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10-3 嘘は支配者の傀儡を謀る③

修行は始まる

「クリスおつかれさん。ミーアと交代だ。」

「はいはい。千秋さん私にはイチャイチャ禁止と言っておきながら自分はしてるんだから、その分は戦いなさいよ!」

「ごめんねクリスさん。了解よ!今ここにいる分は片付けるわ。」


 ミーアは飛び出していく。

 相手の数は残り4人か。

 こちらの戦力の分析のための斥候部隊だったのかもしれんな。

 これなら後は時間の問題であろう。

 なんかミーアは一段階また何かギアが外れたような、そんな印象を受ける。


「何か千秋さんにアドバイスでもしたの?10分程で見違えるような表情してたけど。」


「俺なりのやり方でミーアの進むべき道を占っただけだよ。本当に大したことはしてないさ。」


 自分のことを知ってくれる人がいる。頑張りを褒めて貰える。

 そんな子供かよって思うかもしれないが、凄く重要なことだ。

 年を取ると素直な気持ちはどんどん薄れてしまうものだからな。


「クリスも何か占ってやろうか?」


「いらないわ。私は自分の道は自分で切り開きますから。千秋さんが悪いと言ってるわけじゃないからね?」


「分かってるよ。でも借りを返したいなとは思っていてな。物欲であれば大抵のことなら叶えられる自信があるぞ。」


 金で解決するなら俺の得意分野だ。

 昔もそうだったが、営業マンとして地球で過ごし磨きがかっている。


「治外法権の効く私の賭博場を用意して欲しいんだけど。」


「...。叶えることはできるが、かなり危ないぞ。」


 とんでもない要求が来たな。国に干渉されん賭博場は内容によっては危険すぎる。

 帝国機関は内部で動かせる権限をアカシから受けられるかもしれんが責任はこちらで持つことが前提となる。

 運営を行うなら後ろ盾が必要となるだろう。


「それ本当に言ってるの?物欲って言うから冗談のつもりだったんだけど。シンドウ君の経歴が知りたくなったわ。」


 経歴か....

 思い出したくもない過去だ。

 そもそも俺はアカシによって高校は通っていても、それ以前は放浪者として彷徨っていたと言ってもいい。

 あまり女性には知られたくないもんなんだよな。

 よく言うだろ3K。高収入、高学歴、高身長がモテる要素だと。


「経歴はトップシークレットだな。人間誰しも秘密の1や100個あるもんだろ」


「隠し事があるのは当然のことよね。...100個はないのだけど。冗談よね?」


 勿論冗談である。100個なんて数で収まるわけがない方なんだけどね。


「トップシークレット!禁則事項です。お答はできませんな。無駄話をしている間に終わったようだぞ」


 時間にして4分程か..。

 戦いの様子は伺っていたのだが、言えることが言えることがあるとしたら早い。

 物理的に早いことは早いが、相手の間合いや動きを読むことが瞬時にできているのだろう。

 戦い方は様々心得ているつもりだがやはり俺と似ているな。

 動きを読むと言っても未来予知とかそんなものではないのだ。

 相手を誘導する戦法を得意としているため予測できるのだ。


 過去にミーアが言ってたっけな、ケンジと同様に未来予知のような真似ができるのではと。

 いい線は言っていたがケンジのような万能なものではない


「シンドウくぅ~ん見ててくれたかな?この勝利をあなたに捧げます!」


「いらん。ミーアの勝利も既に俺自身のもんだ。捧げるのは俺への愛や忠誠心だけでいい。」


 勝利することは当然のことだと思って貰いたい。

 その上で無傷や相手の捕獲等を目指し結果を出す。

 与えられた仕事において120%の結果を目指すことは当たり前だと自覚できれば世の中成功するもんだ。


「二人を見ていて思うのだけど恋人にでもなったのかしら?この区画にくる前はそんな雰囲気ではなかったような気がするんだけど。」


「恋人か....私は勿論愛してるし付き合いたいのだけど、シンドウ君は彼女が既にいるようだし片思いの域を出ないのよね。」


 あれ?

 わりと覚悟していたつもりだったんだがそういう見解になっているのか。

 もうユイへの裏切りは自覚しているし後戻りができないことは分かっている。

 やはり俺の根本的な所は昔からこれっぽっちも変わっていない。


「何言ってんだミーア。俺は愛していない相手をベッドに押し倒すような真似なぞせんぞ。最も愛してるかと言われると嘘になるが、ミーアが幸せになるのであればいくらでもそばにいてやるし抱きしめてやる。覚悟はしているし、手放す気はないぞ。」


 もうユイにはバレるだろうし悲しい思いをさせることは分かっている。

 二人の内どちらかに後ろから刺されても後悔はしない。

 その時は男としての器はその程度のもんだったってことだ。


「..その私としては愛人でもいいからシンドウ君の傍にいたいと思っているんだけど。それは私のわがままだし...本当にいいの?」


 ミーアは頬を染めながら返してくる。

 自分からはアタックしてくるのに、アタックされると弱くなるタイプなのかな?

 こちらは悪いが精神年齢は30歳近くである。

 一々恋愛感情で一喜一憂はあまりしない。だから堂々と答える。


「くどい!ミーアにその気がないんだったらなしにしても構わん。だが俺がミーアを愛してるのは事実だし、ミーアが俺の事を愛してるなら恋人になるのは当然だろ。さっさと結論を出せ。」


 正直言うと俺は童貞ではない。

 ユイと出会う遥か前からことは済ませている。

 俺の少年時代は荒くれていたと言っていい。だから愛の叫びの臆したりはしない。

 今でこそ性欲は抑制できているがミーアのような美人に好きだと言われ誘惑され耐えるのは至難である。

 性欲と愛は表裏一体であり分けて考えるのは難しいのである。

 ユイに比べればミーアへの愛は性欲の割合が大きい。

 だがそれでも心ではミーアに惹きつけられてるのも事実なのだからもうどうしようもないのだろう。


「...その。...私と恋人になって欲しいです。よろしくお願いします。」


「わかった。これからもよろしく頼むなミーア。」


 俺はミーアを抱きしめた。

 抱きしめた身体は思いの他小さく、細くしなやかであった。女性特有の肌の柔らかさも感じる。

 先日は勢いであったため意識をそこまでしていなかったが、俺の中でも気持ちを整理をすると愛おしさを感じることができたためか感情が湧き出てきた。


「...あの私から話題振っておいて何なんだけど。私の存在を忘れないで欲しいな。」


 クリスは苦笑しながら状況を俯瞰するのだった。



 森林エリアでの戦闘は3日目を迎えている。


「ミーアにクリス案外やればできる子だったんだな。....関心関心。」


 俺は腕を組みながら仰向けに転がっている二人を見ながら感想を述べていた。

 勿論二人の命は守りきると決意はしていたが、いざ戦いとなればどう転ぶかは戦いの女神になんとやらだからな。実力もさることながら運もなければ生き残れないだろう。


 観ること3日

 ミーアのレベルはこのフロアのトップクラスにはなっているだろうな。

 そんなに短期間で強くなるものか?と思うかもしれんが修羅場というのはいつの世も逞しく人を成長させるものだ。

 人の歴史もそう物語っている。

 戦いに身を置くものは絶えず進化を続けるが、退くものは退化する。

 何も無駄死にしろと言っているわけではない。

 あくまでも自分を越える一歩先を踏む勇気と覚悟を持って欲しいということだ。


「関心関心じゃないわよ...。強さへの渇望は少しはあったけどここまでやる気力はなかったのよ?」

「え~。クリスさん途中からノリノリに見えたけどな~。シンドウ君もそう思わない?」


 あれだけ動き回って無駄口叩けるくらいなら上出来だろうな。

 クリスに限っては2日目辺りからアドレナリン出まくって一種の興奮状態でバーサークガンナーって感じでイカしてたぜ!何か過去のトラウマスイッチ入れちゃったかな?


「二人とも..余裕があるようだな。じゃあお次は...」


 二人の顔が青くなっていく。

 俺は何か行動を起こすと決めたら容赦しないからな。

 それがこの約3日で身に染みたのだろう。


「冗談だ。冗談。クリスは後2時間で、ミーアは後5時間は戦い続けたらおそらく疲労で動きが鈍り殺されるだろうな。だから1日休むことにするからそんなに怯えなくていいぞ。」


 交代で戦い続けたが常に戦いに集中力を置き続けたので無理もない。

 敵は夜だろうと襲ってきたのだから。

 基本的には俺ともう一人が警戒し2時間睡眠を3回ずつ取らせた。

 俺がいる限り精神力があれば戦い続けることは可能なのだ。回復させられるのだから。


「あなた悪魔の生まれ変わりなのかしらね。2時間という具体的な数字を言われる方がぞっとするのだけど。ポーカーフェイスはお手のもんな勢いで限界は来てる合図は出し続けてるのに止めないのは分かっててやってたということなのよね?」


「....。そ、そんなわけないじゃないか~。やだな~もう。ところでさ話変わるけど、必死に助けを求めてる相手に鞭を打つのって興奮しない?こうカワイイ子ほどいじめたくなっちゃう的な。」


「私の中で世界でヤバいやつランキング不動の1位を飾っていたシキという男の順位が揺らいだことをここに宣言しておくわ。おやすみ。....。」


 あらら...。力尽きて寝ちまったか?

 いやいつ気絶してもおかしくなかったからな。

 休みを言い渡したことで緊張の糸が切れたのだろう。


 ちなみにこの3日の一番の成長幅が大きかったのはミーアではないクリスだ。

 精神力という意味ではミーアは成長したことは確かだ。だがそれはまだ芽吹き出したばかりにすぎん。

 キッカケは確かに人を強くするが、下地となる物がなければいけないのだ。

 才能というのは存在するが、それがすべてではない。何の対価もなく得られるものはまやかしに過ぎん。

 クリスはこの第3区画のボスをソロで相手できるだろうな。

 中距離であればという限定ではあるが。


「ミーア疲れてるだろうが自分で歩けるな?

 町に戻ることにする。シドウさんだったな援助してくれていたのは。

 俺もここに来る前に会ってな宿はそのまま使ってくれていいようだから使わせて貰おう。」


 シドウという者の存在はまだ役にたつかもしれん。

 どうしてもこの姿は若く見えるだろうからな。中身はもうオッサンかもしれんがいいのだそんなことは!

 なんだかんだ若返りは嬉しいので喜んでいるんだよな。


「うん歩けるよ。でも戻ったらマフィア達にまた襲いかけられるんじゃないの?」


 3日も森林で襲いかけられたからな無理もないだろうな。

 だが何も問題はない。

 この世の中にはいつも裏切らない真実がいつも一つ存在しているからな。


「大丈夫だ心配は不要。町付近に近づいたら荷車を作ってミーアとクリスを俺が宿まで運ぶさ。ゆっくりやすんでな。」


「シンドウ君が悪い笑みを浮かべてるな~。承知したよ!

 シンドウ君がそういうなら大丈夫なんだろうからね。」


 ミーアは真面目な表情で言葉を返してくる。

 信頼してくれてるんだろうな。

 なんなんだかな~。気が緩んでしまっているだろうな。

 恋愛ごとにうつつを抜かす暇なぞないと思っていたのに心は否応なく鼓動を増していく。

 先ほども思ったが俺はまだ中身がオッサンとはいえまだ若い方である。

 心情としては年下の大学女学生が好意を向けてくるのだ。

 性欲にも限界があんだぞチクショーが!

 ...ふぅ。落ち着け。まだ大丈夫だ。感情は抑制できる。


「あぁ。なにも心配する必要はない。行くぞ!さっさと宿で寝たいからな。」


 ちなみに俺は2日寝ていない。2徹である。

 ケンジかシキでもいれば交代できたのにと思うが諦めよう。

 くたびれたから早く寝よう。


「そのシンドウ君...。無理しなくていいからね?

 その...私でよければいつでも構わないからね。

 昨日は嬉しかったです。」


 ミーアは俺の下半身を見ながらそう言ってきた。

 くそっ!

 ユイが隣にいる時は頭の片隅でひたすら円周率数えて耐えていたというのに身体は正直なようである。

 顔は世界で一番ユイがカワイイには揺るがんが身体付きミーアの方がいいのは必然だ。

 ユイは幸せを運ぶ天使だがミーアは癒しいや煩悩を呼び起こすサキュバスであり悪魔だ!


「五月蠅いわい!

 今はそんな時じゃない!

 まぁ...その宿着いたら考えるさ。」


 ごめんなさい。ユイ天使よ。

 俺は悪魔の誘惑に耐えられる気がしません...。



シンドウとミーアの恋人関係は始まる

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