5-3 嘘の英雄は未来の希望に縋る③
戦況は動き出す!
謀反者の取引が片付き打ち合わせのため俺、ユイ、ヤマタケは別教室に移動しす。
「シンドウさん、先ほどの方法を取った理由は分かりました。ポイントも仲間のため使うと決めていたので問題ないです。ですがこんな方法があるなら各リーダーは同じことするのではないんですか?」
確かにこの方法ならこれ以上リスクなくこの課題に取り組むことができるのは事実だ。
「こればかりは仲間云々よりもプライドの問題だろうな。ここで仮に他のリーダーが同じことをしたら、それは自分には配下を守る力はないと言ってるようなものだ。ポイントも仲間も失う可能性だって出てくる。リーダーがその程度であれば配下もついてこないからな。」
だからヤマタケにあの場で決めさせたのだ、プライドを取るか、勝利を取るかと、だが現段階においてプライドなぞいらん。ヤマタケはそういう力で今ここに立っているわけではないからな。もし俺がシロネの幹部であったら結論は大きく変わっていた。
「なるほど。僕はまだ弱いと。このままでは集めるどころか去ってしまうということですね。...それでも僕は今勝ちたい。僕をはるかに上回る人達だと分かっていても戦うと決めたんです。」
ヤマタケが可能性の低さは分かっているが今勝ちたいか。その貪欲な気持ちがあるのなら見えてくるモノもあるだろう。
「ヤマタケが勝ちたいと思うならまず動くしかないわな。期間は2週間だ、1週間は好きにやってみろ。ヤマタケとお前の仲間達に期待するよ。」
「わかりました。できることは全てやるつもりです。では行きます。」
ヤマタケが教室を去る
「さて、ユイはこの戦況どう見る?」
「相手の情報がないので予想にしかなりませんが、先ほどの放送で最悪のパターンは回避できるように作られていたようですね。」
先ほどの競合に関してだろう。自白させ却下する。ヤマタケの組織に所属するまでどこの組織にも入ろうとしないやつらだ。この気に排除しようと考えるボスは訪れると思っていた。さらには前回の課題でこちらの脅威を判断し、シロネの言ったように狙ってくるだろうともな。だが運が良かったのかもしれん組織に入らないようにしてたやつらはおそらく不満分子だ。だからこそ目先の欲に目が眩むことがない連中でもある。
あいつらは特別編成クラスの配下で命令を食らうのが我慢ならんかったのだろう。だがヤマタケは逆だ、各ボス達とは毛色が違うことは戦ったやつは分かっているのだろう。まぁバッグにケンジがいると思わせ、ヤマタケが急成長しているのはこれかと思わせ、自己研鑽を続けている者なら、入るメリットであるキッカケを作ってやれば良いのだ。
今回の課題に退学条件がなければほっといても良かったのだが、あれば必ず退学者がでる最悪のパターンとなっていただろう。相手の性根の問題ではあるが先ほどの放送で分かった。他を蹴落とすためならそこまでするやつがいる。それも複数だ。
「そうだな。最悪のパターンに陥ったらもうヤマタケの信頼は0となるだろう。そうなったら挽回は難しくなっていたな。危ない危ない。」
「でもシンドウさんはあそこでヤマタケ君が逆を言っても何とかしていたのでしょう?でなければ提案をせず命令してたんじゃないんですか。」
ユイの言い分も確かではあるが、それではいつまでも変わらないのだ。命令とは万能である。だがそれを繰り返し続けた先が見えないのだ。この選択が間違っている可能性もある。だが俺は期待を持ち待つこともしようと思っている。
「どうだろうな。相手の力量がまだ分からん以上絶対とは言えない。だから命令じゃなく提案でいいのかと、そう言いたいのだろう。...未知の可能性に賭けたくなったんだよ。ユイ、心配させてすまんな。」
「シンドウさんが不確かな事に賭けることには驚きですね。でもそんなシンドウさんも私は好きですよ。何でも頼ってくださいね。」
ユイは俺にとって毒なのかもしれんな。恋は人を盲目とさせる。見据える先に必ずユイがいる。確かなモノが必ず1つは存在する。賭けにはなるが間違えるわけにはいかんわな。
「俺もユイのこと好きだよ。頼るというなら俺のそばにいてくれ。必ずユイが必要になるこれからもずっと。」
「そこは命令になるんですね。命令なんて不要ですが分かりました。おそばにいますね」
その言葉が聞ければ充分だ。さて決意は固まった。
◇
1週間が経ち
3人の謀反者を見つけ出し。
ヤマタケの組織は35人となった。
「ほう3人か。どうやって集めたんだ?」
まぁわかっていることだが、一応聞く。
「手伝ってくれた仲間がいまして謀反者として怪しい者をピックアップして貰い、ひたすら相手に一対一を挑み続けて根負けした人が3人出ました。」
...まぁ悪い手ではないよなきっと。これがヤマタケなりのやり方となってしまってるな。拳で語れ的なものだろう。
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今回の課題での獲得ポイント
ヤマタケ 50+15でポイント65 3人
サトウ 50(取引)+200(20人)でポイント250
白石 ポイント100 10人
桜歌 ポイント100 10人
シロネ ポイント-100 -10人
周子 ポイント-100 -10人
ウコン ポイント-100 -10人
高美 ポイント-100 -10人
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ヤマタケ以外全て自白でのポイント変動となっている。
匙がどうやったのかは分からんがやはり脅威だ。
脅威というのはポイントがではない。退学者が20人出ている。匙の配下がだ。意図的にやったとしか思えない。そしてメンバーが初期段階で足りないからこそ何かペナルティールールがあり、逆にこの状況を作り出せたということだろう。指定は10人までのはずだからな。
残りは27人ってことか、名前が判明しないやつに10人、白石と桜歌に20人だがヤマタケが3人どこからか奪えたのだろう。そこは後から確かめよう。
さてこの状況をどう読むべきだろうか...
◇
◇
ヤマタケと根負けしたらしい3人(倉科、田中、秋月)を呼び
空き教室でミーティングを開始する。
「おい。そこの三人お前らスパイとして入れとでも言われたのか?倉科から返事と入った理由言ってみろやぁ!」
「ちょっとシンドウさん、疑う気持ちは分かりますが言い方を抑えて!」
「..これより面接を始めます。私達の組織に入った経緯と動機を倉科さんからどうぞ。」
「シンドウさんが折れた!えっ嘘でしょ!だが言い方が変わっても内容は変わらない!」
五月蠅いやつだな。ヤマタケの組織にいる前提なのだから幹部はボスの意向に従うもんだろ。懐かしいな地球で就活したことを思い出す。
「倉科 瑞樹です。赤神貴音さんのファンです。」
「疑ったこと謝罪する。次は田中さんお願いします。」
「えっなんなんすかこれ?..えと田中 真です。ヤマタケに..」
「次!秋月さんお願いします。」
「秋月 桃花と言います。あまりにもヤマタケ君が激しくするので、ちょっと入ってもいいかなって。」
「疑ったことを謝罪する。ヤマタケは後で屋上から紐なしバンジージャンプをして貰う。スパイは田中1人だけか、意外とヤマタケは人を観る目があるらしいな。」
俺は3人から返事を聞き確信させた。後はスパイから相手の情報を得るとするか。
◇
別室にヤマタケと田中を連れてきた。
ユイに先ほどの二人は任せた。
「なんで俺がスパイなんっすか!俺はヤマタケからの誘いを何度も受けたので人となりが分かってコイツならいいかって思ったんすよ!」
「はぁ~面倒だな。お前さカリヒトの組織のもんだろ。まだ獲得ポイントが動いてないからかな、ここから何か動かすから相手の状況を把握したいといったところか。悪いがもう事前に3人のことは調べてある。倉科と秋月は桜歌の組織メンバーだろ。」
俺は何もヤマタケにほっといて遊んでたわけじゃない。敵情を把握しどんな組織なのか調べたのだ。
「ちなみに一つ言っておくが田中よ、俺には嘘は通用せん。状況確認のためお前のプロフィールは今回の課題の質問として使わせて貰った。どうする俺は暴露してやっても構わんし、サトウのように邪魔になるなら退学させてやる。こちら側につくか、カリヒトにつくか選べ!」
これはハッタリも含まれている。だが確信はある。カリヒトの組織は配下の弱みを握るタイプで縛る傾向が強いのだ。これは俺が校内で何人かカリヒトの配下に話かけ聞き出したことだ。
「シンドウと言ったな。それはハッタリだろう。俺のプロフィールも退学も暴露できんし、させることもできない。」
当然そういうだろうな。これで折れてくれた方が楽だったんだがな。
「ポイント200を使いお前のプロフィールを暴く。この意味分かるな?俺達はまだ一年次だ、ポイントなぞこれからいくらでも稼げるから惜しくわない。俺なら前回の課題のように圧倒できる自信があるからな。」
この学校のシステムを調べたところ1万ポイント稼いだ組織は卒業らしい。一月にこのような課題が出され、3か月に一度配下の数の分のポイントが得られる。
仮にひと月の課題で200ポイント、配下を80人従えた場合
200×12月で2400
80人×4で320
2720×3年で8160ポイントだ。
無難に貯めるならシロネをこう考えてるだろうな。
この世界に来てから月の概念が怪しかったが、俺達の転入は5月だったらしい。4月から勧誘は始まっており現在は6月の半ばほどである。課題は月の半ば又は月の初めに1回行う。学校らしいイベント等もありポイントの稼ぎ方も他に存在する。
だからイベント等で得られるポイントも多いのだろう。聞く中で最大だったのは800ポイントだった。
「あんた3年次なんだろ?この作戦がうまくいかなきゃ詰むんじゃないか?こんなスパイに使われるってことは捨て駒になってもいいって考えられてるってことだ。配下はリーダーが卒業しなければ卒業できないんだったな。必死になんでもやらなきゃ退学だよな~」
この学校の配下の卒業条件はボスが卒業しその配下でいることなのだ。3年間いて従うべきボスも見抜けないようなやつ素質なしで退学である。だから所属決めは重要である。4月の勧誘は新入生用であり、誰でもトップの組織に入れるわけではなく選び抜かれた中でしか所属できない仕組みにもなってると聞いた。
「...見抜かれてるってことだな。俺は過去2年努力したが組織の卒業にあやかれなかった。2年支持したリーダーは去年ポイントを集めきれず退学した。リーダーが退学した場合3年生でなければ他のリーダーに支持ができる。受け入れられればの話だがな。なんとか了承が得られたのがカリヒトだった。だが3年でこんな形で拾われることは実質出来損ないの烙印を押されてるようなもんだ。」
結論はそうだろうな。結果が全てだ。できなかったならそれは出来損ないなのと同じである。
「それでも卒業を目指し残っているということはカリヒトに賭けているんだな。現在こちらのポイントは365だ。カリヒトはいくつなんだ?」
「...約7000ポイントと聞く。カリヒトも3年だ。順調にいけば卒業できるはずだ。」
こいつはダメだな。去年の敗北で心が折れてしまっている。それでも卒業がしたいという執念は抱いてるため抗い続けている亡霊だ。
「シンドウさん僕はこの1年で1万ポイントを稼ぐことは可能だと思いますか?」
ヤマタケが食いついてきた。
「お前じゃ卒業すること自体が現段階では無理だと俺は思ってるぞ。1年で1万稼ぐのは無理なのは俺が調べ説明もしたことがあったはずだ。」
俺は調べたことはヤマタケにも教えてやっている戦う上で情報は武器だ生かすか殺すかはヤマタケ次第。
「僕は田中さんも一緒に卒業に加えたいと思っています。シンドウさんのお力添えをお借りしても無理なんですか!」
「お前は今感情論を言っている、田中に同情し過去の自分でも重ね合わせたのか?それは田中への侮辱だとわからんのかこの戯けが!調子に乗るのも大概にしろ。俺はあくまで知恵を貸すだけだ。前回のような行動は取らない。幹部として情報収集や今日のような人を管理することくらいなら手を貸してやる。1年で卒業したいならお前が実力を付け証明してみせろ。」
ヤマタケは立ちすくんで声を出せないでいる。こればっかりは思いあがりだ。正さねばならない。
過剰な期待や過信は身を滅ぼすし、結果を生まない。
「すまないヤマタケ君。君の意志は嬉しかったよ。だが俺も思うよ。この学校はそんな生易しいもんじゃない。スパイと言ってもカリヒトの計画の邪魔になるようだったら教えろってものだ。どちらにせよただの使い捨ての駒だから戻れる機会があれば協力して欲しい。それさえ考えてくれるなら君達の邪魔になるようなことはしないと約束するよ。では僕は退出させて貰うよありがとう。」
田中は去って行った。
「僕はやはり救えないんですか?..くぅ」
ヤマタケは自身の内で葛藤しているのだろう。
「お前のどこに救えるようそがある。この学校で戦い抜ければ卒業は可能性として0ではないと考えてはいる。それが嫌なら努力するしかないんだよ。結果を出すんだ並大抵の努力で辿り着けると思うな。」
「..わかりましたよ。こんな思いをするのは沢山だ!僕は必ず這い上がって見せますよ!」
ヤマタケの闘志が上がっている。闘志は赤色を示す、この輝きが本物になりえるか俺は楽しみである。
闘志は力に変わる!
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