8 南支部
目覚めてここがベッドの上だと認識する。
「エミリア、ここは?」
「南支部の救護室よ。ここに来るまでホントにカズマ動かなかったから焦ったよ」
「カズマ、ここに来る間何かあったか?」
サリーが問う。
「寝てたのに何かあったはおかしくないか?」
「わかってはいるんだがお前は特殊なんだ。心で守護霊と対話できるという噂があってだな」
「ああ、その弓と話したよ。色々教えてもらった」
「ガブリ?」
「この弓の守護霊の名前さ」
弓を持ち上げながら言う。
「そうか、また後で話そう。もう少し休んでていいぞ」
サリーは救護室を後にした。
「忙しいのか?」
「そうね、国が襲わせたからね」
悲し気に笑みを浮かべたエミリアを見て、当たり前のことを聞いてしまったと後悔した。
いつの間にかそばでマリアは人形を抱えて眠っている。
「この人形は?」
「これはマリアがいつも持っているものなの。サリーがここに着いてから取りに行ってくれたのよ」
マリアはこれがなくてビクビクしていたのだと悟った。
「でさ、カズマ。あなたが特殊種であるとわかった今、あなたをこの国にいさせられないの」
真剣な眼差しがカズマに向けられた。
恐らくだが、今度は俺狙いで国が襲われる危険があるからだろう。
もうここから出たらどうしようと考えていた。
「あなたが噂が広がると同時に標的にされるわ。確実に」
「うん」
「この国は南支部で今のところ何とかやっていけそうなの。幹部達も南支部に到着したし」
エミリアの目が徐々に輝いていくのがわかる。
俺が予想したのとは少し違うようだ。
「だからさ、さっきサリーとマリアとも話していたんだけど……」
少し溜めてエミリアは言った。
「4人で旅に出ない? 国が襲われてしまった今、やはり他種族との同盟も必要だと感じたの」
確かに、今回襲われたのを見て防戦一方であったと思う。
ナイトサーバントが撤退しなかったらどうなっていたことか。
考えただけで冷や汗が出てくる。
「それに私まだこの国から外に出たことないのよ」
エミリアの顔だけを見ると旅に出る目的が99%好奇心、1%国のためという風に感じる。
それくらい旅への楽しみが伝わってくる。
「俺はいいぞ」
国を一人で出るよりはマシである。
「ホント!? 行こー!!」
「行こーーー!!」
寝ていたはずのマリアがいきなり叫ぶ。
その勢いで振り上げられた拳に見事にアッパーを喰らった。
ガッ!!
「ブホッ」
ベッドから落とされた。
置いてあった椅子に勢いよく腰をぶつける。
「ムニャムニャ……あれ、カズマは~」
「こ……こ……」
「何してるのそんなとこで」
「うん。なんでもない……」
カズマは腰を抑えうつ伏せになった状態で返事をした。
エミリア達が俺を仲間として見てくれるようになったのはいいが、旅に出るのはいいがなかなか大変な旅になりそうだとしみじみ思った。




