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爺さんと怪物少女  作者: あさしおやしお971号
怪物との出会い
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捜査打ち切り

神隠し事件からしばらく経過した日。

国の警察の方でも犯人の情報すら出ない事もあり、捜査打ち切りが発表された。

だが事件は今後も起きる恐れはある。

警備などの強化だけは継続していくとの事だ。


「捜査打ち切りか、まあ妥当だろうな」


「流石にこれだけ情報が出なければ無理もありませんよね」


「ですね、とはいえ今後も起きないとは限りませんが」


洵の言う通りである。

とはいえ、犯人がここにいる以上監視は出来る。


「とりあえずワシらはいつも通り暮せばいい、それだけだ」


「ですね、それだけですよ」


「そういえばそのメアさんはどこに?」


「あいつは突然いなくなるからな、まあ街から出るような事はなかろう」


「探しにいかないのですか?」


「放っておいても帰ってくる、ワシは仕事もあるしな」


意外と放任主義なヘルムート。

とはいえそれはメアを信じているからでもあるのだろう。


一方のメアはというと街の方にいた。


「あなただあれ?」


「おや、可愛いお嬢さんだ、実は旅をしていてね」


「聞いてないわ」


そういう返しはメアらしい。

とはいえその旅人も放ってはおけないのか、話だけは聞く事にしたらしい。


「旅をしているのはいいんだが、どうにも迷うんだ、どうしようか」


「方向音痴なだけよ、地図は読めないの?」


「地図は持っているんだよ、でもこの街に着くのに三日も使ってね」


どうやらこの旅人は方向音痴らしい。


メアも地図が読めるわけではないものの方向音痴ではない。


とりあえずどこに行きたいのか訊いてみた。


「港町に行きたいんだよ、でもここは内陸だよね」


「港町は南の出口から出てまっすぐよ、でも迷いそうね」


「分かる、まっすぐ辿り着ける気がしない」


どうやら自覚はあるようだ。

とはいえ勝手に街の外に出るわけにもいかない。


だが彼一人で辿り着ける気がしないので困る。


とりあえずは誰かに知恵を求める事に。


「おや、メアちゃん、どうしたんだい?」


「この人が港町に行きたいらしいの、でも方向音痴だって」


「面目ない」


八百屋のおばちゃんは少し考える。

そして閃く。


「なら乗り物でも使えばいいんじゃないのかい?お金ぐらい持ってるだろう」


「お金はあるんですが出来れば歩いて行きたいんですよ」


「困った人ね、馬車は街で常に待機してるわよ?」


彼はこの国を見て回りたいらしく出来れば歩いていきたいと意地を張る。


王都の神隠しもあり航空便は数が減ったままだ。

とはいえ陸路なら馬車は普段通り運行している。


「地図は読めないのかい?」


「読めますよ、でもなぜか迷うんです」


「方向音痴の典型よね」


どうしても陸路で行きたいという彼。


仕方ないので港町への行き方を不安ながらも教える。


「ふむ、感謝します、不安ですが行ってみますよ」


「迷って戻ってこないでね」


「うむ、では失礼した、アデュー」


「あの人無事に辿り着けるのかねぇ」


「不安だわ」


旅人はそうして南の出口から港町へ向かっていった。


ちなみに港町までには結構な距離がある。


不安を覚えつつもそれを見送った。


メアはお腹が空いたので家に戻る。


「お、戻ったか」


「本当に戻りましたね」


「小動物みたいな性質ですね」


「オレンジ」


「ああ、家の中に箱があるから好きに食え」


「ええ」


そのままちょこちょこと家の中に入っていく。

洵と木花も今はとりあえず安心そうに見ていた。


神隠しは次第に人々の心から薄れていったのである…。

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