6-3 嘘の決断は邂逅を迎える③
体育祭は終結を迎えようとする
「はぁ..はぁ...今何の競技種目ですか?」
俺とユイは二人三脚を終え校門で待ち構えていた。
「大丈夫だ。まだ二人三脚をやってるところだ。だが時間はあまりない。ユイ癒しを頼む。」
ヤマタケは2時半程で帰って来た。時速で言えば20kmか駅伝選手レベルだな。見たところ二位だろうな。15分前に着いたから、それ以上早く着いてるやつがいたら別だろうが匙くらいなもんじゃないかな。
◇
3分程で疲労を回復させた。
仕方ないのでヤマタケをおぶりながら障害物競走に向かわせる。
「間に合ったな。ひやひやさせやがって。障害物競走も技術は必要になるだろうが、今回は誰も詳細を知らないから勝算はあるはずだ。勝ってこい。」
どんな障害物があるかは知らんが、他の生徒はほとんど知の優秀な選手が入ってる筈だ。体の優秀な選手を前半に使うのがセオリーとなるはずだからな。なら勝てる可能性は高い。それにもし残してるなら第9競技目の武術トーナメントに入れるだろう。
◇
第7競技目が始まった。
「ヤマタケ君は戻って来れたようね。トライアスロンはあの姉妹の1、2フィニッシュを決めたそうよ。鉄球投げ入れも1位を取ったは。何か挑む姿がまさに鬼のような形相を見せてたはね。肩が脱臼しようが、手から血が出ようと投げてたわ。」
アカネから結果報告を聞いてる。順調に進んでるようだな。鉄球投げ入れに関しては5名参加で全員3年生で構成した。後がないという田中の意思が伝わったのだろう。
「そうか。知力テストの詳細が分からん以上は油断できんがペナルティーは勿論退学は回避できそうだな。」
仮に1000点満点のテストで下位20%のボーダーが800点だったとしても200点を競技で取れていれば、601点知力テストで取れてさえいればいい。
それにしてもこの障害物競走はリーボックスパルタンレース並にきついな。もしフルで全部込み込みなら前半戦に入るレベルだ。リーボックスパルタンレースは地球にいた頃アメリカの中継で見た事がある。
◇
第8競技目が始まった。
「うわ〜やりたくねぇ〜。だがやってもらうしかないんだがな!お前ら気張れや!」
目の前には8段の人間ピラミッドが出来上がりかけてる。参加人数の制限がなかったから全員参加させといた。予想はできてたが。
俺は指揮を執り一段ずつ加えていく。
俺の計算では160人(俺とユイは抜き)いるんだからポテンシャル的に13段は作り方次第でいけるはずだ。ユイに回復させたから前半戦から戻って来た組も参加させてる。
「やばい!やばい!肩がぁぁぁああ」
「頑張って男子!応援するから!」
男子には下5段を担当させてる。凄まじく思い筈だ。
その上は下が出来次第女子に登らせ、待機してる女子には応援させてる。女子からの応援を断る男はおるまい。ユイは誰にも触って欲しくないため応戦だけだ。後回復させてる。ルールには回復はだめとは書いてなかったからな!
◇
5分が経ち
見事14段完成した。
せっかくなので1番上にそっとジャンプして乗り先生に判定させOKが出た。
「皆お疲れ様!よく頑張った!くぅ〜俺はお前らを誇りに思うぜ!体育祭終わったら焼肉行くぞぉぉお!勿論俺の奢りだ!任せとけ!」
「「「うォォォォォォオ!!!」」」
俺の過去の貯金が底を尽きるかもしれんがいいだろう!
◇
第9競技目
皆静まり帰っている。抽選の結果が放送されるからである。
1試合ずつ名前を呼ばれ壇上にあがる。
壇上は3つ用意されている。
各組織から5名参加可能だ。
「第1試合..安藤選手対片桐選手!」
安藤か...まぁいいや。他にやらねばならんことがあるので偵察隊にビデオ撮らせてパスだ。
俺とユイは出場していない。流石に相手が可愛そうなのでポイントを欲する物に譲った。皆に反対されたがこればかりはダメだ。
◇
2時間が経った
熱狂は続いており。
「決勝戦! サトウ選手 対 シロウ選手」
やはり匙が残るわな。気にはなるので決勝戦は見る。
「シンドウさんはやはり匙さんが勝つと思いますか?」
「勝負は時の運だ。分からないものさ。ヤマタケはこういう試合をよく観察し学んどけばいいさ。っでお前何負けてんだよ。重し付けて海に放り投げてやろうか?」
「勘弁してくださいよ。3回戦の準々決勝までは行きましたよ。あのシロウさんに負けました。」
二回は勝ったか、相手次第ならまだ勝算はあるからな。
司会者「サトウ選手!ひたすらシロウ選手の猛攻を防いでいくぅぅ!全く無駄のない動き!また勝ってしまうのか!」
匙本人はおそらく嫌われてるだろうからな〜
反感買いまくりながら戦い続けてるんだからな。
司会者「シロウ選手!手の内で雷の剣を生成!しかも周りに100本はあるのではないかという勢いで増えてく。」
なんだあれカッコいいな。多数相手に無双できそうな感じが良い。
司会者「匙選手!ゴム手袋になんだあれは!」
サトウ「絶縁体となるガラスや木で作った棒ですよ?」
司会者「意外と親切なサトウさんだぁぁ!」
煩いな本当にこの司会者。
シロウ「舐めるのも大概にしろサトウ!喰らいやがれ!」
司会者「これは障害レベルAを越えてますよね!ねぇ!何ボルトあるかしりませんが死にますって!」
スタジオがボロボロになると思われたが、全弾匙に飛び込んでくるのを上空に方向を変えさせた。いやいやだからお前何者だよ。
サトウ「もういいですよね。次の種目もありますので終わらせていただきます。」
匙はそういいながら相手の懐に入り掌底を内シロウの頭を揺らめかせる。勝負あったな。
司会者「...決着です!シロウ選手が気絶したためサトウ選手の勝利!!よってトーナメント優勝はサトウさんです。」
匙のあの動きもまたこの学校の生徒が出せるレベルを大きく越えている。いずれ分かる時はくるだろう。
残すは後一種目どんなラストを飾るのか...。
◇
◇
第10競技目が始まろうとしている。
参加者は8名いる。
しかし、いやいやお前ら気持ちは分かるがどうだけ正体隠したいんだよ。
「なんでほぼ全員仮装してスタートラインに立ってんだよ。ヤマタケと匙浮いてんだろうが...。」
なんでも毎年これは恒例らしい。出なくてもいいが、出ないと士気が落ちる。だが正体は隠したい。そしてこの競技ゴールよりも相手の仮装を剥がすことに全力を出すのが通例だそうだ。
「確かに実力は計れるかもしれんが、誰がどいつなのかさっぱりわからんな。男子4名女子4名「」とかバランスも取れていやがるし。」
観る目で見ればというかもしれんが観客席から遠くて無理だ。
「そうですね。これは最後のお祭りみたいなものなのかもしれませんね。最後はリーダー同士ぶつかりあって痛み分けなのかな?」
ユイと2人よく見えそうな席を配下に取らせておいた。
「ヤマタケ君は戦うよりも順位を狙いにいかせた方がとも思いますが、それは無粋というものでしょうか?」
「そうだろうな、ここで戦わないようなら俺が根性を叩き直してやる。むしろこの殺し合いに混ざりたいができんか、教師というのは面倒なものだ。」
「ケンジさん私にいつも業務丸投げで仕事してないじゃないですか!」
楽しく観戦したいのでケンジとアカネの席も用意させといてある。ケンジには組織を鍛えることに、アカネは課題面で世話になってるからなサービスせんとな。
「アカネは頼りになるからな。アカネは俺を支えてくれるのではなかったのか?俺に嫌気がさしたのなら仕事をするが。」
「....もう!ズルいですよその言い方は!ケンジさんのためならやりますよ!たまには私と..その...デートくらいして欲しいです。」
「アカネ先生萌えるぅぅ!!私一生ついていきますよ!」「ケンジ先生ここは男として器量の見せ所でしょ!」「いや〜このお2人さん暑いわ〜シンドウさんとユイさんもそうやけどこれもまたよしだね!」「このちょっと一方通行なのがまたええな〜」
生徒達が騒ぐ。いややはり学生だな。恋バナには目がないのかね〜
「ふっ。ハハッでは誰か1人でも俺に勝てたらアカネにもう一度プロポーズしてもいいだろう。1回は振られてしまったからな。」
「ケンジさん。あれはですね嫌とかでは全くないんですよ。でも気持ちがついていかなかったと言いますか。」
いや〜ケンジもなかなか言うようになったな。これは冗談だな。昔はそんなこと全く言わんかったのに。
「「「その話を詳しく聞かせて下さい!!!」」」
「え、え、ちょっと皆。ケンジさん冗談はやめて下さいよ。...いや冗談じゃなくても構わないんですけど。」
皆がにやにやしてやがる。こいつら最高だなーおい。
◇
ヤマタケ側
「ちょっとヤマタケ君!このイベントって毎年私達が注目されるようなイベントなのよ!あっち側めちゃくちゃ盛り上がってるじゃない!」
「シロネさん。僕に言われても仕方ないですよ。シンドウさん達ですよ」
「シンドウさんといいヤマタケ君といい君達はいつ見ても面白いね。盛り上がろうと勝つのは僕だろうけど。」
匙さんはよく分からない人だ。一見大人しそうに見えるが、やることは大胆不敵。全く隙がない人とはこういう人なのだろうと思う。
「サトウだな。思い上がりもほどほどにしないと痛い目にあうぞ。」
「お久しぶりですね。ウコンさんでよかったですよね。たまには特別編成クラスに来てくださいよ。僕はクラス委員長として寂しさを感じますよ。」
「何が寂しさだ!サトウは誰一人として組まないではないか。しかも俺の配下をこの前も退学させよって!」
「いがみ合いかい?サトウさん久しぶり。顔は見せたことないけどわかるかな?」
「高美さんですよね。フルネームで知ってますが。言いましょうか?」
「...本当に知ってそうだね。怖い怖い。私も配下を退学させられたからな~ウコンさん倒すつもりなら協力するよ。」
「サトウ倒しか、そういうことなら私も組ませて貰おうかな。面白そうだ。私は白石だ。桜歌さんも参加決定な!」
「何を勝手に決めているのだ白石。あなたはいつも独断で突き進むのだから。毎回ひやひやするのは私なんだからな。」
あれ?いつの間にか匙討伐軍が出来上がりかけてるぞ。匙さんの身からでは錆なんだろうけど。
「あのシロネ殿、私は会話に入りそびれた周子というものだ。シロネ殿の指揮はいつも卓越されているので拝見させて貰っている。本日は胸をかして貰いたい。」
「やはり見られていたか、あなたは忍者か何かなのかな?気配が全くないんだから凄腕のストーカーかと思ったよ。いいよかかっておいでサトウさん倒したらね。」
「承知!御心のままに。」
あれれ?全員サトウさん狙いなのかな?これは駆け引きってやつなのか!僕はシンドウさんではない。こういうのは分からないぞ。
「ヤマタケ君。1人倒すのも8人倒すのも僕にとっては蟻を一辺に潰すのと変わらないから。..かかっておいで。」
...!?少しだけ雰囲気が変わった。やはり猫を被ってるということなのか!
司会者「各リーダーさん方々、用意はいいでしょうか!....体育祭ラスト競技を始めます!レディーゴ~」
◇
シンドウ側
「お!始まったな。お前ら!我らがリーダーヤマタケを全力でからかえ!...コホン。じゃなく応援しろやおらぁぁぁあ!!」
「「「うぉぉぉぉおおおお!!!」」」
「ヤマタケ負けたら許さんからな!」「ヤマタケ君私達に勝ったんだから!負けは許さいからね~」「もし負けたらしばくから覚えときや~」「ヤマタケお前に俺達3年は賭けてんだ!もし負けたら一緒に地獄行きお供してやるぞぉぉお!」「小僧!もし負けたらこの俺が鍛え直してやる!殺し合いをしようぜ!」「ケンジさん!殺し合いはだめですってば!えと..ヤマタケ君勝ちなさい!」
いい声援だ!やはりこうでなくちゃな!
ヤマタケ「誰も応援してないですよね!僕に負けは許されないと!そう脅してるようにしか聞こえないよ!」
こいつは戦ってる最中によそ見か、いいご身分だな。
「ヤマタケ!相手全員戦闘不能にしろ!容赦はするな!そして勝ってこい!」
「...!?」
制約が効いたようだな。
さぁ第10競技目結果がどうなるか楽しみだな。
ヤマタケは勝てるのか!
匙さんはまさか勝てる気なの!




