金と銀
今日も変わる事なくいつものように日々を過ごすヘルムート達。
そんな中アルが今日も質問をぶつけてくる。
勉学は積んでいても気になる事はあるようで。
ヘルムート達もそれに答えるのも大人の役目と思っていた。
「ねえ、金と銀の違いって分かる?」
「金と銀の違い?なんでまたそんな事を訊く?」
「金と銀の違い、具体的にどんな違いですか?」
「姫様、また気になる事でもあるんですね」
そんなアルの質問。
アルが思っていたのは金属製品などでの話のようで。
「軍隊に支給される武器に銀製の武器ってあるでしょ?でも金製って聞かないから」
「そういう事か、その違いなら簡単だぞ」
「それは強度の問題ですよね、合っていますか?洵さん」
「ええ、木花さんの仰る通りです、金製の武具が少ない理由ですね」
「つまり金って脆いって事で合ってます?」
木花の答えと洵に確認した答え。
要するに金は強度的に脆いので武具には向かないという事。
銀は鋼や鉄よりは脆いものの切れ味などの威力の優れる武器になる。
ただし銀は耐久性では鉄や鋼よりも脆い。
金はそもそも脆い上に元々の強度も実は大した事がない。
金で作った剣を試した人がいるらしいが、あっさりと折れてしまったという話がある。
「金ってのは金属の中では脆い方でな、武具にしても革よりマシなぐらいだぞ」
「革よりマシなぐらいって、要するに簡単に壊れちゃうって事よね」
「そうですよ、ついでに脆い事もあって武具に加工するのも面倒なんです」
「一応金の武具自体はありますね、ですがお世辞にも強いとは言えません」
「金って脆かったんですね、それなら納得な気がします」
洵曰く東の国の武器職人に金で武器を作ろうとする人はいないという。
それこそ東の国の武器職人は鋼を使った切れ味の鋭い武器を好んで作るのだそうだ。
そもそも東の国には玉鋼という東の国にしかない金属がある。
その事もあってか金はもちろん銀もあまり使わないらしい。
「武具の職人からしたら金で武具を作るなどなまくらを作れと同義なのですよ」
「それは言いすぎな気もするけど、金が脆いっていうのは理解したわ」
「金も銀も強度としてはお世辞にも高いとは言えませんからね」
「金で作った剣なんてのは飾るために作った模造品ぐらいだろうな」
「金という素材の脆さ、鋼や鉄は頑丈というのも分かりました」
ちなみにだが金製の食器なども意外とないらしい。
王族や貴族が使う食器は大体は銀製だ。
そして平民に主に出回る食器は鉄などが多い。
金製のスプーンやフォークはあるにはあるが珍しいという。
「銀ってのは毒を調べるのに使ったりもするんだ、王族なんかが使う理由だな」
「そういえば国にいた頃は銀製のスプーンとかフォークだったわね」
「銀というのは汚れに敏感な金属ですからね、毒に触れれば簡単に汚れるのですよ」
「銀製の食器が高貴な身分の人に重宝される理由ですね」
「やっぱり金って金属としての価値はあるのに、材料としての価値は低いんですね」
金と銀、そして鉄や鋼の価値についても学んだようで。
金属は強度やその切れ味が大切になってくる。
金属としての価値と武具にした時の強度は別物なのである。




