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8-1 嘘の王道は異端者を裁く①

富裕マップとは一体!

 富裕マップに辿り着いた。


 何もない。そう考えるしかなかった。

 居住エリアはあるが貧困マップのように殺伐としていないし、拷問器具もない。人はいるが刑務作業か自己鍛錬でもしているくらいか。


「富裕マップってなんなんだろうな?千秋知ってるか?」


「貧困から選び抜かれるな勝ち上がった人のみが行けるくらいしか知らないよ?前に鉢巻から聞いた時は、貧困マップみたいに縛られない自由がある。雑魚は這いつくばっていればいいとか言ってたね。」


 次の区画に行く実力がない場合は経験値を自由に積み重ねろってことか。貧困マップは経験値が積み上がってるからこそキッカケの場作りだったのだろう。


「鉢巻って口悪いけど昔からそうだったのか?口ぶりからすると知り合って長いようだが。」


「そんなことなかった筈なんだけどな〜?同じ士官学校にいたんだけど、私の後輩で同じく柔道やっててな。ついついからかいたくなって連れ回してたっけ。ガードが堅い孤高の人って感じだったね。」


 鉢巻さんはその過程で千秋さんのこと好きになったんだろうな。でも恨みも何か買ってたのかあんな態度になったのだろう。あまり人のことを詮索することはよくないな。


「私はもうシンドウ君に一途だから、鉢巻とどうなることもないから安心していいよ!」


 いや千秋さんともどうこうならないから安心して欲しいな。鉢巻さん千秋さんのこと貰ってやれよ。今思えばタイプが違うからこそ息合うんじゃないかな。


「千秋さん美人だから、探そうと思えば他にいるでしょ。諦めな。」


 千秋さんは頬を染め少し身悶えてる。最初は年上に見えてたのに挙動が子供っぽくなり若く見えるな。


「千秋さんっていくつなんだ?女性に年聞くもんじゃないし、他意は全くないんだが。」


「25歳よ。年は離れてるかもしれないけど大人の魅力でリードするよ!」


 予想よりも若いな。30代手前かと思っていた。年下かよ。この世界では高校生の状態に戻っているが、地球では28歳だったからな。


「最初は凛々しいお姉さんっていう感じで30代いかないくらいだと思っていたが若いな。エリア戦はどれくらいやってたんだ?」


「うーん2年とちょっとくらいかな。ここでは1年ちょっとってとこかな。...その興味持ってくれたのかな?」


 もじもじしながら言うな。


「いい加減先に進みたいから話は後にしろシンドウ。面倒だから愛人として貰ってやれ。ユイには殺されるだろうがな。」


「できるかそんなこと!俺は二股するような人間ではない...はずだ。任務上仕方なく今回のようなことがあるくらいだ。」


 うっ過去を振り返ると優柔不断と言われれば否定できない自分がいる。


「監守が前はすぐ来たんだがな。今回はなしか公僕めサボりやがって。監守室行くか。」


「シンドウ君、私は恋人がいいけど。愛して貰えるなら愛人でも..。」


 千秋はほっといて先に進む。


 ◇

 監守室を囚人から聞き出し入ったのだが


「いないな監守。1人も見かけてないぞ。どうなってんだ!」


 富裕マップは監守がいないのか?


「鉢巻の居場所は分かるか?千秋さんには悪いが情報を聞き出すのには手っ取り早い。分からなければ別のやつに聞く。」


「分かりますよ。端末にアドレス入ってるので。」

「んじゃ呼んでくれ。会いたくはないが仕方ない。」


 ◇


 20分後に鉢巻は監守室に入って来た。


「おっやっと来た。やほ〜鉢巻。悪いね呼び出しちゃって。」


「はぁ〜。千秋のことだからどうせ呼び出しに応じなければ探し出されるだろうし。」


 なんか立場逆転してるな。今度は負けたことで鉢巻の方が凹んでるのかな。


「鉢巻来て貰って分かる通り俺たち右も左も分からず右往左往してしまってんだよ。なんで監守がいないんだ。千秋の使用済みパンツでもやるから教えてくれ。」


「シンドウ君!!何を言っているんだい!あげないからね!」


「そんなもんいらん...と言いたいが千秋の羞恥心を煽れるならありか。」


 なんだろう。俺実はこいつと仲良くできる気がして来たぞ。同じ思考と結末を描いたな。


「ダメだから!...でもシンドウ君のためなんだよね。寝間着じゃだめ?私部屋では下着着けない派だから。生っぽくはあるはず!」


「っげほぉ..っげほぉ。」


 鉢巻が顔を赤くしながらむせている。なんで下着がだめで寝間着ならいいのだろう?まぁ感覚は人それぞれか。


「もう鉢巻の反応はいつ見ても面白いな〜好きよそういうところ。欲しいならあげてもいいよ。」


「結構だ。そんなもんいらん。はぁ〜監守がいない理由だったな。富裕マップでも3日に一度バトルはあるんだ。その時になれば来るさ。貧困マップと違って拷問を見張る必要もなければ揉め事もこちらでは起こらないからいらないんだろうよ。」


 理にかなっているな。人件費もタダではないのだ。いらないところに割く必要はない。刑務作業も自己鍛錬も自由なのだろう。


「おそらく聞きたいのはこのマップを出て下に行く方法が知りたいんだろ。」


「話が早くて助かるよ。俺とケンジは下に行くからな。千秋さんは無理だろうから鉢巻にあげるよ。2人で幸せにな。」


「っげほぉ..っげほぉ。おい!恋人同士ではな...はぁ〜嵌められたって訳か。お前いい性格してるな。」


 なんか鉢巻さん苦労人タイプの人って感じがする。やばいな、なんかいいキャラしてる気がする。


「ちょっとシンドウ君!酷いよ〜」


「鉢巻続きを話してくれ。そして千秋さん五月蝿い。」


「下のマップへ行く条件だが..千秋を連れて行きお前が守ると約束するなら話してやるよ。どうする?」


 鉢巻は何を考えてるのだろうかな。はぁ〜


「断る。最悪お前に聞かんでも別のやつから聞けばいいだけだからな。でもなぜそんな提案を出す?」


 鉢巻が千秋のことを好きなのは俺の観る目が捉えている。誤魔化せはしない。


「千秋と一緒に富裕マップに居続けるなんてごめんだからな。連れていってやってくれよシンドウ。」


 ったく。本当に苦労人タイプなんだな。口では悪態をつきながらも千秋さんを気を遣い。好きであるはずなのに側には居たくないと。千秋さんの幸せを願っている。恩人に敬意を表する黄緑色のオーラが見える。


「やれやれ。分からんな。撤回してやるよ。千秋さんは連れて行ってやる。俺の全力を持って守ってやる。だが命の保証はできんからな。」


「それで構わん。俺の平和な監獄生活が続くのは何よりだ。」


 過去に何があったのかは知らん。だが晴れ晴れとした表情を浮かべている。鉢巻もさらに強くなる資質を秘めているかもな。


「さっきから何よ!厄介払い扱い酷いよ〜私の話を聞きなさいぃぃ!」


 ったく鈍い人だな。俺よりも余程千秋をよく見てる人がいるじゃないか。そして王道でありイケてるじゃないかよ。罪作りな咎人だな千秋さんは。罪な千秋でミーアとでも呼ぼうかね。



 俺達は鉢巻に教えて貰った場所を頼りに移動を続け監守を探し出した。


「おいあんた監守じゃないのかよ。」


 確かに人件費を抑えるのは当然だと思うが0人ではないと思ったよ。


「なんだお前らは?見たことない顔だな。邪魔をするんじゃない!今いいところなんだよ。」


 監守の前にいる女性は手を回し周りの囚人と監守を見る。


「もう終わりかい?だらしがないね~。もうちょっと楽しませてくれよ!」


「勘弁してくれよクリス。もうこれ以上出せねぇーよ。すっからかんだ。」

「お前貧困のやつらから20枚くらい稼いだって言ってたじゃないか。もうスカかいだらしねーな。」


 そうこいつらはダイスでギャンブルをしていたのだ。クリスという女性がディーラーを務めている。


「シンドウ君。私達が必死で集めていたチップをギャンブルに使われてるの見るとすごーく腹が立つの。殴っていいかしら。」

「やめとけミーア。厄介事は勘弁だからな。」

「なんでミーアなの?ここ来る前に思ってたんだけどさ。...その渾名で呼んでくれるのは嬉しいんだけどね。」

「出会ったことが奇跡、ミラクルな千秋さん通称ミーアだ。偶然にも会ったことを感謝しないとな~。」


 面倒なので適当に思いついたことを言う。ミーアの不快指数を下げなければ殴りかかってしまうからな。


「ケンジ悪いがこれは俺の領分だ。ミーアを連れて外で待っていてくれ。」

「仕方ないな。行くぞミーア。」


 ケンジはミーアを肩に担ぎ退出する。ミーアは文句を言っているがそんなことは知らない。


「なぁクリスさん俺もギャンブル混ぜてくれよ。監守さんもそれだったら話くらい付き合ってくれよ。」

「はぁ。話が分かるじゃねーか囚人。何枚持ってんだよ。」

「10枚ってところだ。貧困上がりでなまだこれくらいさ。」


 貧困マップの監守は負けたのに受けとれっかと3人分のチップを返してくれたのだ。


「上等じゃない!いいわねこんなに若いのに実力は本物ってわけね。萌えるわね~。」


 クリスさんは恍惚な表情を浮かべる。

 なんか最近年上の女性からの視線が妙に気になるな。


「愚問だろうが、ここではチップを賭けの対象にしていいのか?」

「ダメに決まってるだろうが、監守に見つかったら懲罰確定だよ。まぁ俺は監守なんだがそういう規律とか怠いからな。お前は決められたルールは守る派か、それともルールは壊す派か?」


 とんでもない監守がいたもんだな。仕事しろや!

 ...だがこの人と凄く気が合う気がする。俺は自分が決めたルールは守るが、他人が決めたルールなぞ破る。誰しもルールは決めるがほころび生じるもんだ。絶対なぞありえない。


「俺は自分ためにルールは破るし、間違っていれば壊させる。この世に絶対の秩序なんてものは存在しないからな。」


「お前いくつだよ。...まぁいい。始めるぞクリス!」

「はいよ!ルールは簡単2つのサイコロを私がコップの中に投げてコップを伏せる。中の出目を予測するのさ。奇数か偶数かを伏せる前に言って、伏せた後に6を境に半上か半下を言うか、数字を一つ言い当てるのさ。数字を言い当て勝ったら三倍払いを外した参加者にして貰うってところよ。」


「なるほどな。ベットされた報酬の取り分は3パターン用意されていており。奇数か偶数で当てると取り分は1割、奇数と偶数を外し半上か半下を当てると2割、両方当てると4割ってところか。参加者はクリスも入っているのだろう。」


 おそらく先ほどの会話からするとクリスが一番ギャンブルに強そうだな。高リスク高リターンってとこだろう。楽しませてもらうかな。


「頭の回転は早い子なのね。誤差はあるけど大方そうよ。」


 周りの反応を伺っても嘘ではないようだな。


「さぁ勝負の開始よ。何枚賭ける?」


「2枚だ。手始めにはちょうどいいだろ。」

 賭場にいる計10名いる参加者も同意する。


「開始よ!...どっち!」

「偶数だ。」

 参加者達は周りを伺いながら答える。偶数4名、奇数5名か

 そして伏せられてからまた問が来た。 半上3名、半下4名 数指定3名 俺は半上を先に宣言した。


「偶数の4ね。シンドウ君の取り分は2枚だからプラマイ0ってところね。」


 俺と同じが後1人、半下のみ当たりが2人でチップは3枚、偶数半下が1人でチップ4枚、数当てが1人で26枚それぞれ外した参加者から(クリスさんは等倍)。当たりが5人、全外し5人か。ベッドは20枚、ベッドから出た数は合計16枚。クリスさんは2枚払い、4枚稼いでプラス2枚か。


「さぁお次はどうするシンドウ君?」

「当然やるさ。3枚だ。」


 ◇


 ギャンブルは続き10戦目を迎える。


 俺の持ちチップは残り1枚だ。


「なかなか勝つのは厳しいものだな。みなさんお強いですね。」

「いや、なかなか善戦してると思うぜ。クリスが強すぎんだよ。」


 俺の計算上クリスさんは34枚は稼いでいるのだ。恐ろしく知恵が回るか、運がいいのだろう。場の空気の掴み方といい度胸といい俺は関心すらしている。


「残りも1枚だしラストかな。最後はパッと使うとするか30枚だ!さっきいた仲間の分があるから借りるとするさ。」


「さ、30枚か!こりゃ賭けるね~。監守として降りるわけにはいかんね。チップ足りん奴は俺が貸してやってもいいぞ。」

「「「さすがヤマちゃん!!そこに痺れるが全くあこがれんクズ野郎だ!!やふううう」」」


 最高に盛り上げてやったんだ。乗ってきてもらわんと困るからな。


「..いい賭け具合ねぇ~。ラストよ!偶数か奇数どっち!」


 俺はゲーム流れは把握した。クリスがコップに入れるギリギリまでは宣言タイムだ。そして。


「「「偶数だ!」」」「奇数で」


 偶数8名 奇数1名 俺は偶数だ。


「...!?」

 クリスさんは驚いているな。そしてコップを伏せる。


「さぁどうする!」


「「「12だ!!!」」」「半下で」


 先ほどの8人は俺含め全員が12と宣言する。1人は半下を答えたので真逆だ。


「...えっ。なんで。」


 コップを開けると偶数で12だ。


「「「いやっふうううう!!!!」」」


 クリスは30枚を8人分、監守は90枚を8人分だ。


「さぁお前ら分かってんだろうな。勝たせてやったんだ420枚は寄越せよ。120枚はあるからこれで640枚だ。クリスさんよぉ~そんな絶望しなくても240枚返してやるよ。安心しな。」


「「「ヒュー!!流石!我らがシンドウ! シンドウ! シンドウ!」」」


 俺はチップを受け取り場を去るのだった。

シンドウさん、どうやってこの状況を描いたのか!

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