閑話休題
シンドウの学園生活は終わる。
新たな物語の幕は切って落とされる。
ヤマタケが掲示板で確認する前日
「あらら退学か〜。まぁテスト全部サボったからな当然だわな。」
「初めから受ける気がなかったですよね?シンドウさん私が教えないと勉強のべの字もしないんですから。」
テスト結果を掲示板で確認している。
ヤマタケは逃れたようだな。卒業してからのことはお楽しみってことでいいだろ。
「シンドウさんも本音では皆と卒業したかったんじゃないですか?」
「バカ言え。俺は過去に卒業済みだ。2度も高校卒業なぞせんでいい。」
俺とユイは特殊な工程よりこの歳で高校卒業は既にしている。アカシはそれでも高校生活をもう一度味合わせたかったのかもしれんな。
「お2人さんやほ〜白井 寧々と言います。宜しくね〜」
「お前だれだよ。こっちくんな!」
「酷い!あんまりだよ!せっかく提案に乗ってあげたのに〜」
察しはつくだろうがシロネだ。今日俺達と共に退学する。
「いやいや、いきなり友達みたいなノリで話かけられたらな。知り合いくらいだと何コイツと思うだろ。」
「シンドウの身が硬すぎるのを、あたかも私が悪いみたいにいうのは不服だよ!」
提案に乗ってくれたのだから感謝はしている。だがこれはこれ、それはそれだ。
「はいはい。シロネコは猫のようにきゃんきゃん五月蝿いな。赤神理事には伝えてある。エリア2での戦いにいずれ俺も混ざる。先に行って自己研鑽でもしてろ。」
俺が提案したのは2点だ。
一つ目は俺の正体を明かし、特別編成クラスに入る動機の一つ人類をエリアから守る任務に就きたいという意思がある生徒だからこそ卒業せんでも俺が交渉すると約束した。
知も体も優秀だが戦う精神を持つ者のみがエリア戦入る資格が与えられる。ほとんどの生徒が知らないし秘密事項だが特別編成クラスのメンバーは何かしらの方法で情報を掴みこの学校をこの動機でもって受験しているのだ。
二つ目は配下の生徒を必ず卒業させてやることだ。アカネに協力して貰いポイントと手続きをさせた。ボスの退学を持って、ボスは配下を他のボスに移すことができる。それを利用し全員ヤマタケに集中させた。ポイントも頂いた。
「はぁ〜まさか第10競技目前の仮装着替えでいきなり全員にこんな提案してくるんだから私の1年間ちょっとはなんだったのさ。まぁ目的は果たせたから感謝するよ。んじゃね〜」
第10競技目
イベントとして各リーダーに仮装を用意することは知っていた。恒例で入学式でしか同学年のクラスメンバーしか会えず。この体育祭では顔を隠しているが全員が揃うことをカリヒトから聞いていた。カリヒトにもエリア戦に行けるように交渉はしておいた。やつも器はあると俺は判断したからだ。
「他の連中はさっき会ったし、シロネで最後か。とんだ強者達が集まっていたもんだ。アカシの観る目は健在だったな。」
「そうですね。将来有望な子達だと思います。エリア2戦では活躍できるのではないですかね。」
知略、戦略、力それぞれをこの学校で身につけただろうからな。戦いの場で右往左往するようなやつらじゃないだろう。
「あんなやつらが集まって来ているならエリア戦も可能性はある。可能性を見出してくれただけでも俺は感謝しているよ。あいつらに俺達と同じ思いをさせたくはないからな。サポートもいずれしてやるさ。」
今すぐにはできなくとも、俺はあいつらを鍛え上げてやりたいと思ってる。この学校で感化されすぎてしまったかな?
「無粋なことを言いますがヤマタケ君にお別れの言葉は自分でなさった方がいいんじゃないんですか?」
「いらんはあんな不出来なやつにかけてやる言葉なんてないな。」
「本当に素直じゃないですよね。シンドウさんはポーカーフェイスしても私にはバレますよ。」
はぁ〜ヤマタケか。確かにあいつの存在をアピールし象徴になって貰う予定は変わらんが必要以上に肩入れしてしまったな。あいつ含め面白いやつは多かった。
「バカ騒ぎして、一緒に作戦を考え、時には雑談でもして意気投合するよ。俺は時間を考えるばかりで普通に楽しむことを忘れていたのかもしれんな。あいつらと昔出会ってたらダチになれたのかもしれんな。だがやはりだめだ。それでもやるべきことはある。ユイは...いやなんでもない。」
「何があろうともそばにいますよ。シンドウさんが無理しすぎないように見張るのも私の仕事ですよ。」
なんでもないと言っているのに。
「シンドウ君とユイ君のそのやりとりも久しぶりですね。2人とも死んでいなかったことに驚きしかなかったよ。」
「..校長先生。いや副長官久しぶりだな。あんたも死なないもんだな。あんな課題出しやがって、俺を追い出したかったのか?」
12年前の遠征の協力者の1人であり指揮官だった人だ。
「君は問題ばかり起こすからな。正直せいせいするよ。最後のは仕返しかな?せっかく集めた生徒を全員卒業させようなんて甘くなったものだな。」
「あんたの課題出し方のいやらしさに比べれば、全てが甘く感じるだろうよ。最後の見世物として感動のラストを飾ってやったんだ。感謝しろよ。あんたの孫に敗北を味わわせてやったんだからよ。」
「....匙 冬馬か。彼は私を恨んでいるだろうな。エリア1の討伐戦にアカシをバックとして紛れ込ませた。彼のセンスは天才というレベルじゃない。戦闘感ならケンジ君にも引けを取らないと思っている。さらにシンドウ君レベルに策略が回るとも思っている。問題は彼の性格だ孤高故に誰とも組む気がないことだ。戦いにおいてそれは死を意味すると言ってもいい。この学校で学んで欲しかったんだがな。」
孫ではなかったか。あんな逸材が生まれるのだからこの男 匙源十郎の孫と思っていたのだが、養子か何かか。
「正直俺も無理だと思ったよ初見ではな。だが案外冬馬のやつコロっと落ちるかもしれんぞ?」
ヤマタケなら匙を維持でも卒業させようとするだろう。そしてヤマタケの仲間ならきっと協力するはずだ。
「ふん。まぁいい。お前がそう言うなら少しは期待させてもらおうか。これからどうするつもりなんだお前ら。」
「南の島の結婚式で結婚しハネムーンってところかな。俺達幸せになるよ!ご祝儀をくれ!」
「ほらよ。5555555円の小切手と刃物をプレゼントしてやる。ありがたく思え。」
「なんて冷徹なツッコミだ!悪質すぎる!どんだけ縁を切らせたいんだ!」
この男は冗談を言わない。冷徹なドS野郎と言えばこいつのことだと俺はつくづく思う。何せ頭のキレを相手の嫌がることに全力で使ってきやがる!
「お前がつまらんことを言うからだ。言う気がないなら早く失せろ。」
「...はぁ~南のクライム大監獄に行く。俺とケンジを手配してほしい。」
「!?...ハハハッ。命の保証はせんぞ。例えシンドウとケンジだとしてもだ。いいんだな。」
俺は過去の清算をせねばならんだろう。こんなことはする気がなかったんだが、ヤマタケの王道往く姿に俺も少しは近づいてやろうと思ったのだ。
「ああ構わない。会いに行ってやるよ。ユイは今回は外れて貰う悪いが先にエリア2付近の戦闘員のサポートを頼みたい。俺が行かせたのにいきなり死亡でもされたら寝覚めが悪いからな。」
「...シンドウさん。私のことは本当に心配不要なんですよ。それでも行くと言うなら止めません。任されました。」
さて今回は学生なんて甘っちょろい場所じゃない。そして俺も遠慮する必要はない。リミッターであるユイはいない。相手次第では俺はまた血で手を染めることになるかもしれない。
大監獄にシンドウとケンジは乗り込む
待ち受ける者は誰なのか!




