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5-2 嘘の英雄は未来の希望に縋る②

シンドウは新たな道を考え始める。

これはシンドウも成長していく物語

 ケンジとアカネが去った後、教卓をどうしようかと考えていたら。もう直っていた。


「匙は器用だな。本当に粉砕という言葉通り木端微塵だったのに、将来は大工にでもなるのか?」


「いや~僕昔から自分1人でなんでもできないといけない生活してたので、こういう事得意なんですよ。それに次の授業に影響が出てしまいますからね。」


 こいつしか出てないが授業はしっかり行われている。誰もいない教室にぽつんと一人放置してるわけじゃないからね。


「なぁシンドウ。お前ケンジ様とアカネさんと知り合いなのか?」


「なぁシロネ。なんであたかも友達にするかのように話かけてくるんだ?俺シロネのこと恋愛対象として1ミリも見てないからな。勘違いするなよ?」


「もうその流れは飽きたよ。同盟組んだんだ、これくらい大目に見ろよな。」


 シロネは案外冷静に返しきたな。あまり友情とやらを生んでしまうと蹴落とすのに躊躇いを感じてしまうのが人情というものだ。


「仕方ないな。知り合いだよケンジとアカネとは。ヤマタケとユイもそうだ。シロネお前んとこの配下は何人だ。」


「うわぁ。きたねぇーなシンドウ。情報出さなきゃフェアじゃない空気作るのかよ。..84人だな。どう思うよシンドウ。」


 84人か、この学校の規模からすれば妥当なところだな。


「シロネは配下にする人間をしっかり吟味するタイプなんだな。そして考え方としては理に適ってる。誤算は俺達が現れたことか、84人を各リーダーに12人ずつ配置。3人交代で回せば無理なく一日中相手を見張らせられると俺は考えるだろうな。人数は多すぎると把握するのも大変だしな」


「...シンドウやはりお前は危険だね。おそらくこの人数のメリットとデメリットを把握して戦略までもう考えついてしまってるんじゃないのかな。」


 おそらく各ボス達は今回ヤマタケに関しては眼中になかったのだろう。姿も強さも大っぴらにする馬鹿な大将に裂く人員はいないとな。だから油断し足元すくわれるんだよ。警戒がなかったから実にやりやすかった。


「さぁな、次のお前の相手はあくまでヤマタケだ。俺のことばかり見ているとまた足元すくわれるかもしれんぞ?」


「...そこのヤマタケ君には悪いけど、私にとっては敵にすらならない踏み台にしか見えていないよ。見ればわかるもんだよ、場数が圧倒的に少なすぎる。急ごしらえで作った張りぼてだね。それをシンドウが磨くのか?目的も意図も分かり兼ねるね。」


 やはりバレるか。人を観る目があるな、人を従えるのは力だけでは難しい。カリスマ性とでも言うべきか。個性とも言うかもしれない。生まれもって持つそれは確かに存在する。なるべくしてなる人間はいつの世でも現れるものだ。こいつもその一人なのだろうな。


「ククッ。シロネは意外と良いやつなんだな、見直したぜ。ヤマタケがこのまま戦い続けたら潰れてしまうと心配してくれてんだろ。俺達に会ってくれたのも裏返せば各リーダーに次に標的にされるのは、狙われるのはお前らだと伝えてんだろ。特に俺に対しては警告をしている。優しいなシロネは。」


 カリスマ性があり、人を想う気持ちもある。そういうやつは必ず人を良い方向に導くもんだし、運すら引き寄せるものだ。絶対の成功者なぞいない。成功者は成功の80%は運だと答えるやつが多いのだ。だからこそシロネは必ず仲間にしたい。


「...。シンドウ邪魔したな。分かってるならいい。確かに私達は敵だが、誰かが手を伸ばせば私は助ける。見捨てることは楽な選択だが同時に己を落とす結果にも繋がる。お前がヤマタケ君を快楽で挙げていないのならいいだろう。次は全力を持って戦おう。」


 シロネの雰囲気が変わった。やはりただ者ではないのだろうな。厄介な相手を敵に回してしまったかもな。だが久しぶりに良き強敵に出会えたようで嬉しかったぞ。

 シロネは言葉を残し教室から出て行った。


「シンドウさん。すみません僕が何か反論しなければならないと思っていても、シロネさんの覇気にやられたって言うんですかね。言葉が出ませんでした。」


 それは正常な反応だ謝る必要はない。お前が話そうものなら、シロネは喝を入れていただろうからな。


「問題ないさ。だがあれの同等かそれ以上が後7人いる中、お前は戦うことになる。諦めてしまうかい?」


 俺はヤマタケが今感じてる気持ちはよく知っている。己よりはるかに上に立つ者から感じるプレッシャーだ。畏怖とも取れるだろう。だがそこで膝をつく人間は一生這い上がることなぞできん。


「いえ。勝てる自信なんて今はありません。ですが僕の中には底なしの欲望があります。必ず勝って見せたいと!僕は二度と屈したりはしたくない!」


 這い上がれるのは挑戦者かドがつくほどの馬鹿だけだろうな。さて挑戦者となりうるか見せて貰うとしようじゃないか。


「いい返事するじゃないか。人は戦いの中で成長すると言う。常識の壁なぞぶち破ってみせろ。あれだけ舐められてるんだ、吠えずらかかせてやれ!」


「はい!ご指導よろしくお願いします。」


 ククッ結局人頼りかよ。でもこれは世界を救う道に繋がっていると思えてしまう。ここまで肩入れする気はなかったんだがな。若い力に当てられすぎたかな。俺も肉体的には若いが中身オッサンみたいなもんだしな。仕方ないことさ。



 その後2週間は何の前触れもなく時が過ぎ

 朝礼が開かれ課題は言い渡された


 課題:謀反者の探求


 各組織はこちらが指定した配下10名を選び謀反人とする。その謀反人を各リーダーは探し出す。謀反人は捕まり次第組織替えを行なって貰う。期間は本日の13時から、2週間とする。


 ルール


 こちらが指定した10名は整合性を何度でもリーダーは確認できる。


 指定された相手側の配下を1人見つけ出すごとにその組織はポイント5を得る。


 選ばれた配下は組織替えを行いたければ自白することができる。自白を受け成功した組織はポイント10を得る。自白者が出て配下を失った組織はポイント-10となる。


 自白をすることは可能であるが、相手組織に却下された場合は退学となる。


 今回も質問はリーダーに限り3点許す。


 注意


 今後、学校側に接触しゲームを左右するような真似は認められない。




 まぁそうなるか。注意というのは俺と匙に対してだろうな。前回ゲームが言い渡された時点で俺は既に学校側から各組織のフラッグを奪うことにしていた。作戦は成功し奪い、俺の錬成魔術で偽装したフラッグを代わりに置いといた。ヤマタケが勝てる可能性がないと判断し、イベント中に少しずつ配りヤマタケの成長を促す予定だったんだが、憂さ晴らししてしまった。


 匙のフラッグだけは既になかったため奪えなかった。俺よりも先に動き、奪取しておいたのだろう。だから取引でもせんと匙のだけは回収できなかった。


「また厄介な課題だな、これは強者が弱者から毟り取るイベントだな。」


 今回はどこまで介入すべきか。


「シンドウさん、これはヤマタケ君の仲間が下手すれば全員落とされる可能性がありますね。」


 全員ということはユイも気づいているのだろうな。


「やはりヤマタケを1人で動かしていたらまずいだろう。今回は配下との関係性を刺激する課題だ。まだ意識が統一化されてない状況だからこそ大敗北を決して兼ねない。このイベントは前回のイベントを行なっていればこそだろう。しくったかもしれん。」


 前回は組織での協力プレイに対して、今度は個人プレイになる可能性がある。各組織のボス達も当然気づいてるとなると苦戦するだろうな。


 ◇


 ユイと作戦を考えている間にヤマタケが戻って来た。


「シンドウさん。これが指定されたメンバー表です。」


 ヤマタケから受け取ったメンバー表を見る。10人分の名前があるだけで他に記載事項はないか。仕方ないこればかりは。


「ヤマタケこの10人を集めろ特別編成クラスにだ。俺は職員室に行く。」


「職員室にですか?分かりました。」


 ◇


 現在時刻12時50分


 特別編成クラスにアカネとケンジ、匙、選ばれた10人と俺達だ。


「ヤマタケこの課題はかなりハイリスクだ。だから提案してやる。決めるのはお前だ。俺はこの10人が匙に見つけられたことにすることを提言する。匙には取引上了承は得ている。」


「シンドウさん!僕に仲間を捨てろと言うんですか!なぜですか!」


「俺は提言してるだけだ。知恵を貸してやるって言ったからな。なぜかは自分で考えろ。決断もお前次第だ。そこの10人の身は俺が保証してやるから黙っていろよ。」


 悪いが余裕はないからな、少し怒気をはらませる。


「...僕には分からない。なぜだ!」


 ヤマタケは仲間の顔を見た。


「分かっていないのは僕だけなのかもしれませんね。シンドウさんこれは仲間を助けるためなんですね。」


「俺は答えない。譲歩はここまでだと決めたからな。」


 ヤマタケは確信を持ったようだ。まだ分からなくていいお前はここからなのだから。


「分かりました。でも必ず仲間はまた僕の組織に取り戻してみせます。」


 そうだそれでいい。


「承知した。アカネ!確認してくれ、指定されたメンバーは変わってないな!」


「はい。変わっていません。イベント開始からでしか変わることはありません。確認は端末で取りましたから大丈夫ですよ。」


「よし。匙頼んだ。」

「いいですよ。今回の課題も僕にメリットはあるので。10人見つけました。」


 13時になり次第アカネさんは端末に打ち込む。


 放送が鳴り始めた。


「ただ今より課題の謀反者の探求をスタートとします。例によりポイントの変動があったためお知らせします。...変動に関してですが競合が多数起こりました。今回の場合プレイヤー同士のポイント争奪が優先されるためサトウさん獲得ポイント50となります。質問であれば競合に関して教えられます。以上です。」


 放送は鳴り止んだ。


 やはり指定したメンバーを変える方法があるんだな。恐らくポイントを使えばできたのであろう。ここで一手遅れたら致命傷になりかねないからな。


「ヤマタケ、今の状況が分かったか?」


「...そうですね。僕が浅はかでした。ポイントはこういう風に使うことができるんですね。危うく仲間を退学にさせられる可能性すらあったと。リーダーであるのに気づかず申し訳ない。」


 ヤマタケは10名に頭を下げる。


「ヤマタケは猪突猛進すぎるんだよ。最後にはまた取り戻してくれるんだろ。期待しないで待っていてやんよ。」

「そうね。ヤマタケ君にあまり期待できなさそうだけど、面白くはなりそうだから待っていてあげるわよ。」


「言いたい放題言ってくれるね君達は。シンドウさんが集めたのだから。確かに僕には期待できないだろうけど。それでも取り戻すよ。」


 なんだかんだこの2〜3週間で打ち解けてるではないか。


「ヤマタケ茶番ご苦労。匙、取引の続きだ。報酬としてポイント150渡す。この10名選んでくれ謀反者として。俺が見つける。」


「いいですよ。僕には仲間とかいらないんで。報酬の件がなかったら捨てるところでしたよ。」


 アカネさんが打ち込み


 放送が流れる。


「ポイント変動がありました。ヤマタケさんに獲得ポイント50が入りました。以上です。」


 再び放送は鳴り止んだ


 ヤマタケと10人の仲間達は立ち竦むのだった。

ヤマタケくん良かったですね〜

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