8-2 嘘の王道は異端者を裁く②
富裕マップの監守は曲者じゃ!
俺は外に出てケンジとミーアも合流しようとすると
「何やってんだよお前らは。」
「聞いてよシンドウ君〜ケンジさん暇だからって襲いかかってくるんだよ。私はシンドウ君にしか抱かれるの許さないから抵抗したけどね。」
ミーアが仰向けに倒れており。ケンジは片手で逆立ちしながら腕立てをしていた。どうせケンジのことだから戦わせたんだろ。
「ミーアさ、そんなに性欲持て余してるからってケンジ相手に挑むのは無茶だぞ。まだ鉢巻さんこのマップにいるから遊んで貰いにいっていいぞ。」
「なんでペットみたいな扱いなのよぉ!!ケンジさんが襲ってきたのは本当よ!」
ケンジはそういう人間なんだよ。もう分かってるだろうに。
「すまんなシンドウ暇だったんだ。でも放置したお前が悪い。性欲が溢れてしまってな襲っちまったよ。何だかんだ言ってミーアは綺麗どころだろ。アカネには負けるがな。」
こいつは性欲の意味が分からず言ってないか?学園生活以来ケンジもなんだかんた言ってアカネのこと気に入ってんだな。
「2人が私を賭けて争っている。...とポジティブに考えたいけど2人の思い人手強そうだね。私もそこそこは美人だと思っていたんだけどな。自信なくしてまうよ。」
「え?ミーアは男が10人見れば10人とも告白してもおかしくないくらい美女だよ。凄く綺麗だ。なぁケンジ。」
「そうだな。俺は恋愛には疎い方だと思うが、間違いなく容姿端麗だ。自信をなくすことはない。」
俺達はミーアを褒めちぎる。実際には貰い手なんて腐るほどいそうな人じゃないかと。ミーアがそういうことを最近になって意識を強めただけで。
「...なんか物凄く恥ずかしいよ。その千秋は綺麗なのに勿体ないよ!とよく友人には言われたんだけどあまり意識はしてなくて...。素直に嬉しいです。..じゃ2人で私を抱いて...痛い!」
小石をミーアのおでこにぶつけて中断させる。せっかくいい話風だったのに台無しだよ。性欲が溢れてるのかなレベルアップの影響で。
「騒がしいやつだなシンドウにケンジ。これを配下にしたのか?」
監守は外に出て来て話かけてきた。
「ったく忘れられたかと思ったぞシキ。お前サボりまくって左遷したのか?地上の監守が嫌な顔してたぞ。」
会えないってのはこんなとこでギャンブルするやつ普通は会いには来ないってところか。
「耳の痛い話だな。俺はかったるいことは嫌いだ。こう皆で馬鹿騒ぎしながら楽しく過ごせればいいのさ。」
こいつ昔はもうちょっと活力があったと思うんだが...いやこんなもんだったか。
「お前が改心して偉くなっていてくれればもっと早く下に降りれたかもしれんのに。」
あの匙源十郎は甘くない。やらなければならないことがあるなら自力でなんとかしろって言うだろうからな。シキが監守長にでもなっていてくれれば楽だったのに。
「シンドウは変わらんな〜お小言が多いぜ。いや変わったかずいぶん浮気性になったことで。」
「シキがケンジと戦いたいってよ。おそらくここには監守がこいつ1人だ。殺しても構わんぞ。」
「ほう、いいぜ。シキとは戦ってみたかったからな。」
シキは血相を変えて怯えている。
「す、すんませんっした!もうマジでシンドウ様リスペクトしてます。勘弁してくだせぇーよ。」
あ、こいつ本当に何も変わってないシキだ。土下座して謝る姿勢にデジャヴを感じるわ。
「んじゃ要求は分かるだろ。下に行きたいんだ。許可を出せ。それか結局聞きたいなかったが条件があんだろ言え。チップ100枚ってところじゃないかと思ってさっき用意した。」
「あまいなシンドウ。100枚だと?足りんな。あまちゃんだぜ!」
こいつ腹立つな。なぜか嫌いになれんが殴りたくなる。
「んじゃ何枚だよ。このマップって俺達ならもう通過していいんじゃないのか?」
チップの枚数を100枚集める頃にはレベル2になってると思ったんだがな。
「確かに実力としては問題ないな。だが100枚では足りん!1000枚だ条件は!」
なんだと...1000枚?そんなに集める意味があるのか?
「1000枚も集める必要がある意味がないと思うんだがな...富裕マップではそんなにチップが溢れてるってことなのか?さっきのギャンブルを見てたが溢れてる様子はなかったぞ。」
先ほどのギャンブルは最初こそ2枚だったが10枚ぐらいで賭けるのがセオリーみたいな様子だった。
「昔はそうだったんだがな。変わったのさ仕様がな。」
「ここで一体なにがあったんだよ。」
そりゃそんな枚数にするわけないだろ。下にいくのにどれだけ奪わなければならないいんだよ。
「それはな、俺が配属される時にここのシステムを誤って変えてしまってな。俺に1000枚譲渡することでカードを渡すことに...がはぁ..。」
俺はシキを蹴りとばした。このやろうが!自分がチップ欲しいがために変えやがったな。
「..痛いじゃあないかシンドウ!...親にも蹴られたことないのに!」
「バレる嘘をつくな。んじゃお前が持ってるチップを寄越せ!あるんだろため込んでる分がよ。」
「ふふ。甘いなシンドウはよぉ~お前はどうせそう答えると思ったよ。だからさっきの勝負俺はわざと負けてチップを使い果たしたのさ。俺から奪おうなんて100年はや...げほぉ..。」
くそが!やはりシキは手強い。俺はこいつほど相手に嫌がらせをさせたら右に出るものがいないと思っている。
無駄な時間を費やされるなぁ~もう!
俺は久しぶりに対策する気が起きないほど無気力感を味わっている。
◇
◇
俺はシキに案内させ部屋を用意させた。
「おいシキどういうことだ。なんでこんな部屋なんだ。」
「すまんな部屋が余ってねぇーのよ」
俺は正直期待していた。地球にいたからこそ広い部屋に憧れを持っていたのだ。
「ここは部屋じゃねーんだよ!部屋とは言わせねーよ!俺かつてないほどキレそうだぞ!俺の期待を返しやがれぇぇぇぇ!!」
俺は膝から崩れ落ちた。ワンルームですらない。ただの倉庫の荷物置き場である。1DKの次は1LDKだろうがよ!リビングが欲しかったよぉぉぉ!!
「シンドウ君元気だして。私だって大きな部屋でシンドウ君と住みたかったよ。私の胸で泣いていいんだよ。」
ミーアは俺の肩を掴み優しくこちらを見つめる。この悔しさを分かってくれるかミーア!俺は初めてミーアに恋愛的感情を覚えたかもしれん。
「...!?ふぇっちょっとシンドウ君苦しいよ~。あ、でもなんか今私凄く幸せかも。」
俺はミーアの胸の谷間に顔をうずめ力を込め抱きしめた。シキのせいで擦り減った心が救われるようだった。すまんユイ、少しだけ、少しだけだから!
「まさかシンドウがそこまで動揺するとは思わなかったよ。10年ぶりくらいだったっけ?もう覚えてないが過去に何があったんだよ。」
「そういえば俺もシンドウがあっちで何があったか聞いたことなかったな。なぜそんなに広い部屋がいいんだ?」
シキとケンジは驚いてる様子だった。約12年地球にいて、約10年は働き続けていた。社畜となったものしか分からん世界があるんだよ。
「お前らのように真っ当に働かんやつには分からんのさ!ミーアすまんが少しだけ我慢してくれ早急になんとかしてやるからな。」
「ううん。私はシンドウ君さえ居てくれればいいんだよ。こんな倉庫でも大丈夫よ。でも望めるなら一緒にいつか2LDKで一緒に暮らしたいな!」
2LDKだと...ミーアお前マジかよ。そこまで望んでいいものなのか2LDKってよ。こんなにも望んでくれるなら叶えてやらんとな。
「俺はミーアの望みを必ず叶えてやる。俺についてこい!」
「はい!シンドウ君!」
俺は逆にミーアの頭を俺の胸元に引いて抱いてやる。俺は約束は必ず守る人間となるんだ。
◇
10分後
俺の気持ちは収まった。
「あまりにも衝撃的すぎて我を失いそうになった。悪かったな。」
「シンドウ何か昔と変わったな。いいってことよ、悪かったよこんなとこにしてよ。俺全く手伝う気なかったけど1000枚集めの三人分かぁ~いいよ手伝ってやんよ。」
シキも変わったな昔はもっと誰がどこでのたれ死のうが容赦なく踏みつけそうなやつだったのに、優しさなんて感情あったんだな。
「シキさんありがとう!シンドウ君と暮らす2LDKのため頑張るよ!」
「...あ、それなしで。2LDKは必ず用意してやるが俺は住まんぞ。ユイと結婚していつかマイホーム買ってやる。」
約束だぁ~知ったことか。約束を守る気はあったがユイを悲しませるような結果になるなら、俺はなんでも破るし、誰がのたれ死のうが容赦しない。
「そんなぁああああ!!うっ~私のこと愛人にしてくれると期待したのに~。」
「3000枚集めるなんて可能なのか?あとミーア悪いが黙っていてくれ。」
「不可能ではないよ。1週間くらいあれば集められるかな。どうする?」
「んじゃ頼むわ。俺は俺でやりたいことがある。久しぶりだが頼んだぞシキ。」
こう見えてシキの任務完遂度は100%だ。失敗したところを見たことがない。おそらくエリア戦でも俺が観えていなかったモノが観えていたのではないかと思う。
「丸投げかい!はぁ~俺はかったるいことは嫌いなんだがな。お前が下にいけばおのずと元の生活に戻れるからいいか。」
◇
シキが去り俺達はこの倉庫でミーティングを行う。
「なんとかチップ集めはシキがなんとかする筈だからら別件のために動く。行動は明日からだ。明日のみシキ以外の監守はいないのか調べる。ケンジは戦闘でチップ稼げそうだったら自由にやっていいぞ。」
「聞き込みや探索よりもそちらの方がいいだろうからな。何か合図でも送ってくれ、この倉庫には戻らん。」
ここで睡眠をとるのと、どこか別の場所でとるのも変わらんからなこれじゃ。
「分かった連絡を取れるようにしておく。」
ケンジが去っていく。
「薄暗い部屋に二人きりなのだけどどうするの?」
「疲れたのか?聞き込みも探索も急を要するものじゃないから休んでいてもいいぞ。」
「それじゃ!ここを片付けて今日は一緒に寝ましょ!」
倉庫の片付けか、ここの物流状況を調べるのもありかもしれない。
「そうだな、1週間近くはここにいるからな片付けは必要だな。」
「では取り掛かりましょう!片付ければ8畳くらいはスペース作れるんじゃないかな。」
間取りを感覚だが測るとそのくらいか、ミーアは整理整頓がしっかりできるタイプなんだろうな。
◇
1時間ほど掛けて片付けを行った。
「ギャンブル用の道具が沢山あったな。本当にシキは何してんだよ。」
「あはは、シキさんはかつての仲間だったって言ってましたよね?なんで袂を分かってしまったんですか?」
スムーズに行って8割くらいは終えてしまった。その間に雑談を行いミーアはこちらのことを聞き続けている。
「あまり他言するようなことじゃないんだがな。....シキは俺達を裏切ったんだよ。今にして思えば俺も冷静じゃなかったかもしれない。」
「シキさん口ではああ言ってても、何というか底が知れない人って感じですよね。」
シキは本人の性格に反して恐ろしく周到で狡猾なやつだ。策略を立てたら俺と同等の物が出てくることが多かった。
「確かに底は知れんな。シキの実力だけは正確に測れた試しがない。自分を隠すことに関していえば世界1なんじゃないかと思わせられる。」
「シンドウ君がそこまで言うなら本当に凄いんだね。シキさんもシンドウ君達みたいに強いの?」
「あまり詮索はするもんじゃないぞ。自分で実力を付けて力を測れるようになれ。」
シキが強いかか、過去のあいつは俺達よりも弱かったが、あいつが1番伸び幅が大きかったと俺は思ってる。今はどうなのか気になるところではあるな。
「シンドウ君達は私よりも数段上すぎていつになることやらって感じだよ!」
雑談を繰り返しながらも片付けを続けて夜が更けるのだった。
片付けはしてもしてもすぐ汚れるんだですよね。




