ある病気
今日も特に何もなくいつものように暮らすヘルムート達。
そんな中西の国に来てから洵が楽そうにしている。
アル達はそれが少し気になっているようだ。
その事情を知るヘルムートもそれを理解はしているようで。
「西の国は楽でいいですね、この季節は」
「ねえ、洵がなんか嬉しそうにしてない?」
「ああ、洵は花粉症なんだ、西の国はその花粉もないからな」
「花粉症?それって病気か何かですか?」
アルとベリンダはそれについて質問する。
西の国にも花粉症自体はあるはずなのだが。
「花粉症というのは鼻が詰まったり目が痒くなる病気の事ですよ」
「木花か、まあ間違ってはいないんだがな」
「病気なの?でも鼻が詰まったり目が痒くなるって?」
「西の国には悪しきスギ花粉がないのでとても快適なんですよ」
「スギ花粉?それって杉の木ですよね?」
そもそも西の国には杉の木自体が少ない。
なので花粉も飛ばないし、その関係で花粉症も発症しない。
もちろん完全にないわけではない。
それでも東の国に比べると圧倒的に快適なのだと洵は言う。
「本当に東の国にいた頃はこの季節は鼻が酷くてですね、困ったものですよ」
「あの洵が持病持ちだったなんて」
「そもそも花粉症は鼻や目の粘膜から発症するアレルギーみたいなものですからね」
「例えとしてはあれだが、過敏症の一種なんだろうな」
「なるほど、それで鼻とか目が痒くなったりするんですね」
ヘルムートも西の国の人間なので花粉症とは縁がない。
それだけに洵の快適そうな顔を見ていると、その酷さを感じるらしい。
「花粉症ってのはそれこそ一日でティッシュ一箱使うとか余裕だからな」
「は?そんな酷いの?」
「それが花粉症ですよ、寝ている時も鼻が詰まって眠れないとかあります」
「うわぁ、それはキツいですね」
「おかげで西の国に来てからはとても快適なんですよ、スギ花粉がないですから」
だがそこでアルは一つ疑問を感じる。
東の国は開発されている都市も多いと聞いている。
それなのに花粉がそんなに飛ぶのかと。
その答えはキチンと教えてくれた。
「ねえ、東の国って都市が多いって聞くけど、そんなに花粉が飛んでるの?」
「正しくは遠くから風に乗って都市まで飛ぶんですよ」
「その関係で春頃は花粉症が特に酷い季節だと言われますね」
「都市まで飛ぶなんて、花粉ってそんなに飛ぶんですか…」
「それも大量にな、花粉症ってのは東の国の国民病みたいなもんらしい」
風に乗って遠くから飛んでくる。
それを聞いたアルは東の国の壮絶さをまた一つ知ってしまった。
この前の自然災害の話といい、東の国は試される国なのかと。
西の国で育ったアルには分からない苦しみでもあるようだが。
「西の国はいいですね、スギ花粉がほぼないので鼻が快適ですよ」
「洵も苦労して生きてきたのねぇ」
「こっちに来てからは春頃は本当に快適そうにしてるからな」
「それだけ花粉症に苦しんできたんですよ、東の国の人ですからね」
「花粉症ってなんか凄いんですね、それは知りませんでした」
そんな洵の悩みを少し知ったアル達。
ヘルムートもそれを見ているだけに、気持ちは分かるようだ。
西の国はスギ花粉が東の国比べてほぼない楽園らしい。




