8-4 嘘の王道は異端者を裁く④
シキが用意したゲームは続く
第一回戦として型抜きがスタートする。
「凄い!凄い速度だ。ミーアはやればできる子だって思ってたぞ!」
「まぁ千秋は器用だったからな。そこがまた腹立たしいところなんだがな。」
ミーアは凄まじい集中力を発揮し型抜きを行なっている。相手の棒金も遅くはないが型抜きを成功させている。ガタイの良さと不釣り合いすぎだろ。よく受けたな棒金よ。
「まさかシンドウが伏兵を入れているとは...やるな。ミーアちゃんは大胆な行動が多かったから細かい作業が苦手だと思ったのに。っち。」
そんな適当な理由で型抜きかよ。片付けの時も思ったが行動がテキパキとしてて器用なのは知ってた。
「ミーアちゃん!後ろでシンドウ君が君の勇姿を見て照れ顔してるよ。こんな顔はめったにない!見なきゃ損だよ!」
「えっシンドウ君の照れ顔!見ててくれてるシンドウ君!」
「惑わされるな!集中して型抜きを続けろ。シキテメェ汚ねぇぞ!」
コイツ勝てないと分かり次第すぐ妨害かよ。本当に変わらんな。
シキはパチンコを生成する。
「ミーアちゃん悪いな。せっかく綺麗に型抜きしてくれたところ悪いが。」
「させるかよ!」
俺はミーアの近くに行き空間魔術で玉を収納した。コイツ本当に汚ねぇ!容赦なく砕こうとして来やがった。
「おいシンドウ何してやがる。選手に近づくんじゃないよ。集中が乱れるぞ。」
「シキ後で覚えてろよ...タイムアップだろ。早く宣言しろ。」
型抜きは10分に指定されていた。枚数多く型抜きできた方が勝ち。
「っち。勝者ミーアちゃんの5枚。ミーアちゃんは凄いな。型抜き初心者とは思えないよ。おじちゃんがチップ1000枚あげよう。」
「...ふう。終わったのね。ありがとうねシキさん。披露宴では呼ぶからシキさんも来てね。」
「やかましいんだよお前ら!シキさっさと次のバトルを発表しやがれ!」
流石にもうツッコム気力も失せている。さっさと終わらせてしまいたい。
「シンドウには情緒という物がないのかね〜。禿げるし早死にするよ?禿げたら良い育毛剤あげるよ。...怖い怖い。そう睨むなって。」
俺は割とキレた表情で応対する。
「第2回戦はドキドキ心拍数テスト勝負だ!手首にこのベルトをつける。相手を誘惑し興奮値を上げて1時間後に計測結果が高い方が負けだ。暴力行為は反則な!」
また変なゲーム持って来たなこいつ。
「ちなみに何でこのゲームなんだ。気になるから教えろ。」
「そうやって探りを入れるの禁止だ。ゲーム終わったら伝えてやるさ。今回は外野が手出ししたら負けだからな。」
「する気はない。シキも外野ということでいいんだろうな。」
こいつさっきの不正行為をさせない気だな。
「そうだな、まぁ今回は俺も手出しはしないさ。男が勝てるわけないからな。ゲームスタートだ!」
◇
開始3分無言が続いた。
「………。」
「………。」
これお互い急にやれって言われてどうすればいいか分からないやつだろ。やめてやれよ!
「はぁ〜クリスさんだっけか。すまんなこんなことに巻き込んでしまって。クリスさんから奪うかもしれんチップ1000枚はいずれ俺が返すからリタイアしてくれ。」
「その..私にも負けられない事情があるので無理なんです。私も覚悟を決めたので全力で戦います。」
「そうか、チップ1000枚だからな何かしらあるわな。何をすればいいかまだ決めていないが俺も全力を尽くそう。それが礼儀ってもんだ。」
なんだかんだ。両名のやる気は出てくれたようだ。
「鉢巻さんと言ったわよね。好きな色は?」
「答える気はない。」
「どんなジャンルの本を読む?」
「ほぼ全て」
「...ダメね。情報を引き出すことはやはり難しいようね。」
そりゃ動揺を引き出すには情報でもなければ会話からは無理だな。
「...シキ許さないからね。はぁ〜」
クリスさんはため息を吐きながら靴から靴下までゆっくり脱いでいく。もうハニートラップしか選択値がなかったのだろう。
「クリスさんやめておけよ。俺から見てもあんたに魅力は感じてるから有効かもしれんが、クリスという女性の品と質が下がるぞ。」
鉢巻はいいこと言うな。うん。
「確かにこんなことはしたくないんだけどね。でも鉢巻さんはリタイアする気がないんでしょ?」
「当然だな。俺は負けない。負けたらそこにいる監守の思うツボになるのが1番気にくわない。リタイアしてくれクリスさん。」
お互いに引けない理由がある。俺としては助かるが鉢巻よ無茶するな!と声かけたくなるじゃねーか!
クリスさんは薄めの上着を脱いだ。やばいな〜これ以上脱ぐと下着確定だろう。場の雰囲気だけでもドキドキ感が出てくるぞこれ!
「クリスさん...なんであんたそこまでするんだよ。確かにこのマップで1000枚の重さは分かってるつもりだ。でも俺はあんたのギャンブルを見たことがある。素人の俺が見てもあんたは一級品だと分かる。貯め直せ。俺が協力してやるから。」
「褒めてくれたことには感謝するわ。私も貯め直すのは大変だけど、不可能ではないと分かっているの。だからこれはチップとは別にあるのよ。だから譲れない!」
なんだろう。凄い熱い展開になって来てるぞ。そして隣のミーアの負のオーラが凄い。そんなに嫌ならもう叫んでもいいぞ。ミーアを置いていく理由になるからな。
クリスさんはズボンを脱いだ。シャツが大きめなのか下着が少し見えるくらいだ。
「...。はぁ〜もう好きにしろ。俺も覚悟を決めた。クリスさんがこの一件で貰い手がいなくなったら俺のとこへ来い。俺には好きな人がいたがもう未練はない。女性を辱めたんだ責任は取ってやる。」
鉢巻は腕を組み堂々と言い張った。何コイツ本当に主人公なの?己の道を突き進むタイプと見ていたが芯が強すぎる。やばいこれはぐっとくるもんがあるな!そしてミーアよそんなに嫌ならなぜ鉢巻と付き合おうとかならないんだ。
「...!?鉢巻さんは口が達者ね。嬉しいけど私も他に好きな人がいるのよ片思いだけどね。でも逃げで他の男に靡くような真似はできないわ!」
クリスさんはシャツを脱いだ。ブラとパンツの状態である。もう勘弁してあげて!恐ろしく恥ずかしい羞恥心をクリスさん発してるよ。ポーカーフェイスがやはり得意なのだろうが俺には分かってしまうんだよ!...しかし驚きなのは鉢巻だ。ほとんど動揺してないんだが。
「どうかしら。私はそこまで自信家にはなれないけど、見られてもはずかしくない身体つきはしている自負はあるわ。....あの鉢巻さん。私ね人の表情を読み取る能力は長けているし、だからこそギャンブルに強い自負もあるの。あなたのそれポーカーフェイスじゃないわよね。」
俺もおかしいと思っている。クリスさんは間違いなく美人の類だしスタイルもいい方だろう。俺なんか既に動揺はズボンの時点で負けてる自身がある。
「ポーカーフェイスは作るものだ。俺はそんな器用な真似はできんさ。悪いなクリスさん俺にハニートラップは効かないぞ。下着を脱いだとしても意味はない。」
「...そ、そんな。なぜか聞いてみてもいいのかしら。」
俺も気になる。男としてハニートラップが効かないとかありえないと思ってるよ。ユイがいなかったら間違いなくミーアを襲っている自信があるぞ。
「言うわけがないだろう。話したところで納得しないだろうからな。」
「...。ブラフでもないのよね。確かに納得はしないかもしれないけど理解が得られたらリタイヤすると約束するわ。それでもダメかしら。」
「....。いいだろう。だが言うには条件がある。あまり人には聞かれたくないんでな、どちらもリーダーということでいいか、シンドウとシキのみ残り他のメンバーは席を外すというなら話してもいい。本来はリーダーも席を外して欲しいが妥協点だろう。」
こちらを向く鉢巻。俺はOKサインを出す。向こうもOKらしい。
ミーアが反論がある様子だ。
「...!?」
ミーアを気絶させた。許せ俺はめっちゃ気になるんだ。
◇
場を調整した。
「どうも。これは他言無用にお願いしますね。特にシンドウさん。」
よく分からないがいいだろうという意味でOKサインを出す。
「どこから話したもんか、俺には姉貴が二人いる。それだけでも家の中に露出の多い女性がいたという結論くらい出たんじゃないかと。俺は昔家族の中では一番の下の子でしてね。姉貴達とその友人にトラウマレベルでいじられましたよ。何回襲われたことか...。」
俺としては羨ましい展開と思うんだが鉢巻のオーラの色は切実だ。
「それでもめげず俺は己を鍛え上げ姉貴達に従ってるだけの弟ではない!と証明してやり家を出た。この時点ですら既に女性への性欲なんて風前の灯火でしたよ。あくまでも姉貴達は肉親でありその友人も別のくくりだと割り切っていました。そして万全に期して俺は有名な士官学校に入学して自分を変えるため努力し続けた。」
絶望に浸った人間が変わろうとする努力を繰り返す。嘘はついていない。お前にも過去があったんだな。
「俺は士官学校で常にトップを走り続けた。正直他人のことなどどうでもよく己が道を進んでいましたよ。過去が過去だっただけあって人間関係を作ること自体を嫌っていた。だがある日トップの座はあっけなく奪われ、しかもトップを奪ったやつはなぜかやたらと俺に構うようになった。俺はそいつを抜くため努力しているというのに、のんきなツラして毎日のようにからんできた。」
俺には特にというのはやはりミーア関係だったようだな。噂からするとミーアも本来孤立を好むたちだったようだが鉢巻とつるんで変わったとかだろうか。
「しかもそいつは生活感も風紀も乱れているときた。俺をペット扱いにでもしているのか家事洗濯はやらせるは俺の予定はお構いなしに連れまわされた。本当に嵐のような人だ。でもそれは俺が姉貴達に味わったものではなかった。何かとても大切にしなければいけない日常という物をくれたんだと俺は思うようになった。」
ミーアならやりかねないと思う。おそらく自分と似た人間を見つけ、所有欲というのだろうか?自分の傍に置きたかったんだろう。俺もユイを本来なら片時も離れず傍に置きたい欲が半端ないからな。
「俺はおそらくもう恋なんてすることはないだろう。人生で最も心打つ清き感情をその人に奪われたからな。おそらくそれでも納得はせんだろ。言いたくなかったが言う。俺はその人の下着姿も半裸姿も全裸姿も見てる。俺はその彼女ほど魅力的な女性はいないと思うし、スタイルも完璧だと思っている。今更他の女のはしたない姿なぞ見ても感情は一切動かんよ。」
...生活感も風紀もってそういうことか。なんていうか凄い話で主人公の過去っぽいけど。ギャルゲーの主人公みたいで腹立つなこいつ。そりゃ~ミーアのそんな姿見ていたならもう興奮もしないかもな。
「...リタイヤするわ。なんかすごい惚気を聞いた気がして冷めてしまったわよ。ごめんなさいねシキ君」
「..まさかこうなると俺も予想してなかったからしゃーなしか。ほらよ1000枚だ。甘く見てたよ君のこと。貧困マップのかわいこちゃんをナンパしてるという情報があったから女性には目がないタイプだと思ったが見当違いだったか。」
「本当にそれだけか怪しくあるが貰ってやんよ。」
「おい鉢巻話がある。来い!」
しぶしぶこちらに来る鉢巻。
「お前の気持ちに嘘がないのは分かっている。貧困マップでのことも大方恩人が落ちぶれていく姿が我慢ならなかったとかなんだろ?だからこそ何でお前がミーアを守り続けると言わんのだ!」
「シンドウさんはまだ千秋の本領を見ていないからそう言えるんですよ。あなたが千秋の壁を破ったんですよ。千秋は誰かの中に納まるようなやつじゃないさ。俺は千秋が本気で思えば俺のように誰でも救えることができるし世界だって救える器だと俺は本気で信じている。俺は第一号となれたのならそれで十分だ。シンドウお前ならミーアを導けるから頼むんだ。」
こいつは分からず屋だ、本当にわからない。自分が幸せになることを最優先にすべきなんだよ!王道はこれだから嫌いだ。..だが、とても輝かしく清い気持ちだと俺は思った。
◇
◇
第二回戦も勝利し
席を外していたメンバーが戻る。
「は~ち~ま~き!私に教えなさいよ。さっき言ってた好きな人って誰なのよ~。」
「俺には俺の道がある。好きな人くらいできるさ。だがお前には絶対言わん。どうせ仮に知ったらどんなやつが見にいって、姑のように品定めでも思想だからな。」
「品定めはするよ!でもそれは鉢巻が悪い女の人に騙されてないか心配なのよ!あんたチョロそうだし。」
鉢巻は凄まじく鋭い人間なのに対してミーアは恐ろしく鈍く目が節穴だな。二人はほっときシキのもとへ向かう。
「第三回戦といきたい所だがもう2勝している。面倒だからリタイヤしろよシキ。」
「いやだねシンドウ。確かに想定外が起こったが俺は負けないさ。第三回戦を始めるから檀上に上がって貰うぞ。」
シキは広めの檀上を指さし場所を指定する。嫌な予感しかしないな。
◇
俺とケンジはシキの指定する場所に座った。
「第三回戦を行う!今回は選手に話かけてもいいことにするよ。勝敗に関わるようなことにはならないでしょケンジとシンドウなら。対戦内容は、たたいて・かぶって・ジャンケンポン!ルールはじゃんけんに勝ったらハンマーで相手の頭を殴り、負けたらヘルメットを被りハンマーの攻撃を防ぐ。勝敗は100回ハンマーを防げなった方の負けだよ。」
椅子と机があり、机の上にはハンマーとヘルメットがあったからそうだろうとは思った。
「おい、ハンマーは普通ピコピコハンマーを使用するんじゃないか?これどうみても金属でできてるだろ!そして机の横に置いてある大量のヘルメットとハンマーは壊れること前提ってか!」
ヘルメットとハンマーが相当数置いてある。
「そりゃ壊れたは替えを用意するのは当たり前だろ。ピコピコハンマーは切らしていてな、悪く思わんでくれシンドウ。」
やばい俺が勝てる確率がこのバトルほぼ0だ。
「さぁシンドウやろうぜ。できればこんなんじゃなくルールなしの殺し合いが良かったがこれはこれで面白そうだ。」
こいつやる気だ。ケンジは仲間だが遠慮するようなやつではない。本気で殺す気で殴ってくるだろう。
「さぁバトルの開始だ!シンドウのことは忘れないぜ俺はな。」
こいつは本当に勝つ気があるのか?と思っていたが偶然だったようだな。前の2回のバトルはゲーム内容によっては勝てたはずだ。だが違った。それはこのバトルのための布石だったのかもしれん。
「っち!最初はグー。じゃんけんぽん!」
俺はグーでケンジはチョキだ。
俺はハンマーを持つ。ケンジはゆっくりヘルメットを被る。
「なんでシンドウ君は待っているのかな?確かヘルメットを被る前に攻撃できないと勝てないのよね。」
「俺に聞かれても分からんさ。」
痴話喧嘩をやめたのか後ろでミーアと鉢巻は疑問に思っている。そりゃそうだろうがこのゲームはこうしないと負けるのだ。
「いくぞぉぉケンジィィイ!くたばれやぁぁ!!」
俺は全力で振りかぶりケンジの頭を殴りつける。ケンジは数十メートル先までバウンドしながら吹っ飛んでいった。
「硬化魔術でハンマーの高度上げたんだが壊れたか。替えのを貰おう。」
シキ以外が唖然としている。
「....シンドウ君!ケンジさんがぁ!死んでしまったんじゃないのあれ。」
普通そういう反応になるよな。大抵の人間なら木端微塵なんだが....。
「仕方ないから話してやる。このゲームの本質はどちらかが戦闘不能となるまで続く。さっきなんで待っていたかというと全力で攻撃するためだ。ヘルメット装着時だとハンマーから軽く避けヘルメットに掠らせただけで防ぐ扱いになるだろう。装着後ならばハンマーで頭を殴ろうとして相手が避け頭で受けなかったらこちらの1勝となるだろう。要は攻撃されることを100回チキった方が負けなんだよ。」
負けたらヘルメットを被りハンマーの攻撃を防ぐというのは負けたらハンマーの攻撃を必ず受けることが前提だ。
「...いてぇな。そうでなくちゃ面白くないからな。」
話している間にケンジがもう戻って来ていた。
シキ以外が唖然としている。
「最初はグー。じゃんけんぽん!」
俺はチョキでケンジはパーだ。
「くたばりやがれぇええ!!!......またハンマーが壊れたか。」
「シンドウ君何者なの!普通どんな怪力の人でもあんなに吹っ飛ばせないよ!」
「千秋どちらかというとそれに耐えているケンジっていう選手の方が異常とみるべきだ。」
両名の意見がでたなケンジは不死身に近い自己回復能力があるから大丈夫なのだ。もし俺が負けたら死ぬかもしれん。だから負ける前にケンジのスタミナと回復機能を落とさなければいけない。
◇
30分後
「いいかげんくたばれやぁぁあああ!...はぁはぁ。」
8回目だ吹っ飛ばしたのは。じゃんけんは8連勝している。俺の観る目を全開で利用し勝っているがどれくらい持つかは運だ。
「シンドウは酷いやつだな~仲間をここまで殴るとはね。いいかげんリタイヤしなよ。」
シキの野郎が!俺の勝つ可能性が限りなく0に近いことが分かっているな。
「...シンドウ。そろそろ俺の先読みの方が勝つかもしれんな。殴っていいのは、殴られる覚悟のあるやつだけとか昔言ってたな。」
ケンジの未来予知が俺の観る目を越えるか...。負けられないんだよ俺は!限界なぞ越えてやるわ。
シキめ!絶対後悔させてやる!
シンドウさんはどこまで粘れるのか




