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錬金術という技術

今日も今日とていつものように暮らすヘルムート達。

そんな中今日もアルがヘルムートに質問をぶつけてくる。

王族であるので教養はあるのだが、気になる事は積極的に訊く。

アルの疑問は尽きる事はないようだ。


「ねえ、ヘルムート、錬金術って知ってる?」


「錬金術?そういや昔はそんな技術もあったとは聞いた事があるな」


「今の時代は魔法はマイナーな技能ではあるものの、学校などはありますが」


「姫様が錬金術に興味を示すなんて珍しいですね」


昔には存在していたという錬金術。


今の時代にその錬金術はほぼ廃れてしまっていて歴史書に残るのみだが。


「それでなんでそんな事を訊くんだ?」


「そうですね、金に興味でもありますか?」


「違うわよ、歴史書に出てくる錬金術士ってみんな貧乏らしいの、なんで?」


「それは錬金術が儲からないからですよ、簡単な事です」


「洵さん、錬金術が儲からないってどういう事ですか?」


洵が言う錬金術はお金にならないという言葉。

その意味は考えれば分かりそうだが、アルはそれを問うてみる。


それに対して洵も世の中の仕組みに照らして答えてくれる。

なぜ歴史書に載る錬金術士は貧しいのかという事について。


「ではアルさんに一つ問題です、金がたくさん世に出回ったら何が起こりますか?」


「何が起こるって、みんな貧しくなくなるんじゃない?」


「それは間違いですね、例えば宝石が大量に出回ればその宝石はどうなると思います?」


「これは経済の基礎だな、物の価値がどうやって決まるのか、分かるだろ?」


「あ、なるほど、金が大量出回ったら金の価値が大暴落して…」


ベリンダの言う金の価値という言葉。

木花の言う宝石もそれと答えは同じだ。


「要するに金が大量出回ったら金の価値は大暴落、鉄屑同然になる」


「貴重だから価値があるのですよ、貴重なものが大量出回ったら価値は落ちますからね」


「つまり価値がなくなるって事よね?当然取引価格も大幅に下がる…」


「そういう事です、錬金術士が貧しいのは金の価値を理解しているからと思いますよ」


「金の延べ棒が凄く高いのはそれだけ金が貴重だから、ですか」


歴史書に載る錬金術士が揃って貧しいのは経済問題と直結している。

錬金術士が金を作りまくれば金の価値は大暴落する。


そうなれば当然儲けどころか大赤字を叩き出すのだ。

錬金術が廃れたのも錬金術士が貧しいのもそういう背景があってこそである。


「実際多くの国は国庫に金を大量に溜め込んでたりする、資産としてな」


「あと世界で流通している貨幣もそうですね、金貨が高額貨幣の理由です」


「錬金術士って儲からないのねぇ、金を作って大金持ちだと思ってたわ」


「金の価値が大暴落するので金を作れても大量には作れないのですよ」


「経済と錬金術って実は密接なんですね、勉強になります」


結局はお金儲けは甘くないという事でもある。

価値のあるものを大量に流通させれば瞬く間に価値が大暴落する。


宝石でも金でも貴重だからお金になるのである。

それが経済における基礎中の基礎だとアルは改めて理解したようだ。


「金儲けってのは物の価値を理解しないと大赤字にしかならん、いいな?」


「物価の変動もそんな物の価値が影響してるって事ね」


「そういう事ですね、野菜が不作だと当然値段は高騰するわけです」


「流通は物の価値にも直結するのですよ」


「金を作れても作り過ぎたら意味がない、難しいですね」


そんな歴史書に載っていた錬金術の現実を知ってしまったアル。

お金儲けをするには物の価値を落としてはならないという戒めでもあった。


世の中上手くいかないのは世の常である。

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