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8-3 嘘の王道は異端者を裁く③

シンドウはまた歩みに行く

 片付けから夜が明けて翌日となる。


「シンドウ君。贅沢言って申し訳ないんだけど。お風呂に入りたいです。昨日は疲れたからそのまま寝ちゃったけど汚れた服や身体を綺麗にしたいよ。」


 同感ではあるところだな、俺の魔術で洗濯替わりのことはできるが風呂は難しい。


「鉢巻の部屋に向かうか。あいつの身だしなみを見る分には真っ当な所住んでるだろ。」


「鉢巻の家分かりそうなの?私連絡しようか?」


「大丈夫だ、おそらく分かる。違ってたらミーアに頼むよ。」


 鉢巻に昨日発信機を付けておいた。おそらく何かしらトラブルが起きるだろうと思ってはいたのだ。だから昨日ミーアに頼んで鉢巻を呼び出して貰った。この監獄は広いため、同じフロア又はマップにいないと発信機は作動せんのでタッグマッチの時は付かなかった。


 ◇


「はーちまーきくーん!あーそーぼ〜」


 俺は昨日の時点でこの場所に鉢巻が長居しており今もここにいることから十中八九ここが鉢巻の部屋だと思い訪れた。そしてドアを叩き続ける。


「開かないな。中にはいる筈だ気配がある。」

「シンドウ君ってそういうの分かる人なの?」


 俺の目は気の流れを読み取れる。人がいるないないかくらいなら分かる。


「まぁそんなところだ。俺の声を聞いてシカトか、寝てるかか。普通ここまでドア叩けば起きるはずなのに起きないってことはシカトだな。よくないやつだな。」


「ミーアは不法侵入を許せる派か待ってでも鉢巻な出てくるの待つ派か?」


「うーん。不法侵入は良くないけど。鉢巻だから大丈夫よ。」


 鉢巻が可愛そうになってくるよ。鉢巻にも人権があるんだよ。


「よし開けるぞ。」

「えっ何で鍵持ってるの?」


 俺は鍵で普通入る。説明はいらんかもしれんが昨日の時点で鉢巻の鍵をこっそり確認し複製しておいた。鉢巻よ許せ。


「…おい、外で騒いでると思ったらお前らか。はぁ〜不法侵入って言葉しらないのかよ。」


「お前...似合わねぇ〜なんだその格好は。」


 鉢巻は玄関から見えるキッチンで料理を作っていた。エプロンまで着けている。料理ガチ勢かよ。


「私は久しぶりにチャーハンが食べたいから作ってよ鉢巻!」

「はぁ〜千秋。俺はもう後輩じゃないんだぞ。従う理由はない。」

「そう言いながらも作ってくれるのが鉢巻でしょ?いつもありがとうね。」


 千秋は笑顔のまま鉢巻に語りかける。

 うわ〜。もう完全に尻に敷かれてるんだな鉢巻。


「...はぁ〜。もういい作るよ。。千秋はガーリック系が好きだったよな。待っていろ。」


 なんだろう。凄くいいやつなんじゃないか鉢巻って。


「ありがとう!風呂先に借りていいかな?昨日から入れてなくてね。...鉢巻のシャツ借りてもいい?」


「ごほぉ..ごほぉ...断るわ!着替えがないなら諦めろ!」


 確かに手ぶらで来たな。千秋は貧困から荷物を取ってこれていないのか。俺は空間魔術あるからいいが。


「ほら衣類だ。鉢巻に迷惑をかけるのはやめとけ。追い出されるわけにはいかん。」


 俺は仕方ないので一式揃えて渡してやる。基本的に3着くらいは持っているからな。


「シンドウ君空間魔法も使えるの!すごいね!回復魔術も使えるし魔術師なの?」


 士官学校は魔術を習うとこじゃないからな。珍しいのかもしれん。


「いいや。魔術師なんて大それたもんじゃないな。魔術のみだと下級もいいとこだろうな。ようは勝負の決め手にはならないな。」


 士官学校で学んだ魔術は戦闘に特化したモノばかりだろうから、本当に必要なのはそちらのほうだろう。


「そんなことないと思うけどな~とりあえず貸してくれてありがとう。シンドウ君の服か...ぎゅっ」


「鉢巻さん。本当にいいのか?今ならクーリングオフで返したいとこなんだが。それと俺も服を貸すのは嫌だな。」

「約束は守るものだろシンドウ。諦めろ。...俺は諦めたからな。」


 過去に凄く黒歴史があると後悔で薄い青色と黒色が混ざったような色となる。溢れすぎだろ!


「さぁチャーハン作ってくれるって言うし行きましょシンドウ君!」

「俺はもうツッコまんぞ!風呂なら後からでいいわ。早く行ってこい!」


 不承不承といった感じでミーアは風呂場に向かった。


「なんかすまんな。1週間くらいで下行く予定だから耐えてくれ。そして後悔しないように気持ちくらい伝えてみてはどうだ。結果次第ではお前の望みを俺は叶えたいと思っている。」


「馬鹿なことを言うな。気持ちなんてとうに冷めたさ、だが千秋にはそれなりに恩義を感じているのも事実だ。これはお前が思うような気持ちではないさ。」


 やはり折れてはくれんか、だが恩義はあるかか。


 ◇

 ミーアと俺が風呂から上がり10分


「わーい鉢巻のチャーハン懐かしいわね~。おいしいわよ。いつでも嫁を取れる味ね。監獄から出たら友達紹介してあげるね!」


「はぁ~いらん。千秋に心配されんでも俺は俺の手で掴み取ってやるさ。」

「....鉢巻過去に彼女は何人いたの?なんにん摘み取ってきたの?」


「...千秋は俺をどんな人間と思ってるか詳しく聞く必要があるようだな。彼女は0人だ、それはいいが摘み取ったってなんだこのアマ!仮に彼女ができても悲しませるようなことはしない。」


 ...やんていいやつなんだ。最初はどこにでもいるクソ野郎かと思ったが泣けるじゃねーの。不良がちょっといいことするとギャップを感じるあれだな。


「あははっ。彼女0人って!奥手なんだから~。中身こんな野生児みたいな荒さなのに、どんどん出せばいいんだよ!」


 本当に台無しにするやつだぜミーアはよ。おかしいなミーアを置いて行って鉢巻を連れて行った方が良い結果を生む気がしてならない。


「千秋もいないだろうが!知ってるんだぞ俺はお前の学生時代をな。男女でそういう仲を見るたびに鼻で笑っていた痛いやつがいたなーおい。それが今じゃ色ボケか?」


「過去は過去。今は今。私が欲しいものは必ず手に入れる。誰がもっていようと私のものよ!」


 災厄のジャイアニズムを見た気がする。もういいよ~鉢巻貰ってやれよ。


「そういう風になんでも手に入れなければ仕方ない性格だから貰ってくれる相手がいないだろーがよ。奥ゆかしさを持てよ少しはよ!」


「そんなこと...痛い」


「五月蠅い。ここに痴話喧嘩を見に来たわけではないんだぞ。邪魔したな鉢巻。」


 ミーアの頭をはたき首根っこ掴んで部屋を去る。まだ愚だ愚だ言ってるが知らん。はぁ~先が重いやられるな。



 シキの宣言から5日か過ぎた。


「このマップで調べられることは大体調べたな。暇だ。」

「そういいながらも楽しんでなかったかなシンドウ君?」


 このマップでは些細であるが娯楽がある。シキが用意したものなのだろうな。


「お前ら人ん家をたまり場にするのはやめろ。本当に一週間なんだろうなシンドウ。」

「もうすぐだから待っていろ。俺だって時間を無駄にするのは不本意なんだぞ。いいじゃないか詫びとしてチップやるから。」


 俺は念のためチップをギャンブルやバトルで稼いだ。こちらでもバトルは3日に一度行われるようだ。

 だが絶対数に限りがあるため1000枚集めるだけでも大変だ。この前は初見の相手だったからこそ油断していてくれたところがあるが本来クリスさんが本気でやっていれば勝てたかどうか分からない。


「チップもやりようによれば困らんし俺は貯金はしっかり作る人間だ。金はあればあるほど困らんがそんなことに目が眩む愚か者ではない。」


 鉢巻は本当に主人公っぽいやつだな。王道って感じがしていいな。見習うとしよう。


「お金は大切よ!だけど使うことも考えなければいけないのよ。鉢巻はこつこつ貯めて老後になっても使い道がなく孫にあげちゃうタイプね。だめよ甘やかした孫が将来ぐれること間違いなしよ!」


 千秋は主人公をダメにするタイプだな。意見としては理に適ってるが今はそういうことを考える時じゃないだろ~。


 ....ブぅぅぅ

「..連絡来たな。」


 電話を取る。既にシキの電話番号は端末で調べ確認は取っていた。


「シンドウ~待たせたな。3000枚はあるぞ、明日のバトル後くらいで渡せたら渡してやる。この意味分かるな?以上だ。健闘を祈っとくよ。....プぅぅぅ」


 電話が切れた。やはりタダで3000枚なんて渡してはくれないか。


「シンドウ君、シキさんからの連絡ですか?」

「そうだ。だが3000枚はあるようだけど次のバトルで勝てたらくれるということだろうな。」


 シキのことだ難題を吹っかけてくるかもしれん。おそらくだがバトルの相手が1000枚以上持っていることが予想される。


「明日のバトルに向けミーティングを行う。鉢巻も参加しろ。俺達には下に行ってほしいのだろう。」

「仕方ない、いいだろう。早く行ってくれ、俺は平和な日常を望む。」

「え~。私達いなくなったら寂しくなるんでしょ。鉢巻は素直じゃないんだから。」


 鉢巻の嫌そうな顔を見ながら俺は対策を考える。

 さてどんなバトルとなることやら。


 ◇


 翌日となりアナウンスがあったため会場に訪れる。


「シンドウ来たな。約束通り3000枚はこの場にある。タダより高い物はないって言うだろ。勝ち取ってみてくれ。」


「シキは昔からそうだったな。ついつい忘れそうになるよ。」


 この場には俺、ミーア、鉢巻、ケンジ、シキ、クリス、謎の男が1人だ。


「3000枚だから3人がそれぞれ戦うと思っていたんだがな、まさか相手がお前とはな」


「シキに条件をつけられてしまってな、悪いなシンドウ殺し合いをしようや。」


 シキはどこまでこちらの手の内を暴いているのだろうか。俺の相手はケンジ、ミーアは謎の男、鉢巻はクリスが相手となっていた。


「一つ言っておくが俺もケンジをけしかける予定はなかったからな。このマップで1000枚に届く3人目がまさかケンジになっていたから、面白そうだと思ってな。」


 ケンジのやつ一向に姿見せんと思ったらこの短期間で集めやがったのかよ。


「...シキはやっぱり変わらんな。俺はお前を気に入ってたんだぜ昔も今もよ。だが相入れるのは難しいようだな。」


 ケンジの言う条件が分からん以上俺が勝たないと手に入らない可能性があるし、負けるも下に行かせる実力はないと判断しやがるかもしれん。

 

「俺の相手はクリスとなっているが、俺も勝たないといかんのか空気を読むと。」


 鉢巻の意見ももっともだ。戦わせる気は無かったんだがな。


「すまないが勝ってくれ。鉢巻の平和のためということで一つ頼む。」


「はぁ〜面倒だな。だが戦う以上俺は常に全力を尽くす。それだけだ。」


「シンドウもうバトルのルールでいいかな?分かっていると思うがそちらは全勝をすること。負けたらシンドウには地上からリスタートして貰おうかな。」


 俺が嫌がるポイントを理解してやがるなシキのやつはよ。


「アナウンスもジャッジもおれがやる。質問があればいつでも言ってね〜。最初誰がいい?順番はそちら側が決めていいよ。」


「ミーア頼む。勝ってくれ!相手の実力は同等かそれ以上だが負ける訳にはいかん。」


 ミーアは黙ってうなづく。武者震いかこちらでは初めてだし相手は威圧感が出してるためか強敵オーラ全開だ。


「んじゃこれより ミーアちゃんと棒金のバトルを行うよ。バトル内容は型抜きだ!子供の時よく祭りでやったろ。俺はあれが好きでな〜」


「...シンドウ君型抜きって何?私やったことないんだけど。」


 ...俺は知ってるがやったことないな。まずいな初戦から詰んだかもしれない。


「あの...シキさん。私型抜きなんてやったことないんですがどういうバトルなんですか?」


 棒金というガタイがしっかりした男は問いかけていた。


「なんで!バトル内容これにしたんだよ!どちらも分かってないじゃないか!馬鹿か馬鹿なのかシキよぉ!」


「嘘..だろ。えっマジで。常識を疑うよお前ら。」


 こいつ本当に腹立つな。もうぐっだぐだじゃねーか!






シンドウさんは本当に精神が参りそうである。

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