4-1 嘘は蠱毒より選ばれし者に告げる①
新章突入です。
さあ他種族との対決前の狼煙が上げられようとしている
帝都に着き一か月が経つ
また適当に宿をとり居座っている。
この場にはユイ、マカベ、ケンジ、ヤマタケ、ミッシー、赤神がいる。
「俺を含め7人か、内事実上戦力となりえるのが4人、俺、ユイ、マカベ、ケンジだ。赤神はもう一度聞くがこちらに与するということでいいのか?部下になって貰うことになるが。」
「はい!お願いします。祖父には私の貫く道に行けばよいと返事を頂きました。なのでご心配は不要です。」
赤神さんは何のためらいもなくそう答える。
「分かった。今日からアカネさんと呼ぶことにする。俺が決めた絶対のルールだ!了承して欲し...」
「渾名を貰えた。嬉しいわ!人生で初めてだわ!私のこと呼び捨てにしてくれた人もそうそういないのに。私は何を対価にすればいいでしょうか!命に代えても命令は遵守しますよ!」
「..渾名くらいで重いわ!このコミュ障が命を賭けることがいずれあるかもしれんが、自分の命を最優先にしろ!勝手に死んでみろ俺は許さんからな!部下でも配下でも死ぬことは許さん!家族だと思え見捨てることも許さんからな!」
そうかつての仲間も部下も配下も死ぬことは許してないぞ。勝手に死にやがって。敵は必ず取ってやる。
「ケンジさん私はもう感無量よ、今日が命日だとしてもきっと私後悔な..痛いですよ」
「話が進まん!落ち着け貴音。いやアカネ。」
ケンジがアカネの頭をはたいた。
「..ぐすん..ケンジさんまで...いえ了承しました。ごめんなさい。」
「ではこれからの行動方針を伝えるぞ。現状戦闘員として数えられるのが俺、ユイ、マカベ、ケンジの4人、非戦闘員としてヤマタケ、ミッシー、アカネである。これでは全く戦力が足らん。だから、戦力を確保する必要がある。ここまでで質問は。」
「はい!あの私やお兄ちゃんはわかりますがアカネさんが非戦闘員なのはなぜでしょう。私は生でアカネさんが強いかは確認したことありませんが、噂どおりなら凄く強いと思うのですが。」
ミッシーが疑問に思うことも当然かと問われれば当然か。
「答えよう。アカネは理解できているなその反応なら。ミッシーやヤマタケはあまり外の世界で戦う経験が今までなかったから分からなくて当然だ。だが俺とケンジがこの前巨大な闇組織を2人で半壊させた話をしたことは覚えているな。」
「はい。そのシンドウさんはいつも自分のことを強くはないみたいに言うので、驚きました。やっぱりかなり強いんじゃないですか!」
自分の力は本来見せびらかすものじゃない。どこでどんな風に伝わってしまうか、分かったもんじゃないからな。
「ミッシーそうは言うが、相手は10万を超えるであろう組織だぞ。いくらなんでもおかしいと思わないか?」
「それはおかしいですよ!人間離れしすぎていますよ。...まさか人間じゃないんですか!」
はぁ~やっぱりそんな反応になるよな。だから能力は伏せておくもんだ。溝を生む危険性をはらんでしまう。
「馬鹿が、人間だよ。なにも改造されたわけでも、自己鍛錬でここまで辿りついたわけじゃない。原因は圧倒的な戦闘経験によるものだ。しかも人間をはるかに凌ぐ上位種との。」
「この前、遠征に行ったと話していたのと関係があるんですね。」
ミッシーの飲み込みの早さ助かる。納得はしきってないけどヤマタケの反応もある程度把握できているのだろう。
「そうだ。俺達は遠征で戦闘経験を経て力を上げた。人間が自力では辿り着かない高みにだ。だからアカネが近隣のエリアで小競り合いを繰り返していても俺達には圧倒的に及ばないんだよ。」
この概念は地球で言う経験値ってやつなんだろうな。戦うほど人間の質が上がる。俺はそれを観る目の本来の力で把握することができる。
「わかりました。回答ありがとうございます。納得しきることはできませんが結果がそうなので受け入れます。」
「質問は他にはないか....。ないな。戦力確保としては帝国機関を動かし集める。帝国機関には配下が少しはまだ在籍していることがケンジの情報で分かったからな。...質問がありそうな顔してるなヤマタケよぉ」
俺は表情が渋くなったヤマタケに話を振ってみることにした。
「シンドウさんは前に帝国機関側の人間じゃないって言ってましたよね?嘘だったんですか。」
「そういうと思ったぜ。だが俺は嘘は言っていない。関わってはいるが俺は帝国機関に在籍していたことはないからな。だがシステムを考案して変革を起こしたのは俺だ。本来なら落ちこぼれはエリアから遠くの村に逃がし生活して貰うつもりだったんだが、悪質に利用しやがったやつがいるようだな。まぁそれでも俺の責任があるのも事実なんで救ったんだよ。」
「...ふぅ..怒りはありますが僕に責める権利はありません。落ちこぼれたのは事実です。でも、じゃあなぜ僕たちを連れて来たんですか?あなたのシステムなら優秀な人がべつの場所に集結しているんじゃないです?」
「そうだな。確かにヤマタケとミッシーを連れてくる意味はないだろうな。俺は少なくともミッシーは連れてくるつもりはなかったよ。ユイが頼むから仕方なくだ。だが俺は今良い拾い物をしたなとは思っている。ヤマタケは能力とかではないあの村に着いた時から一人は連れていくことに決めていたんだ。だからお前を選んだのは偶然なんだよ。」
俺は事実を語ってやる。こいつには村を救うという役目をさせると同時に他にもさせることがある。
「ヤマタケには底辺からでも這い上がれる希望の象徴として動いて貰う。落ちこぼれたやつらが俺らも努力すればもしかしてと思わせられるような象徴にな。策はあるから従っていろ。」
なんせヤマタケはユイとあの村で俺の命令を遂行したのだ。できるはずだ象徴になるヒーローにな。
「..ん..わかりました。」
本来なら優秀なやつらだけで十分な予定だったんだが。エリア1を占拠してしまった以上エリア2以降の敵に対しさらなる戦力が必要になると俺は確信している。若いやつらを腐らせておく余裕はない。
「さて、まずは俺が考案したシステム、いや蠱毒で勝ち残ったルーキーの顔でも拝ませて貰いに行くか!しっかり管理してんだろうなアカシはよぉ~。」
◇
◇
俺は帝国機関で働いていた赤神総長の自宅にお邪魔している。
赤神総長の命令で俺以外は別の部屋で待機している。
「シンドウ本当に生きているとはのう。やはり殺されても死なん男だのう。」
「俺も人間ですよ。殺されたら死にますって。..久ぶりだなアカシ総長。ご健在で何よりだ。」
赤神司郎は昔の戦友であり協力者となってくれた人だ。俺の考える思想を気に入ったらしく12年前にいろいろ手を回してくれた。ちなみに俺が本格的に渾名付を徹底させたのもこの人の影響が大きい。
「ワシの言った通り雪見村に言ったそうじゃな。ジロキチのやつはどうだった?生きてたか?」
俺があの村に決めたのはアカシ総長の提案による所が大きい。なんでも昔の戦友が隠居してるらしく面白そうだから行ってみるがいいと言われたのだ。
「とんだ猫かぶり爺さんだったぞ。ホントロクなやつがいないなあんたの仲間は。..本題に入ってもいいか。」
「シンドウが作成したシステムで選び抜かれた者の事じゃろ。ワシが管理しておるよ、今総長を務めてるヤイチのやつには話を通しておるから問題はない。会いにいくか?ワシもケンジからお前が来ることは聞いていたからのう、ついていってやろう。」
「アカシ総長絶対面白そうだから提案してるだろ。だが来てもらった方が好都合だからな。先読みしていやがんなホントよぉ。アカシ総長には敵わんね~。了解だ。」
この爺さんに俺は先読み勝負と言えばいいだろうかな、勝率が良くて1割でしかない。俺が全力を出しても勝てなかったやつはアカシ総長が初めてだ。
◇
俺達はアカシ総長が用意したワゴン車に乗り移動する。
マカベには別件で任務に動いて貰うことにしたため研究に戻って貰った。おそらく今後のことを考えると兵器は必要となる。俺が手に入れた報酬で得た資産をくれてやったからな。使えるものを好きなだけ研究していて貰おう。
「これから向かうのは天城大学付属高校じゃ。選び抜かれた優秀なもんが通っておるわい。その中で特別編成クラスがあってのそこに今回は向かうぞ。」
「それはいい、だがなんだこの制服は!男性用2着に女性用1着ということは、また狙ってやりやがったなアカシ!」
用意された制服は16歳の俺、15歳のユイ、14か15か?ヤマタケの分ということだろう。
「ありゃ、女性用がもう一着必要じゃったかのう。ミッシーちゃんの分もの。」
「いやいらんミッシーには別にやってもらうことがあるから。サポートしてやってくれアカシ。」
ミッシーには掘り出し物を探す任務をさせる予定だ。
「え~。私もお兄ちゃんと一緒に通いたいですよ~。」
「ダメだ。別の事をやらせるということで連れてきたんだ。嫌ならあの村に戻すがどちらがいい。」
ミッシーがいると今回はヤマタケの足を引っ張ることになるだろうからな。ミッシーの能力を生かせる方法も考えてある。
「..わかりましたよ。アカシお爺ちゃんよろしくお願いします。」
「ほっほっほ。ずいぶんシンドウはミッシーちゃんを気に入ったみたいじゃのう。高音の妹はワシの孫同然じゃ。帰りにアイス屋を買い上げて好きなだけアイスをあげようかのう。」
「やったー!お爺ちゃん大好き!ありがとうね!」
おい!ツッコメよ!アイス屋を何でこんなことで買い上げしようとしてんだ!アカネは顔真っ赤にしてるし、ケンジは平然としている。これが普通なの!
「話が脱線したな。俺とユイにその高校に通えってのかよ。確かに味方にすんなら内情を把握したいから有効な手だと思うが、アカシがそこらへんのことは知ってるんじゃないのか?」
俺は抜かれたやつを早急に鍛えあげ戦力とする計画をしていた。この学園以外にも戦力はいるはずなのだがおそらく小競り合いを起こしているところに裂いているのだろう。人材不足ってやつだ。だからこそ才能の持ち主たち、それも伸び盛りな若いやつを最大戦力として育成することが、俺の考えたシステムだ。
「そんな悠長なことをしている時間はないと言いたいのじゃろうシンドウ。だがお主の考えではまた失敗するぞ。時間はワシらが稼いでやる。若いやつらの育成に全力を尽くしてやれ。そうすれば見えてくるものもあるというものじゃよ。」
痛いところを突いてくる。効率重視で動いてきた俺の価値観や行動がこれでは崩れてしまう。だが俺はそれで大敗北を起こしてしまった。本当にそれで解決の糸口が見えるというのかは疑わしい。だがアカシ総長が提案し嘘は言っていない。何かあるのだろう。
「....わかった。全力を尽くそう。配慮に感謝するアカシ総長」
「ククッあの生意気な小僧が丸くなったのう。それは成長じゃよ。期待しておるよ。」
俺はやはりこの人には頭が上がらない。あのジロキチ爺さんといい研鑽を積んできた年寄りは怖いな。
「そうじゃった。ケンジと高音には別の役職を用意したぞ。ケンジは特別編成クラスの担任教師を高音にはその副担任ということにしておいた。高音頑張ってケンジを落とすんじゃぞ!」
「お爺ちゃんはまたおせっかいを!止めてよね私は私なりに頑張ってるわよ!」
「それじゃワシが死ぬ前にひ孫の顔が見れんじゃろうが。いやじゃぞワシは!ケンジも高音の気持ちはもう知っとるのじゃろ。早く抱いてやらんか!」
この爺さんとんでもないな。普通こんなやつに孫はやれんと言うもんじゃないのか?抱いてやらんか!とか止めてやれ!アカネの恥ずかしさと怒りで真っ赤だぞ。羞恥と憤怒と性欲でオーラがとんでもない色になってんぞ。
「すまんな爺さん。俺はアカネのこと好きな方だが恋愛対象としては見てないぞ。諦めろ。」
「ケンジさん。その期待していいのか、できないのか分からない発言止めてくださいよ~」
やばいな爺さんがもの凄く面白いおもちゃでも見つけたような顔してるぞ!
「おい!爺さん天城なんちゃら高校ってのに着いたようだな。会話は終わりだ案内を頼む。」
「っちぃ。遠回りさせればよかったわい。そうじゃな着いたようじゃな降りよ。ミッシーちゃんは高級ホテルを手配しておいたぞ。好きなだけ注文して寛いでいてくれ。後から向かうからの。」
舌打ちしやがったよ。本当に本能の赴くままだな。こういうやつとだけは関わりあいたくなかったよ。絶対友達いねぇだろ爺さん。
◇
手続きを行い。
まず、俺とユイとヤマタケが転校生として特別編成クラスに入った。
「おーいこの雑魚ども!俺はシンドウだ。編入されて来てやったぞ!喜べよ!一緒に切磋琢磨ってやつをしようぜ。」
俺はドアを開け。挨拶を行いルーキーどもの顔を拝んでやるのだった。
ルーキーは次回紹介です!
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