1-1 嘘で始まり終わる世界①
2話目作成しました。
1話目が長くなってしまったので反省........。
反省?それって美味しいのってことでまた長くなりましたね。
崩壊した空間より脱出した先は緑生い茂る森林地帯であった。
こんなに空気がうまいと感じるのは都会の喧騒に呑まれた生活を送って来たからだろうか。
はぁ~30歳になった頃には都内に土地と家を買い。行く行くは別荘としてこういう自然あふれる場所でぬくぬく過ごす予定だったんだがな。金融機関が潰れん限りは後20年くらいは貯金は残っているだろうか。
未練はあるがそんなことを言っても仕方なしか。
「ここはどの辺りなんだ女神様よぉ〜」
この俺を追放しやがった世界。
12年経ったことになるな。
死ぬ前に戻ってこれてよかったな。
「誰が女神様ですか!全部乱咲さんが仕組んだことなんですよね!私の12年間を返してくださいよ!」
からかいがてら女神様を立ててやろうとしたら怒らせてしまったようだ。怒った表情も実にかわいい。からかい上手のなんちゃらってやつだな。
「いいじゃねーかよ、ユイはあの頃と姿は同じ綺麗なままだぜ。俺なんてオッサンに…あれ?姿戻ってるな。12年前と同じ?」
神藤結。昔から名前呼びで言い合う中のはずのユイは100年の恋も冷めたかのように苗字で呼んでくる。目の前のユイ自体は相も変わらず美しい。美少女と異世界に落とされるなんてどんな確率になることやら。 あいつらに記憶改変され地球に飛ばされた俺は12年もの月日を過ごした。死ぬ確率の方が高かったことからこうしてユイと再び会えたのは本当に奇跡と言っていいことだ。
「なぜ頭が悪い意味でそんなに回るのにこういう所は抜けてるんですかね…。私達が受けた制約のせいだと言っても覚えてないのですよね?呪と言えばいいのかな?簡単に言うとね。私は優秀でしたから世界の守護役になり、確か乱咲さんは殺しても死にそうにないからもう追放すればいいんじゃね?ってノリで地球へ飛ばされたんでしたかね....確か。」
流石に俺でも殺されたら死ぬぞ。…まぁ今までの行いを考えればそう考えられても仕方ないけどな。過去の記憶なんて曖昧なもんだ大体で覚えているが自信がないな.....。確かと言っている時点でユイも記憶の齟齬や忘却があるようだな。
「呪いはもう解けているようですね。その影響だと思えばいいんじゃないですかね。」
「ヒュー流石!学園トップの秀才だぜ。教え方が俺向け過ぎて愛すら感じるなぁーおい!」
ユイがあたかも「え~分からないんですか~?」とでも言いたげな表情を向けてきた
ユイは決してバカにしてるわけではないのだ!俺ならおそらくこれくらいのヒントで解答に辿りつけるだろうと考えられている。いや~実際は分かりはしたが、絶対に仕返し成分が含まれてやがるな。
「はぁ〜。乱咲さんこれからの行動方針として、また計画を続行するということでいいのでしょうか?」
「乱咲ではない俺の名前はこれからシンドウだ。そしてお前の名前はユイでいいだろう。計画は続行だ。当たり前のことを聞くんじゃない。」
俺の復讐は終わらない必ず達成させる。地球でぬるま湯に浸かってしまっていようと変わらない仲間の仇は必ず取ってやる。そしていつまでも下に観ている愚か者共なぞ種を根絶させてやる。
「名前を変える理由は分かるんですが、なんでシンドウでユイなの?私の名前がフル活用されてるのだけど。」
「えっそんなの決まってんだろ。お前の苗字で呼ばれたいという俺の心の表れだよ。…何言わせやがるんだ。」
ユイは勘違いしているだろうが....うん言わなくていいな。
まぁこんなある意味お世辞のようなことは全く思ってないが....。
単にさっきの仕返しである。よくあるだろ好きな子を虐めたくなるそんな嫌がらせだよ。
「.....へぇ~!本当にいい性格してますよねシンドウさんは。先ほどの仕返しというところでしょ。つくづく惚れ惚れするくらい好きですよそういうところ。」
おお照れているね。俺だったらこんなことを言う会話パターンは予想できているが感情は隠せないようですね。お可愛いこと...。
「あぁ〜ユイのそういう反応を見るのは堪らなく好きだよ。あっ俺別にユイのこと恋愛対象として1パーセントも見てないから勘違いするなよ。」
こんなに和気藹々と話してるが、俺好きな人は別にいるから女神なユイのことはこれっぽっちも惹かれない。異世界に一緒に来ただけでヒロイン顔されても困るからな。
「そんな!シンドウさん!なんでですか!私のこと嫌いになっちゃったんですか。それとも...浮気ですか?.....浮気なんですね。...」
ゴゴゴゴゴゴゴォオオ
とでも鳴りそうな最高のキレ顔をし背後に般若の幻影が見えるかのようだ。
まさかこの12年でスタ〇ド能力にでも目覚め....っとっとと。
いや~こわい!目のハイライトがない!!こわいな~からかい過ぎたかな、マジで殺されそうだ。反省反省。しかもシンドウってとこ律儀だね〜
「いや〜あの堅物のユイが昔の冷酷残酷姫に戻ってしまったのかと思ったんだよ。すまんすまん。確認のためだったんだよ。お前は正真正銘偽りなく俺の知っているユイだということは間違いない。」
かつての仲間の代わり映えのなさに安心しながら。話を有耶無耶にする。地球での暮らしの際は交際関係にまで至ったことは....記憶を覗かれたのが1年分なら大丈夫のはずだ。うむ。
「純情を以て遊ばないと仲間の確認もできないのかしら!」
若干涙を浮かべながら抗議してくる。
ユイを見ながら俺は行動方針を確定させた。
「ユイあの化物はどこに捕まったか、思い出せるか?」
絶対地球でのことは話さないようにも結論づけた。話はそれるがこちらの方が現状重要だ。俺をわざわざ殺しに来てくれた愛すべき恋敵でありいけ好かないあいつはどこにいるのだろうか?
「話を逸らしましたね。はぁ~マカベなら逃走中よ。はぁ〜私が女神だった時失態を犯し地球に逃げられ、そして地球人を殺しこっちの世界にまた逃げられたわ。もしバレてたらその一件だけでも女神を落とされるとこだったのよ..全くもう...。」
ユイのテンションが駄々下がりしている。二回も溜息なんて吐いちゃって幸せが逃げるぞ?
逃げられたのは仕方ないことだと思うがな。12年もの歳月を無為に過ごすわけなぞないと断言できる。マカベができると確証したなら成功率は限りなく100%に近いだろう。
「仕方ないさユイ、お前がバカにしていたあのお調子者よりユイが完全に劣っていただけさ。なぁに次会った時に半殺しにするの手伝ってやるよ。俺がいて良かったな。」
営業スマイルでこの素晴らしい俺もユイも得する提案を出してやる。今こうしてこちらに帰還できたのはマカベのおかげである。しかしそれがイコール殺されることを許すというわけではない。
「シンドウさんそれ慰めてないですからね。本心でそれが慰めになると思ってるところが嫌いなんですよ私。」
こんなにも反逆心を揺さぶられつつ俺と組んで憎き相手と共闘ができる。これほど素晴らしい慰めはないと思うんだがな。こうモ〇ハンで相手を罠に嵌めてフルボッコとか凄く友情が深まると思うんだ。逆にモ〇テツとか友情を破壊するように作られてるようにしか感じない。
「まぁいいわ....その提案には乗るとしてどうやってマカベを捕まえるの?マカベの友人でも家族でも捕まえて人質にでもする?」
よくそんな残酷な方法思いつくな〜これだからユイは好きになれない。昔に比べればマシにはなったと思うんだが...基本暴力でしか物事解決しない短絡的思考をなんとかしてほしい。だが世の中は理不尽でありユイは戦闘力もさることながら優れた知能まで備えており学力はトップクラスだった。天才曰く良い解決法はいくらでも思いつくけど暴力が一番手っ取り早く楽だから選んでいるだけと回答がきた。天はなぜユイに二物を与えたのか本気で苦悩したことを思い出してしまった。
「引くわ〜思考回路ぶっ飛んでんじゃないのか?そんな卑劣なやり方はしないぞ。...そうだな近くの町へ行きマカベの秘密を一つ吹聴する。そしてまた別の町でマカベの秘密を吹聴する。大事なことは秘密の重要性を始めは低くしてから高くする。そうすれば全て言い終える前に自分から出てくるだろ。俺は町を探検できるし、マカベは向こうから会いに来てくれる。一石二鳥だな。」
「...シンドウさんだから友達少ないんですよ。確かに卑劣ではないけど狡猾すぎますよ。はぁ〜否定したくもあるのですが....そちらの作戦の方が実用的ですかね。」
狡猾は言いすぎだと思う。優しい提案をしたと思うのだが?重犯罪レベルの罪被せて俺でなければ形勢逆転不可能な状態にするとかもあったが...今後のことも考え控えよう。
「んじゃ行動方針は決まったな。最初の質問に戻るがユイここはどこなんだ?」
悪いが俺はこの場所の土地勘がないため正確な位置が分からん。こういう時は頼るしかない。地理なぞ必要に駆られた時だけ覚えるだけですぐ頭から抜ける。一夜漬けタイプなのである。
「そうねここは…萩原草原よ。草原の中心地点のやや左寄りでシンドウさんが向いてる方角は南東よ。」
どうやったらそんなことがすぐ分かるんだ?回答を得てもガリ勉のユイだ、そういうことだろう。
頭の中でおおよその現在地と目的地を決める。
「北東側に確か雪見村があったはずだ、まずそこにいき、さらに北に向かい立花村へ向かおう。まだ村が存続していればの話だが。」
この12年でどう代わり映えしたのか分からないからな。ちなみに地球で過ごしてこちらに帰り姿が戻ったのは時間が戻ったのではない。俺という存在がこの世界では17歳であるという概念を受け継いでるからだ。
環境毎に生態系というのは変わるもので、こちらの場合17歳の時点で止まっていたというべきかな。
正直言う全く意味がわからんよ俺も、だから理屈的でないことは嫌いだ。
「そんな廃れた村ではなかったはずだから存続はしてると思うわよ。地球と違って限界集落のような場所はこの世界少ないもの。」
限界集落ねぇ〜まぁガキが田舎出て都会に行きたいって欲はどの世界でもあるもんだと思うが、こちらは少ないんだな。俺は既に都会っ子ってのに洗練されちまったから無理だな。
そのまま30分程情報交換をしながら歩いていると目的地にたどり着いた。
「おいユイこの世界は限界集落は少ないって言ったよな。結果がこれか。」
俺は相変わらずのこの欺瞞だらけの世界に嫌気が指した。
◇
俺が見ているのは本当に村と言えるのか?
そうだとしたら地球はやはり平和であったと言えるだろう。
俺達は人の気配がした場所に移動し村の畑を踏まないように避けながら近づく。
偵察も兼ねて一応念のため身を隠している。
「確かに限界集落は少ないのかもしれん。なんせ限界集落とは若いやつもろくにおらんし人が少なく老人が多い高齢化社会ってやつだ。だがこれは違うよな。」
「ええ…そうね。老人は多いけれど。老人が支配している村を限界集落と定義するのはどうかしらね。」
そう俺達が見ているのは若いやつら、ガキが奴隷のようにこき使われ、強いては一般の人間より戦闘力が強いはずのゴブリンまでもが奴隷扱いだ。俺の常識では老人が勝てる確率は低いはずだ。
「こりゃガキィ!サボるでないわい!今晩も飯抜きにされたいかのかい!」
「…すみませんハウロお婆様、そしてジロキチお爺様、ロウチお爺様。精一杯奉仕させて頂きます。どうかお恵みを与えて下さい。」
「はん!薄汚ないガキが飯だけは一丁前に欲しがりよって。4エーカー耕せたら考えてやる。頑張るのじゃぞぉ」
「そりゃええの〜それだけ耕せばワシの畑も安泰じゃ!そしたらあまりものくらいは分けてやるぞい!」
そういいながらガキはこうべを垂れる。それを足蹴にするジロキチお爺様。
なかなか皺の濃い顔に目つきをギラギラさせた爺さん共だな。
こんなだだっ広い畑じゃサボってもバレなさそうだが進捗率は目に見えてしまうから1人でやってるならごまかせないな。
「そんなぁ許して下さい!…無理だよ。うぅ…。」
「まーた泣きべそかいておる!こりゃ今晩も飯抜きじゃな。最近のガキはほんと気合いが足らんのう。ゆくぞこんなガキを相手にしてる暇はないからのう」
そして爺さん達は飽きたのか足蹴りをやめ去っていく。
もはや日本なら児童虐待で裁判ものだな。
この世界でも警察のような組織はあるはずなのだが機能していないようだな。
「許せませんねあのお爺さん達。あんなやせ細ってる子供に!殺してきますね。」
ユイが突っ走ろうとするところに足を引っ掛け転ばせる。
顔面から落ちたな痛そうである南無南無。
「何するんですかシンドウさん!鉄拳制裁じゃ生温いでしょ!この所業!」
ユイは怒りの激情を向上させ今にも再度突貫をしようかという勢いである。
確かに胸糞悪いわな、俺も許せないと思ってるさ。しかし…
「バカか…。確かに許せねぇはなぁ〜あんなガキ助ける価値すらねぇよ。」
誰かに恵みを、誰かにこうべを垂れないと明日のこともどうにもできないやつなぞゴミ同然だ。自分の身を守れるのは自分だ。最後に何かを覆せるのはそういう強さの先にあると思っている。
「シンドウさん。言っていいことと悪いことがありますよ。分かってますか。今私は殺意を抱いていますからね。たとえ乱咲さんであっても…」
「...⁉︎」
ユイの激情が冷め目に極寒を思わせる冷ややかな視線を向けてくる。
今にも俺とユイの決戦が始まるゴングが鳴らされそうな時に音が聞こえた小さくはあったが確かに。
こりゃ思ったほどゴミではなかったか。
「あのクソジジイィ!いい気になりやがって!許さないからな必ず必ず……。」
ガキは空腹か疲労か分からないが力尽きたように倒れた。
最後に最高の俺好みの反逆の狼煙を上げて。
「ククッおいユイ!撤回してやんよ、さっきのゴミ発言はよ。ゴミではないこれからは俺の配下にしてやるよ!」
これは面白いことになって来たな。さぁて久しぶりに俺に闘志を抱かせたんだ。ただでは死なせんぞ。償って貰おうか。ジャイアントキリングを次に起こすのは貴様の番であることを俺は勝手ながら決めた。
「ユイ!そのガキを介護してやれ。死なすことは許さん!お前の得意分野だろ。」
「はいわかりました!っふふ。やはりなんだかんだ言っても助けるんですね。シンドウさんは。」
「無駄口を叩く暇があればさっさと治せ!ユイの癒しで。」
そうこの世界が地球より文明レベルが高いと言ったのはこの魔術を開発してしまっている点にもある。
魔術があるから逆に文明レベルは下がるのではないかと俺はこの村に来る途中思ったが、それは全く違うと結論づけた。
なぜなら
人間が魔術を身につけたのは。多種族に打ち勝つためだからだ。戦争はいつの世も技術を発展させる!この世界も例外ではない。地球は人と人とが争い終着点として平和条約を締結した。人と人が争っているレベルはとうに終わっているんだよ。人とは強さの次元の異なる他種族と均衡を保てるくらいこの世界は発展させてしまっているのだから。そりゃ〜娯楽なんて流暢に楽しむ余裕なんてないさ隣の国にゴブリン住んでるようなもんだからな。
「…ぅう。女神さま?死んだのかな僕は…ゴホォ。はぁはぁ…」
「何能書き垂れてやがんだガキがよぉ。そう簡単に人が死んでたまるか。なによりユイの膝は俺のもんだ。勝手に膝枕されてんじゃねーよ。」
ユイが癒しの力を行使するために膝枕させてやり頭部から順に治していく。
虚ろな目をしながら口説き文句でも言おうとしているように勝手に判断し一方的に八つ当たりした。
「怒るとこそこなんですか⁉︎シンドウさん乱暴はやめて下さい。膝枕なら私いつでもして…」
「意識がハッキリしたならまず名前からだ。さっさと言え!」
「ちょっと!さっきから私の扱い雑すぎませんか!話も最後まで聞いてくださいよ!!」
うるさいやつだ。細かいことを気にしていると小皺が増えるぞ?
「はい僕の名前は山形掛と言います。…ええと僕のことより綺麗な姉ちゃんの話を聞いてあげてぐはぁっ…はぁはぁ。…ぐぁっやめてくださいぃ〜」
俺は再度腹に蹴りを入れつつ今回はさらに足蹴に扱う。やはり理不尽にこき使われるだけあって筋力と持久力がありそうだ。しかし栄養をとっていないため発揮できていないってところか。
ちなみに性懲りもなくまた口説こうとしたと確信を持ったので八つ当たりレベルを上げた。
タタタタッタッタッタッタ~某RPGゲームのフ〇ンファーレが頭を過る。
「私、こんな子供にまで気を遣われるなんて……。だから乱暴はやめてくださいよぉシンドウさぁぁん!」
ユイが子供にまで気を遣われるかわいそうな子扱いに悲痛な叫びがこだまする。
全くやかましいやつだな。
「おいガキ。ユイをナンパしていいのは俺だけだ。こいつのことはユイ、ユイねぇ、行き遅れねぇーさん。のどれかで呼べ。それ以外を言ったら畑に埋める。肥料になって爺さん達は大喜びだろうがな。」
おぉ少年の目つきが怒りによって変わったな。相当な怒りを溜めてるに違いない。
「いい目つきになった……あれ空が見え…ぐふぅ…後頭部が痛いな。ユイなにするんだ。ジャーマンスープレックスなんて技どこで覚えたんだよ。」
ユイよ....。
男としてやせ我慢しているが割れそうに痛いぞ!
そして女の子が出していい技じゃないよな。地球の変な影響受けやがって。
「だ・れ・が!行き遅れですってぇ〜私はまだ16歳ですが何か!」
「いやいや、俺達12年本来取ってるわけじゃないか。確か来月誕生日だよな。29歳か、やったなあと少しでアラサー確定!…やめろやめろ逆エビ固めはやめろ。そしてパンツ覗いたガキ、お前は殺す。」
「ユイねぇ僕は覗いてなんて…ぐへぇ」
ユイは目をサイボーグのように光らせラリアットをガキに食らわす。これは死んだかな?いや泡吹いてるだけかしぶといガキだな。
服装に関してだが追放される直前の恰好である12年前来ていた制服を着ている。昔通っていた高校の制服をモチーフにし黒と赤を基調とした物だ。規定で女性はスカートの丈を膝より上としたため大胆な動きをすると下着が見える。眼福でいいのだが他のやつが見たら容赦はしない。それがシンドウである。
「あわわ、ごめんね掛くん。しっかりして〜」
ユイ若干涙目になりながら少年の肩を揺らす。
さてこいつの名前はどうするか?名前呼びなぞ断じて認めん。
「いいや違うぞユイ。こいつの名前はヤマタケだ。そう呼ぶようにしろ。」
俺はフルネームで覚えるのは嫌いなんだ。無駄に長いし覚えづらいからな。
親しさというのは渾名呼びがよい。距離感をぐっと近づけることができる。
中間管理職のどこかのお偉いさんトネ〇ワは全員覚えるらしいが俺には無理だ。
「なぜヤマタケなんですか?名前から取ったんですか?」
「まぁ半分はそうだ。だがもう半分はヤマトタケルになれるかどうか試す意味でもある。」
こいつが本当に反逆者となれる器ならばの話だがな。
いきなり異世界に来て偶然会った少年に何を期待しているのだろうと正直思う。
でも俺は偶然は必然へと変化することを身を持って知っている。
だからこの縁とこの状況に運命を求め期待しヤマタケにしてやろうと思ったのだ。
「?まぁシンドウさんのことだからまたろくでもない結末になるんでしょうから今更ですね。」
失敬だなこいつは、俺はいつだって真剣にこの世界のために動いているというのに。
全人類を救おうなんて大層なことを考えていたわけではないのだが、俺の目的と救うことがイコールで結び付くためやり抜いて見せるさ。
「まぁ見てろよ。最高のショーを見せてやるからよ。」
誤字修正リメイクしました。