1-2 嘘で始まり終わる世界②
これからゲームは過激化する
ヤマタケの回復が済んだ後案内をさせ馬小屋なのか少し大きい犬小屋なのか判断つかないレベルのボロイ建物の中にいる。
「ここがヤマタケの家なのか?人が住む場所じゃないよなここ。」
まず雨漏り、風化、壊れた窓、開きっぱなしのドア...まだまだあるがきりがない。
スラム街のガキですら、もっと環境のいいとこ住んでんじゃないかこれ。
「ちょっとシンドウさん!あたなには気を遣うという単語が頭の辞書から抜けてるんじゃないですかね!」
いやいやユイよ、下手気な優しさは返って劣等感を抱いてるやつに対しては傷つける結果になるもんなんだぞ。見てみろよヤマタケの顔が引きつってるじゃねーか。
「あの..喧嘩はやめてください。よそ者を招き入れたことがばれると僕もそうですが、ユイねぇ達も危ないんですよ。」
そうだな。この村の状況を考えるとこいつは罰を受けるだろうし俺たちに限っては身分すら証明できないよそ者だ。捕まれば良くて牢獄送り、最悪一生奴隷扱いだろうな。
「そんなことは言われんでも分かっている。少なくとも俺とユイはどうとでもできる。危ないのはヤマタケお前だけだ。だから問題ないさ。安心して寛いでていいぜ。」
「ちょっとシンドウさん!あなたには情けをかけるという単語が頭の辞書から抜けてるんじゃないですかね!」
いやいやユイよ、以下略
こいつ同じ返答しかしねぇーな。固定返答するだけの自動式人形サービスかよ。
「..キィ..あんたらもう出てってくれよ!助けてくれた恩があるからこそ下手にでてやってんのに言いたい放題言いやがって。帝国機関に突き出すぞ!」
ヤマタケがキレた。いい表情になったじゃねーか。
そしてこちらの世界でいう帝国機関。警察はまだ存在してたんだな。
「いやいやあんまりにもお前が辛気臭い顔してたもんでな、からかってただけだよ。」
「だからシンドウさんそれは..」
「うるさいもう口を開かなくていい、隅でおとなしくしていろ。話が進まん。」
「横暴な!...いいですよ~だ。私を省いたこと後悔させてやるんだから。」
ユイはジト目をしながら隅で体育座りしながらぶつぶつ言っている。どうせ頼まれても回復させてやらないんだからとでも考えているのだろう。これから始まるショーは回復の必要性はないから問題ない。むしろあったら白けてしまう。
「いいんですかほっといてしまって?僕としては隅にいられるだけでも迷惑なのですが。なにせ人が住むような場所でないほどの狭い小屋なものでね。」
やばいこれはやばい。面白すぎるわ。ユイの背中がさらに小さく見えるぜ。
そしてヤマタケは根に持つタイプなんだな。ねちっこい男はモテないぞ?
「いいんだよあれでな。さて本題といこうじゃないか。」
俺は地球で培った営業スマイルをこの世界でも披露する。この技術はとても有効だ。地球にいて一番の収穫はこれだと思っている。どんな状況でもスマイルを忘れないこと。
「ヤマタケ、お前畑で倒れる前に言ったよな。許さないからな必ず必ず..と。必ずどうするんだ?」
「なんですか唐突にどうでも...」
「はぁ!?どうでもいいとでも言いたいのかよゴミが!だからお前は使い捨てのゴミのようにあの爺様達に捨てられるんだよぉ!」
俺は営業スマイル瞬時に解き意味が分からないのようなアホを見るような表情で挑発をかけていく。
どんな思いでさえ、どんな気持ちでさえどうでもいいものなぞない。全ては自分の一部でありそれが強いほど発散させるべきだ。
「あなたに何がわかるというのですか!この村では..」
「この村では爺さん達クズヤロウに逆らえない。なぜかというとこの村は爺さん達が圧倒的に多く高齢化社会が築かれており数という面でも不利。そして若い大人は少ない。出兵に駆り出されているとかか。そしてお前のようなガキがそこそこいるのは落ちこぼれて落ちてきたのだろう。この村に!帝国機関の命令で!底辺までよぉ!」
「....あなたは何で知ってるんですか。帝国機関そっち側の人間なんですか?」
そんなこと推測に決まってんだろ。まずなんでこんな村でこんな扱いを受けてるのに言語能力に問題ないレベルに至っている。それはしっかり教育機関で学んでいるからだ。そして足蹴にした時は把握したが筋力と持久力は元・々・あったんだ。なぜ今は衰えているのかはかつてこいつはこの村ではない別の場所で真っ当な教育を受け、さらに食事も得られていたのだろう。
まだ全貌は把握できんが、能力によって人の配置が変わるシステムなのだろう。だからできそこないのゴミ置き場がここなのだろう。そして爺さん達に逆らえないのには、逆らったが最後底辺以上の烙印である死が待っているってところか。本当によくできたシステムじゃないか、これ以上ないほどの競争心の煽り方でありこれなら必死に上を目指さなければいけない。
「いいや。全く関係ないぞ。だから安心しろ。さぁ話せ必ずどうしたいんだよ。ためらう必要はねぇぞ!」
俺はどんどん悪魔のように口元を三日月に開いていき挑発しつつ語りかける。流石にこれを営業スマイルで言うのは無理だ。
「いや言わない!あんたが帝国機関の人間でないとなぜ言える。証拠を見せて見ろよ!正直言おう帝国機関の人間が何か企み僕を陥れようとしている線が濃厚だと思ってるよ!」
「!..ククっ..やばい最高だよお前は。傑作だよ。すまんかったな、これは俺が謝るとこだな。滅多にいしないからありがたく思えよ。証拠を見せてやる!少し待ってろ。」
俺は立ち上がり踵を返し小屋から出ていく。ピエロとなるのは一体誰になるんだろうな。
今後の展開を予測しながら愉快な催しを思いついたため実行に移すことにした。
◇
...シンドウが去ってから3時間後
「ふぉご..ふぉご..」
猿ぐつわで口をふさがれ。手足を縛られたジロキチお爺様。いやサンドバックが床に放り投げられる。
「シンドウさん!なにやってんですか!さっきのクズじゃないですか!」
自然と毒吐くなユイは。先ほどの激情を考えれば必然かもしれんがあまりに暴力的すぎるのは俺の好みに合わんから直さねばな。
「ヤマタケこれが証拠だ!これでお前も俺達もこいつに顔を覚えられていまった。共犯者だな。」
「ふざけるな!なんてことしてくれたんだ!なにより、どうやって捕・ま・え・て・き・た・ん・だ・よ・。」
そんなことは簡単さ。あの三人の中で一番金にがめつい上におつむが足りないであろうこいつをまず選ぶ、こいつがおそらく懸念しているのは警備隊の目だろう。確かに厄介であり防犯カメラすらあった。慎重なやつならまず死角には入らんし、危ないと思えば警備隊を呼ぶだろう。だが呼ぶと不利益になるような嘘の商談を持ちかければいい。後は死角に引き入れるだけだ。
まぁ正直考えた中で最も面白くなりそうだったのでこういう結果にしたのだ。だから楽しませて貰おうじゃないか。
「大丈夫だ。この場所に捕えられていることは気づかれていない。それはこの場所まで誰にもバレずに運んでいる時点でお前が一番分かっているだろう。」
「なぜそう思うんですか?俺はあんたの言うとおり落ちこぼれですよ。学の少ないガキです。」
「だってお前この爺さんを過去に捕まえて人質にでもしたことがあるんじゃないか?それかよほど恨まれているかだ。」
これは状況判断であり確たる証拠はない。だがヤマタケの驚愕をあらわにした表情、そしてとある情報筋から手に入れた裏が整合することで確信に変わった。
「納得せんだろうが、説明をしてやるよ。まず俺達が会ったのは村の近辺の畑だ、村に向かっていく最中に一番初めに見たのがこの畑だった。そして村の状況確認のため偵察していた。要はよそもんが村に向かって近づいた畑。一番離れた畑にお前はいたんだよ。次にこのジジィはこう話した「ガキを相手にしてる暇はない」と、確かに「ワシの畑」と言うからには本人が行くのはどおりだろうが3人もいたんだぞ、どうかんがえてもいらんだろ。お前の仕事の確認をするためにはな。だって逆らえないのだから。しかもお前は一人だ。到底一人じゃ4エーカーもの畑があるのに耕せるわけないだろ。」
「結論を言おう。お前はこの爺さんに恨まれるような何かをして、こいつの畑を耕すという名目で罰もといういやがらせを受けていたんだ。そして最後死にかけのお前は確かに反逆心を持った目勝ちを見据えた目で言った必ず必ず..俺なり言い方をすれば仕返ししてやる成功させてやるとな。」
俺はこういう活き活きとした目がたまらなく好きだ。なんたってこれ以上ないと思わせるほどの興奮を味わえるのだから!味わい尽くさなければもったいない。まぁ長くくっちゃべった推論だがこんなものに価値はない。自分の置かれている状況を知られていると思わせられればそれでいい。
「シンドウさんは優しいですね。違いますよ僕は「必ず必ずコロシテヤル」と言うつもりでしたよ。推測通り過去に僕はこのクズを捕まえました。シンドウさんのいうとおり権力だけ振りかざすだけしか能がないクズでしたので捕まえるのは楽でしたよ。計画通りにはいきませんでしたけどね。」
一歩でもミスが出ると総崩れとなるギャンブルであり、掛けでもある当然負けることはあるわな。俺もそうだったからな。
「シンドウさん。証拠は十分です。これを僕にくれるということでいいんですよね?」
「ふぉご...ふぉご...ぐふ」
腹蹴りをヤマタケは食らわせている。だがこれはダメだな。これでは過去の俺の片鱗にすら手が届いてはいまい。憎しみという感情を抑える必要はないが利用するくらいの気概が欲しいところ。
「何いってんだやらんぞ俺が捕まえてきたんだ。...だが条件次第では譲ってやるよ。」
「条件ですか?僕が賭けられるものあるんですか?」
「あぁ条件はゲームに参加することだ。お前が負けたら、俺の部下..いや下僕となってもらう。」
こちらには元々なんのメリットも本来はない。用はただの気まぐれからなのだ多少のリスクだと思って受けて貰わんとな。
「シンドウさん!いきなりなんですかゲームって!それに部下にするのは反対です!」
「あれ?いたのかユイ、あまり会話に混ざってこないからいないかと思ったぞ」
俺が口開くなって言ったんだけどな。さっきのクズを落としてからの反応から静かだったからもしやと思ってたが。
「ユイもしかして口を開くなって命令守ってたのか?いいんだよもうお前を省こうなんてやつはいないんだよ混ざっていいんだよ。ユイちゃん。」
俺はかわいそうな子をあやす親の気分で告げてやる。
「私を構って貰えないかわいそうな子扱いはやめてください!それと最後のもう一回だけ言ってもらっ...」
「いいかげんゲームのお話に移ってもいいですかね!」
ヤマタケがまたキレた。こいつカルシウム不足なんじゃないかな?
「そのゲームは僕が勝てばこのクズの命を、負ければ僕の命をということですか?フェアじゃない気がしますね。こんなのと同列にされたくありませんから断りますよ。」
わかってないな。本来は冷静な思考を持つタイプの人間なんだろうが余裕がなく感情が生き急ぎすぎている。計画はしっかり立てるがアドリブには弱いのだろう。しかし早とちりもいいところだ、命の取り合いなんて無駄なことはしない。
「まぁ待て。部下と言ってもこの村でやって欲しいことがあるんだよ。そして部下に命令する内容もお前が可能な範囲しか言わん。たとえば自爆覚悟でこの村の村長殺めて来いなんて馬鹿なことはさせんよ。」
どいつもこいつも俺が人の命を弄ぶような腐れ外道とでも思っているのかな?いやマジでそんなんじゃないからな。
「負けたら僕に何をさせる気か聞きたいんだけど。」
「それは教えられん。教えられないのはまだ決まってないからだ。このゲームの進行具合によって命令を決めるからな。さぁやるかやらんか早く決めろ。時は金なりというやつだ無駄にしたくはないだろう?」
「ヤマタケ君やめておいた方がいいわよ、あなたじゃ絶対にシンドウさんには敵わないわ。これはあなたのことを思ってのことよ。誰もここで降りたからといってあなたを責めないし。あなたが捕まらないように私が守ってあげるわ。だからねやめておきましょ。」
ユイは最高だなやっぱり。おそらく本心で心配してるだろうし。捕まらないようにできるだろう。だが空気が読めないとこは美徳であるのかもな。
「..キィ..参加するよ。さぁゲームの詳細を教えろ。絶対に勝ってやるからな!」
だよな..女の子それも美少女のユイにあそこまで心配され男が引き下がれるわきゃねーわな。頬を染め歯軋りしながら吠える。本当に気持ち悪いな、全力でつぶしたくなった。
「ユイ制約を発動しろ!参加表明は受理した。」
「はい。これよりシンドウ対ヤマタケ両名の合意の元。制約に元づいた決闘を開始します。ゲームのルールはシンドウさんが決めることとします。」
ユイの魔術の制約が俺とヤマタケにかかる。これで逃げることはできなくなった。
さぁゲームを始めるか。
「なんだよ制約って!僕に何をした。」
「ゲームが終わった後、そんな口約束守るわけないじゃんとか冷めたこと言うつもりはまさかないとは思うが、逃げられたら計画が無駄になるからな。それを守らせる呪いだよ。ちなみに逃げたりしたらどうなるかは試してみるといい。それでも俺は楽しめるからな。」
流石に大人げないとは思っている。今回はする気がないが今の状態は俺が仮に嘘を見抜くゲームしたら。100%勝つのだから。この制約は相手がゲームの対価を払うか認識し参加表明をすることで成立する。こちら側が同じく対価を払うか認識し参加表明を受理すれば成立する。ぶっちゃけ初見殺しだ。
だからあんなにユイが絶対に勝てないと教えてやっていたのにな。
「くそっ!はめやがって。くぅ制約の存在をすっかり忘れていた。」
「まあまあ..相手が俺で良かったな十分勝ち目はあるゲームルールを用意したから安心しろ。」
優しいなぁ俺は、相手が極悪非道であれば奴隷決定だったぞ。しかし制約の存在自体は知っているってことは魔術の認知度はこの12年で飛躍的広まったんだな。
「何が安心しろだ!絶対あんた友達いないだろ!」
おかしいな最近同じことを聞いた気がする。友達くらいいるからね。友達は少ないか。
「ゲームのルール説明すんぞ!ぐだぐだ言ってないで聞けよ。期間は1週間、そちらの勝利条件はそこのクズを殺せばいい。そし.」
「はぁ?なにを言ってるんだよ殺せばいいなんて余裕だろ。」
ったく興奮しやがってそんな生ぬるいことさせるわけないだろ。
ヤマタケは人の話を最後まで聞かないところがあるな。矯正してやらんと。
「最後まで聞きやがれ。殺すのには条件があんだよ。7日目になったら殺してもいい。逆にそれより前に殺したらお前の敗北。そして1時間に一発分以上顔面を殴ることとする。寝る時間7時間を考え、寝る前に7発分先に殴ればよしとする。そしてこの場所を変え別の誰も来ない場所に移りお前と爺さんは四六時中一緒にいてもらう。給仕はユイにやらせるから欲しいものがあれば言え、4時間ごとに食べ物や水、タオルは注文して良い。以上とする。」
さぁこの条件下での殺しをお前はできるかな?ヤマタケ
「シンドウさん。その内容はあんまりにも酷すぎるのではないですか?」
ユイは気づいているだろうなこのゲームの本質をな。まぁ本質は見抜いてるだろうが結論は異なる結果になるんだろうから懸念しなくていいがな。
「なんだよこのルール確かにきついはきついが、食べ物貰える上にこいつを6日分いたぶれるんだろ。誰も来ないってとこお前がバラすんじゃないのか?」
お前は何もわかっちゃいないな、このゲームのつっこみどころはそんなとこじゃない。
「ユイ空間魔術を使えイメージはこの小屋と同じだ。この空間魔術内を行き来できるのはユイと俺だけだ。俺たち以外が入ったら俺の敗北で構わない。そのかわりユイとは会話は禁止だ。空間内で叫べば通じる。必要なものは出現するようにする。それでいいか?」
俺は妥当である提案を出す。まぁヤマタケにとってはさらに追い込まれることになるだろうが。
「わかったそれなら構わない。ゲームを開始してくれ。」
「わかったゲーム開始を宣言する。早めのリタイヤをオススメしてやるがな。」
こうしてシンドウ VS ヤマタケ の決闘は始まった。
シンドウのゲームの開始です。
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