見極める目
ソルベの探す花を調べてはいるヘルムート達。
とはいえその花に関する情報自体が出てこないわけで。
そんなソルベはマイペースに楽しそうにやっている。
そして今日は少し街に出ているわけだが。
「やはり街は賑やかでいいな」
「この街も都市開発でデカくなったからな」
「それでどこへ行くのよ」
「買い物って言ってましたけど」
ソルベに誘われて買い物にきているわけだ。
今ではすっかり料理が上達してしまったソルベはその腕を振るっていた。
「お、果物屋か、よし買っていくぞ」
「やれやれ、金はあるからいいんだがな」
「ソルベの料理の上達っぷりおかしいわよね」
「私よりも上手くなってますし…」
「おや、ヘルムートさんじゃないか、何か買ってくれるのかい」
とりあえずはソルベが品定めをする。
手に取って品定めをするかと思ったが、その果物をじっくり見ている。
どうやら見て品定めをしているようだ。
それだけで分かるのかともアルは思っていた。
「ふむ、ではこれとこれ、あとこれをくれ」
「はいよ、それじゃ今袋に詰めるから待っててくれ」
「あれだけで分かるのか、大層な目を持っているようだな」
「目利きまで出来るとかなんなの」
「私も目利きは出来ますけど…」
そうしてソルベが指定した果物をお買い上げである。
恐らくあの棚にあった果物で一番いいものを買ったのだろう。
それだけ目には自信があるのか。
その眼鏡の奥の視線はそれだけ相手を見ているのか。
「それでその果物何に使うのよ」
「フルーツケーキでも作ろうかと思ってな」
「フルーツケーキですか、いいですね」
「どんどん凝ったものを作るようになっていくな、こいつは」
「料理は楽しいからな、僕としてもそれが美味しく出来ると嬉しいものだ」
ソルベはすっかり料理にハマっている様子。
今では木花にも負けない料理を作れるようにまでなっている。
あっという間にそれを学習し、実際に出来るようになっている。
そんな教えられた事を吸収し実践する能力の高さには驚くしかない。
「それより目的を忘れていないだろうな」
「僕を男に戻す花の事だろう、焦らなくても逃げはしないさ」
「それはそうなんですけど、なんていうのか、今の生活を満喫してますよね」
「あんたやる気あるの?それとも建前で一緒に暮らしたいだけとか?」
「やる気はあるさ、あるからこそ焦っても仕方ないという事だよ」
ソルベもやる気はあるようだが、マイペースそのものである。
ヘルムートもそんな彼女に少し呆れ顔だ。
とはいえソルベからはどこか気品も感じ取れる。
実はどこかの国の偉い人なのか。
アルは王妃と知り合いだったという事も引っかかっていた。
王族と知り合いの騎士、身分を隠しているのではないかと勘ぐる。
「おい、あれが食べたい」
「シャーベットか、最近は少し暑いしまあいいだろう」
「なら私達も食べるわ」
「ヘルムートさんの奢りで」
「調子のいい奴らだな、何が食いたいか言え、払ってやる」
そんなヘルムートの奢りでシャーベットを味わった一同。
ソルベも学習能力は高いが、どこか世間知らずな一面もたまに覗かせる。
それはやはり高貴な身分なのだろうか。
少し気になりつつも今は訊かないでおく事に。
「さて、帰るぞ、帰ってフルーツケーキを作る」
「私にも食べさせるのよ」
「姫様はすっかり食い意地が張ってしまいましたね」
「こいつもあれだけ食べて太らないんだからな、大したもんだ」
「フルーツケーキの次は何を作るかな、考えておこう」
そんなわけで帰ってからはソルベの作ったフルーツケーキを堪能した。
ソルベの身分の事などは気になりつつも今は言わないでおく。
花は逃げないとはいえ、ソルベのマイペースさには少し呆れていた。