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エルフライフ  作者: 神島 葵
4/10

3 決意

 俺は酷く落ち込み、深くため息をつきながらその場に座り込む。


「もう終わった。絶対死ぬ」

「まあまあ、魔法が使えなくても物理攻撃とか覚えましょ」

「あ、剣とか弓とかね」

「そうです」

「仕方ないか。異世界来たってのに魔法が使えないとはへこむわ」


 そう言いながら立ち上がった。

 その時、かなり大きな爆発音が響き渡る。

 まるで雷がすぐそばで落ちたかのようだった。


「なんだ?」

「まずい予感がします」


 爆発の衝撃なのか聖樹が微かに揺れている。


「ここでちょっと待っていてください」


 そう言って風のような速さで部屋を飛び出していった。

 5分もしない内にエミリアは部屋に戻ってきた。

 手には二人分の弓と短剣を持っている。


「武器庫が敵の遠距離攻撃でやられていて残りの武器がこれしか」

「ていうことは結界は破られたの?」

「ええ……」


 エミリアの真剣さを一瞥すれば深刻なことが一目瞭然だった。


「戦う以外の選択肢はないです。ただ、今は状況があまりにも不利なのでいったん引きます」

「どこへ?」

「結界が破られた場所は北側、私たちは南側へ逃げます。幸い南側に最大支部があるので」

「エミリア!!」


 サリーが勢いよく部屋に駆け込んできた。

 負傷したエルフを一人背負っている。

 エミリアの姿を確認すると安心したような表情に変わった。


「よかった。無事で」

「サリー外はどうなってるの?」

「ダメだ。もう、下はだいぶやられた」

「待って。もう聖樹まで来たってこと?」


 エミリアの顔が青ざめている。


「とりあえず南支部に行こう」

「私もそう思っていたところよ」

「俺がその子担ぐよ。もし敵が現れたらサリーさん担いだまま戦えないでしょ?」

「いいのか?」

「ああ、俺はまだ戦闘経験浅いからさ。エミリアその弓貸して」


 負傷したエルフをおんぶし、弓と弓矢を背負った。

 幸い負傷したエルフがそんなに重くない。


「あり……がとう……」

「いいってことよ」

「私は……マリア……」

「俺はカズマよろしくな」


 マリアはまだ人間で言うと小学5、6年くらいだと感じた。

 その割には背負ってみて分かったがサイズがだいぶ大きい。

 胸の。


 再び爆発音が響き渡った。

 先よりも大きい。

 敵が近づいている証拠なのだろう。


「急がないとまずいぞ」

「そうね、急ぎましょう。カズマ準備はいい?」

「俺は大丈夫だ」

「マリアも大丈夫ね」


 エミリアの問いかけにマリアは頷く。


「では、行きますよ」

「先行ってるぞ」


 そう言ってサリーは窓から飛び降りた。

 俺は冷静に考える。

 ここって聖樹の最上階辺りじゃなかったっけ?

 

「カズマどうしました?」

「え? 飛び降りるの? え? 死ぬよ?」

「大丈夫ですって!」


 そう言いながらカズマの腕をつかみエミリアは飛び降りた。


「うっわあああああああああああ!」

「目……開けてみて……」


 耳元でそう聞こえた。

 カズマは目を開けてみる。

 すると、人が着地できるようなスピードで落ちているのが分かった。


「カズマ! これが魔法よ!」


 少し下の方からエミリアが叫んだ。


「なんだよこれ……」


 景色を見て衝撃を受けた。

 木が焼き払われ、建物からは黒い煙が空へ届いている。

 微かに鼻につくにおいがする。


「ごめん」


 自分の無力さに腹が立った。

 肩を掴むマリアの手が少し強くなったのを感じた。

 おそらく俺と同じことを思ったのだろう。

 いや、同じと言っては失礼だ。

 マリアはここにずっと住んでいるのだから。

 三日前に来た俺と一緒になんかされたら嫌だろう。


「俺は強くなるよ。そして、ここを取り戻す」


 自分に言い聞かせるように呟いた。

 マリアには聞こえるか聞こえないかくらいの声で。


「あり……がと……」


 背中から言葉が返ってきた。

 マリアには聞こえていたようだ。

 ここには三日間寝ていただけだけれど、この人達を救いたい笑顔にさせたいと心から思った。 

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