なんじゃないの?」
「資金の方は俺がなんとかするので心配無用だ。ばっちいから捨ててきなさい。」
不承不承という表情をしながらもクリスはしたがってくれた。
気持ちは分からんでもないんだがな。地球にいたころはよくポイントやクーポンを上手く活用して生活していた。主婦力の高さを褒めて欲しい所である。
◇
◇
俺達は倒れ伏してるやつらの血の血痕を辿り抗争場所に着いた。
「シンドウ君!もういいよね!私にヤラセテ!殺らせて!」
「物騒なことをわめくんじゃない!発音が違ったのは気のせいだよな...。ツッコまないからな!」
茂みに隠れながら状況を俯瞰していたが耐え切れずミーアが出て行こうとする。
全くこんな好戦的な子になってしまって私は悲しいよ...。
まぁ俺のせいだからいいんだけど作戦は守って貰わねば困る。
今10m先で戦闘を繰り返しているのはガロンファミリアとミフネファミリアである。
ミフネファミリアが20人に対しガロンファミリアは4人か。
数の差は練度でカバーしているがおそらく5分も持たないだろうな。
ガロンファミリアが殲滅されてから戦う状況が都合がいいだろう。
「ここに来る前言っただろう。極力戦う時はマフィアが一組となった時にだ。マルチでの抗争となると場数は踏めるかもしれんが効率がいいとは俺は思わん。」
相手を圧倒できる実力差があれば止めはしない。
だがそうでないのなら考えが足らない無謀なやつと判断せざる負えない。
物語でいう勇者は名は体を表すように、勇気を持った者であり臆さず果敢に攻めるのかもしれん。そんな勇気ある者を全否定するわけではないが死に急いでいるとそう俺は判断してしまう。
勇者が勇者足りうる条件はその勇気を持ち仲間を真の意味で鼓舞し救えるそんなやつが称えられるのではないかと思う。
「私もシンドウ君と同意見よ。危ない橋を渡ることは経験値として大きいけれどリスクを考えたら渡らないに越したことはないわ。」
クリスは賛成意見のようだ。
クリスの場合は戦いその物に関してはさほど興味もないのだと思う。生きるためならだれであろうと殺すだろうが、不必要な殺生は好まない。武士道をも思わせる勇ましさを感じてしまうぜ!
「クリスさんはもうちょいやる気出してくれてもいいところだがその通りだ。ミーアが後三倍くらい強かったら俺も止めはせんから精進して今は待つがよい。」
ミーアは不満そうな顔をしているが渋々了解といったところだ。
◇
6分程達抗争が終わったと同時に俺達は飛び出した。
相手は15人おり三倍の戦力である。
カリノファミリアほど練度も戦闘力も高くないのであまり消耗せず勝てると読んでいる。
「私のために悪いけどやられてね!」
ミーアは不意打ち気味に相手に膝蹴りを相手の溝内に叩き込み。錬成しただろう棍で二人目の溝内にも叩き込んだ。
相手二人は疲労もあったためか溝を手で抑えながら倒れ込み、呻いてるだけで立ち上がることはできないでいる。かなり痛いのだろうな~
ちなみに俺は二人を鍛えるため森林に入る前から殺人を極力しないようにと告げている。自分より格上ならば許可しているが、可能ならば避けろと。
なぜこのような指示を出しているかと言うと勿論人殺しなんて真似をしてほしくない!という俺の正義の心が告げている......。
....。
....。
ごめんなさい嘘です。こんな偽善者らしい言動を想うことすら吐き気がしそうだ。
ミーアとクリスでさえ俺が正義の心がと言った瞬間苦笑いしていたからな。
....でも俺好き好んで殺戮を楽しもうとか言うキャラじゃないからね!なぜか皆はそういう風に俺を見ている風潮があるが気のせい気のせい。
殺さない理由は単にリサイクルしたいのと効率がいいからだ。
カリノファミリアの下っ端は俺らの首を取らんと面子が立たない。そして死んだのならばそれで終わりだろう。だが生かして、さらに治癒魔術まで掛けて放置すればまた襲いかかってくる。
これが何を意味するのかというと
ミーアとクリスは同じ相手のため場に慣れることができるし、疲労が続いても相手をよく観察できていることから神経を研ぎ澄ませば敗北する確率は低いだろう。
さらにカリノファミリアはミーアとクリスの戦闘スタイルから対策を当然取るため、ミーアとクリスに今何が弱点で、どう補えばいいかを実践で培える。
いや本当にカリノファミリアで良かった。少数精鋭であれば数的優位は2~5倍というところだし練度が高いということは戦う相手として経験値はより密だろう。
ドラクエで言えばメタル系スライムが倒してもまた蘇り襲いかかってくる。
いや~実に効率的である。
「極悪人のような人相してるけどまた悪巧みでもしているの?」
「すまない。調子がいいとついにやけてしまって....その極悪人というのは傷つくからやめような。」
普通にしている分には特に何も言われないんだが、にやけるとどうも怖がられることが多い気がするな。
唯一あいつだけは俺のにやけ面の方が親しみやすいぜと言って来たっけな。昔のことを少し思い出すな。
「シンドウ君がそんな繊細なタイプでないことを知ってるから止める気はないわね。これまでの仕打ちに関して反省なさい。」
「クリスの姉御には頭が上がらねえでございますな~」
「....はぁ~。やめるから。その下剋上狙うような目でそのセリフは止めて。仕返しを喰らいたくないという私の中でのトップが今不動になったわ。」
失礼だな。
にやけながらこびへつらうような、小物臭を漂わせて接近したのだが予想以上に警戒された。
俺は悲しいでござるよ...。
「さて後半分くらいか。クリスさんもバトっておくかい?」
ミーアが暴れて敵の数は半分となっている。
一昨日までの相手に比べればこれくらいは大丈夫であろう。
「あれくらいなら戦っても無駄に消費するだけのようだからパスね。千秋さんに任せるわ。」
やはりやる気は起きないか。
クリスも実感しているのだろう。
練度の高いカリノファミリアでさえもう格下なのだと。
あまり戦闘は好まない性格ではあったがいざ戦うと冷静な上に相手の先を行く考えとセンスがある。
武器を選べる戦いであればこの区画で負けることはないのではないだろうか。
「ミーアのスタミナに限ればこの区画のトップクラスを取れるだろうからな。ボスでも出て来ない限り任せても問題ないか。」
ボスには勝てんだろうがミーアは幹部には勝てるかもしれない。それくらいの実力は付いているから大丈夫だろう。
「シンドウ君それフラグ立てているんじゃないかしら?」
「うん。分かってて言った。」
残りは後3人というところでそいつは抗争を繰り広げている場所にやってきた。
「ちょっと!分かってたなら言いなさいよ!」
クリスが猛反論してきた。
いやボスが向こうから来るんだったら手間省けるから俺としては助かるんだもの。
やってきたジャックナイフを持ったその男はチラリと俺の方を凝視した後恍惚とした表情を浮かべながら今度はミーアの方に向かって行った。
「やべい!あいつ予想をはるかに上回っていやがる!」
俺は見誤っていたことに瞬時に気づき飛び出した。
おかしいだろなぜこの区画にあんな化け物がいるんだ!
俺はこの辺をしっかり観ていたし、近寄ってくるやつの力量をある程度把握していたつもりだった。
でも俺はこの時後悔した。
修行を積んでおいたし、この区画の幹部の実力を確かめたのでボスはレベル3相当であると考えていた。
なのでレベル2でもトップクラスのミーアはそう簡単にやられんし、レベル3に到達しているクリスはもはや余裕すらあるとそう考えていた。
「...ガぁ...シンドウく..ん..ごめ..。」
ジャックナイフ使いの男がミーアの心臓を一突きし、命を刈り取るのは一瞬だった。
俺のあらゆる技を駆使しても距離が足らなかった。
俺は立ち尽くし茫然とミーアが倒れる所を眺めることしかできなかった。
嘘だ
これは嘘である。
俺は万全の準備を尽くした。
情報を集めボスの力量は間違いなくレベル3である確信はあった。
俺の観る目は間違いなくここに来たこいつの力量はレベル3がいいとこであったはずだ。
この男が恍惚とした表情を浮かべると力量は増大しレベル4..いやレベル5までいかなくともそれくらいは一気に上がった。
こんなことは嘘である。
俺やケンジのような高エリア戦経験者ならばある程度は力量の操作も可能だが、いるわけがいないと俺は思っていた。
「ヒヒっ...。お前。相当強いな。久しぶりだ。...楽しもうぜ。」
男はさらに周りにいた三人も一突きであっさり殺してしまった。
この男は何を言っているのだ。
誰に向かってそんな舐めた口を聞いているんだ。
俺に嘘は通用しない。
俺以外が俺に嘘をつくことを俺は許さない。
誰の許可を取って俺のモノに傷をつけやがった。
俺のモノに俺が許す傷以外つけることを誰が許した。
「いい。これほどの殺意。初めて。...すごくいい。」
俺は遥か昔を思い出しながら。
この世界に戻って来て初めて....
本気でキレた。
クリスさんは嫁力が高い娘なんですよ~




