7-3 嘘は咎人に在り方を示す③
戦いの準備回となります
戦いの鐘を鳴らされ千秋さんを誘い部屋まで案内する
「シンドウ君。私達これから一心同体ね。私は何をしてあげればいいかしら。」
頬を染め千秋さんは近づいてくる。凄まじい誘惑を俺は一心に払いのける。
「そこのベッドに横になってくれ。それだけでいい。」
俺は近づいてくる千秋さんのおでこを手で抑えこみベッドに誘導する。
「...割と大胆な子なのねシンドウ君。優しくしてね。シンドウ君は激しくリードしてきそうだし私の身が持つかしら。」
いいかげんイラついてきたので千秋さんを横抱きにし無理やりベッドに放りなげる。
「俺さ千秋さんに身体調べるからついてこいと言っただけだ。何発情してやがんだ!」
いや俺の言い方が悪いのは分かっている。しっかり千秋さんには強さを測れると話している。
「そんな口実なくてもシンドウ君の好きにしていいのよ。年甲斐もなく年下からの熱い抱擁にお姉さんキュンっと来てしまったわ。ねぇいいでしょう?...あかぁ」
恋する乙女かのような視線を投げかけて来たのでもう気絶させることにした。
さて調べるか。やましいことはせんぞ。俺にはユイがいるからな。
◇
10分後
「...いたぁ!....。ここは。」
太ももを軽くつねり起こした。
「富裕の男いや鉢巻さんだったか、勝負を受けミーティングを行うため俺の部屋に来たんだ。千秋さんの正確な強さを測るため身体をまず調べた。それが現時点だ。」
「...その私最後まで付き合えずいっちゃったのかしら。ごめんなさいまさか気絶して..あたぁ...」
「客さんように用意した部屋があるそこで話を進めるから寝ぼけてないで早くこい。」
千秋さんの方が餌として有効だったが、ケンジの相手の原田さんの方が扱いやすかったかもな。
まぁ調べる対象は当然千秋さんの方がいいに決まってるが...。やめておこう思考を止めるんだ。
俺達は1DKのダイニングの椅子に座らせホワイトボードも用意した。
「千秋さんは士官学校卒のエリア戦参加者ですよね?」
「そうよ。私の水中戦法はそこで培ったものよ。」
士官学校のシステムはよく知らない。だが戦闘技法を中心に戦略を通し学ぶ場だったはずだ。
「学校で柔道でもやっていたんじゃないですか?千秋さんの筋力は柔軟性に優れていた。そして自重トレーニングをかなり積んでいる。自分の体重を意識したトレーニングを積み重ねているからこそ水中戦であんな動きができるんだ。だが水中戦自体を中心的に行っているわけではないので早く動けても直線的な動きが多い。攻撃が読めれば白刃取りくらいできる。ここの連中くらいなら自重の力のアドバンテージで水中戦なんかは勝てるかもしれんが富裕のやつらには通用せん。そんなところだろう。」
「...シンドウ君の話は本当のようね。まるでずっと観てきたかのように的中しているわ。..これは本当の惚れてしまいそうね。」
はぁ~なぜ俺はこんなことをしているかと言うと富裕のやつのゲーム指定がタッグマッチとなったからだ。俺と千秋さん。鉢巻さんと助っ人だ。挑発を真に受ける馬鹿が釣れたと侮っていたが勝負事には冷静だったらしい。勝てる算段があるのだろう。
ここのバトルルールが分かった。
富裕マップ所属は貧困マップ所属からチップを奪う権利がある。賭ける枚数は自由だが貧困マップ所属が6枚以上持っている場合のみだ。日付、チップ枚数やルールは富裕が決める。ルールはフェアかどうかを看守が判断をする。戦い方は両者の同意が必要となるが貧困は極端に不利でない場合は強制である。
選ばれたのはまた水中戦である。そして日付は3日後に行う。おそらく水中戦で千秋さんは負けたことがあるのだろう。
「あと三日あるからな。できれば千秋さんには鉢巻さんを実力で抜いて貰おうと考えている。策はあるからやれ。相手次第では俺はフォローできないかもしれん。」
「シンドウ君なら二人相手にしても勝てるんじゃないの?」
「甘いな。俺は勝負事に対しては最善を持って臨む。あの場で鉢巻さんを勝負に立たせられたのは正直運が良かったと言わざるおえん。もし俺と千秋さんのバトルをいていたら回避するはずだ。鉢巻さんも今日なにかバトルがあり見れなかったのだろう。だがバトルは中継されているのだったら録画をしていてもおかしくない。千秋さんのビキニ姿が見たくて十中八九録画してるだろうと考えている。なら俺の実力を知るはずだ。対策をこの3日で立てるのが普通だろ。」
勝てる自信はある。実力といっても一部しか見せていないからな。だが監守を倒すほどの実力があるとは思われている可能性はある。
「確かに勝負事に関しては冷静にならざるおえないと思うけど、シンドウ君ほど深くは考えていないんじゃないかな~。私は実力を上げられるなら喜んで協力するけど。そこまでお願いしてしまってもいいの?」
「千秋さんのやる気があればやる。やる気がなかったら別の方法もあるからいい。..はぁ~だがこの場で鉢巻さんを越えないと千秋さんずっと今回のように脅され続けるでしょ。理由は知ったことじゃないが折角富裕マップに連れて行ってやろうってのにまた逆戻りなんてされたら目覚めが悪いだろ。」
かつての俺なら利用するだけ利用し捨てていたかもしれんが、協力して貰った以上助けるのは義理だろう。ヤマタケもそうするだろうしな。
「シンドウ君。....年上キラーの才能でもあるのかしら。それとも鈍感な天然さんなのかしら。モテるでしょ?」
「モテたことなぞない。だがたった1人世界で一番愛してる人がいる。両想いだから誰にも邪魔なぞできん安心しろ。」
まさか王道を往くとモテるのか?ヤマタケも告白されたって言ってたな。そんな馬鹿な!人の感情がそんなに簡単にできているわけがない!俺は人に自分を信じさせることはできるが、俺が人を信じることは恐ろしく難しい。自分の命を握られるような物だと考えて生きてきたからな。
「嘘でしょ?むしろ好感以外抱きようがないのだけど。そのバトルの時のような社交性があり、先ほどの勝負の申込のような度胸があり、知恵も回るよね?」
「....?それがモテる要素になるのか?世の中モテるのは顔や性格だと聞くぞ。顔は普通でも性格に難がある俺はモテんと思っていたがな。強いて言うなら後金くらいか。」
俺の考えは合ってるはずだ。多くの人間を観てきたが大半がここに到達している。ユイはこんな性格でも好きだと言ってくれたのだ。
「うーん。間違ってないと思うけどそれが全てではないよ?シンドウ君は難しく考えすぎじゃないかな。」
「そう言われたことはある。...まぁ俺の話はもういいだろう。やるかやらんか早く決断しろ。」
「やりまーす。」
のんきな人だな。調子が削がれるわ。
だがこういう人も嫌いではないと俺は思っている。あのストーカーやろうに勝てるくらいにはしてやるか。
◇
◇
ミーティングを行った翌日
俺は監守に頼み決闘場として人が来ない場所がないか尋ねたところ。第4道場という場所を紹介して貰い貸切にした。2万掛かったが源十郎の金を使ってみたい。小切手が本物であることに驚いた。
「私は何をすればいいのかしら?しかも柔道着も貸して貰っちゃったけどお金はいいの?」
「それは気にしなくていい。この前500万近く貰ったから。」
俺は柔道着のサイズを確認しながら答えた。俺柔道着なんて来たことないからな。技はテレビで見たことあるくらいだ。
「シンドウ君ってお金持ちなの?普通500万を貰うって単語は聞かないんだけど。」
「そうか?過去に最高12億は貰ったことあるぞ?全部使いきってしまったけど。」
手に入れた資金は全部マカベの研究に当ててるからないんだよな〜。この前の帝都移動やケータイのこともあるから文句はない。
「...シンドウ君。私がなんでもするから綺麗なお姉さんがいる店に行っちゃだ...いたぁい」
俺は持っていたタオルを丸め千秋のおでこ目掛けて投げる。
「行ってないわそんなとこ!行ったことすらない!彼女いるって言ってんだろうが!金は寄付したんだよ。今後の世界のために。」
「...そんなシンドウ君。..私が悪かったわ。いつも募金とか寄付とか金持ちが見栄のためにやってるのが現実だと思ってたよ。俺はこれだけ寄付できるぞって偉そうに言ってる感じ。君のように未来の子達のために寄付できる人いたんだ。...避けられた。」
感動しながらハグを仕掛け来たので避けた。今回は見せつける相手も特にいないからな。
「だから俺の話はいいだろう。金のことも心配しなくていい。説明するぞ一回しか言わんからな。」
「分かりました。師匠!」
ツッコミたいところだがいいだろう。この場では俺の命令を聞いて欲しいからな。
「俺は柔道は初めてでな、技はなんとかなくしか知らん。一度千秋が知っている分の技をかけてみてくれは。」
「はい!」
千秋さんが突進してくる。
◇
「...はぁはぁ...」
手技、腰技、足技、捨て身技、固め技、絞め技、関節技..いろいろあるんだな。
「千秋さん柔道って奥深いだな。さまざまな戦闘技法を知っているがいろいろ応用が利きそうだ。」
「...本当に初心者なんだよね..はぁはぁ...投げ技で一回も背中ついてないよね?...どういう身体能力してるの?」
だって背中ついたら負けなんだろ?負けを許容はできんさ。相手の動きを見てどうなるか予想し背中から落ちるのは回避した。
「確かに身体能力に差はあるがこれでも戦闘経験が豊富なんだよ。対処方法は身体が勝手に判断してしまう。だが技払腰だったか、俺にも回避方法が怪しい技はある。背中を落とすことが不可能ではないと思うぞ。」
「本当かな~。ふぅ。柔道技を披露したわけだけどこれで強くなるの?」
「いいや。これは俺がこれから訓練メニューを考えるためただ体験してみたかっただけだ」
「今から考えるの?さっき策はあるって言ってたのはもう訓練メニューがあるものかと思ったよ。」
千秋さんのステータスは分かったがそれがそのまま壁を越えさせる方法に直結するわけではない。少なからず本人の情報がいるのだ。
「千秋さんのことをもっとよく知りたかったんだ。おそらく柔道をさせることが一番本領を発揮するだろうと思ってな。そして訓練メニューを考えたぞ。」
「その言葉選びにシンドウ君は気をつけた方がいいと思うよ。私わりと本気で好きになり始めるよ。...早考えるの!」
頬染めながら何言ってんだよ。まぁいい。千秋さんが壁を越えてくれることを祈ろう。できれば早急にな。
「千秋さん疲れたでしょう。休憩を5分取る。疲労回復用に糖分としてスポーツ飲料と菓子だ。さっさと食べて飲んでくれ。」
「ありがと。なんかトレーナーさんみたいだね。いやコーチかな?よろしくお願いします!」
そんな感謝はいらない。今から地獄を見ることになるのは千秋さんなのだから。
◇
5分後
「シンドウ君さっきのお菓子に何か入れたの?よく分からないけど凄く身体が軽いんだけど。」
「あぁ高濃度に固めたカフェインだコーヒーなんかに入っているやつだ。これは俺が研究させた特注品でな効果は折り紙つきだ。よくスポーツ競技でドーピングは禁止されているがコーヒーは合法と呼ばれている。パフォーマンスは2~3%ほど上がる。俺のはパフォーマンスを30%は引き上げるがな。」
マカベに研究させた成果物の一つだ。
「博識だねシンドウ君は。これならいくらだって訓練しちゃうよ私!」
「それは良かった。満足して貰えてな。一つ問題があるとすればその状況は続けば続くほどパフォーマンスが上がるが、そんな無茶なドーピングは身体が耐え切れず細胞がどんどん死滅していき2日で死に至る。千秋さんが己の壁を越えることができれば耐性ができるができなければ死ぬ。さぁ勝負だ戦闘経験を積み重ねるといい」
「...え。嘘だよね。シンドウ君のことだから治す方法があるんでしょ。」
甘いな。確かに最近の俺は優しいのかもしれん。だが親切であることと、甘やかすことは違う。勝つためならどんな手でも使うの根本的なところは変わらない。
「千秋さん。俺は本気だよ。甘えんじゃんねぇ。最善策を打ち続けるのが俺のやり方だ。使えないやつがいるなら切るのみだ。あいにく千秋さんが死んでも構わないんだよ。死んだら勝負はなくなるかもしれんなら10枚集める他の方法を考えるだけだ。1人で戦うことになれば1人で勝つ方法を考える。千秋さんの代理を頼まれれば俺よりも強いケンジが入れることができ勝ちは確定だ。時間の問題なんだよ結論は変わらん。」
「..え..でもそんな。いきなり言われてもどうすればいいのよ!」
「俺と戦い続け己の壁を越える方法を自分で編み出す。それが訓練メニューだ。急がなければ死ぬぞ。2日といったが最短で10時間で死んだやつがいる。2日は最高でもという意味だからな。」
さて千秋さんの顔色が変わっていく。人間本当に死ぬ気で頑張れば乗り越えられるもんだよ。それでもできないのなら人として生きる意味はないのだ。
シンドウさんの鬼畜はやはり直らない
これでこそシンドウですな。




