表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/140

仇討ちの是非

今日も特に何もなくいつもの日々を送るヘルムート達。

そんな中アルが一つの質問をぶつけてくる。

それは本を読んでいて疑問に思った事だという。

アルが疑問に思った事とは。


「ねえ、ヘルムート、なんで復讐っていけないの?」


「突然だな、またどうした」


「もしかしてその本ですかね」


「姫様って本はいろいろ読みますよね」


アルが疑問に思った事、それは復讐というか仇討ち的な事の是非。


国の理不尽を見ているヘルムートに訊くのもなんとなく分かる。


「そうだな、世間一般では憎しみの連鎖だの誰も喜ばないだの言うだろ」


「でも本人からしたらそれって生きる意味の全否定じゃない、違うの?」


「ふむ、アルさんなりの考えでもありますか」


「確かに対象が法律で裁けなかったりしたら救われないとは思いますけど」


「とはいえ物語における復讐を否定する奴は大体お花畑だぞ、そういうのが多い」


ヘルムートも結構ズバッと言ってくる。

とはいえアルが感じたのはそれで救われるわけないだろという事。


少なくとも当人からしたら生きる意味を否定されているし、相手も何も分かっていない。

なんで救われない事を平気で言えるのか、という事でもある。


「公には言えんが、ワシは復讐は合法化しちまってもいいんじゃないかと思ってるぞ」


「それはそれでとんでもない事言うわね」


「でも被害者が救われるには復讐しかない、そういう場合もありますよね」


「ベリンダさんの言う事も尤もではあります、泣き寝入りしろという事こそ理不尽ですよ」


「結局は復讐でしか救われん奴もいるんだ、頭ごなしに否定していいもんじゃない」


ヘルムートなりの考えでもある。

復讐でしか救われない人は確かに世の中にはいる。


それがどんな理由であれ、泣き寝入りこそ理不尽だと洵は言う。

ヘルムートは復讐を合法化してもいいのではないかという考えでもある。


結局は理不尽を解決する手段が復讐だとも言える。

物語にある仇討ちもそんな復讐の手段の一つである事は確かなのだ。


「それに復讐ってのは自分の過去との決別だ、それで前に進める事もあるにはある」


「過去との決別ねぇ、つまり復讐を果たしてやっとスタートって事よね」


「頭ごなしに否定するのもあれですけど、その人の心の傷は復讐でしか満たされないんです」


「心の傷ってのは一度ついたら二度と消えん、復讐が傷によるものっていうのはある」


「心の傷ですか、だからこそ相手への負の感情が生まれる、ですか」


復讐者というのは物語でも現実でも心に傷を負った者が多い。

理由はどうであれその心の傷が復讐へ走らせる事はよくある事でもある。


理不尽な目に遭った人間の生きる意味を奪うのか。

復讐を悪とするならそれは被害者は泣き寝入りしてろという事になってしまう。


「だからな、それによって救われる奴は絶対にいる、ワシはそう思ってる」


「周囲の人間じゃなくて本人って事でもあるわよね、その話だと」


「それに被害者に追い打ちをかけるような理不尽が世の中にはあるんですよ」


「結局は理不尽に打ち勝つのが復讐、そういう事なんでしょうか」


「因果応報、カルマ、それは巡り巡って返ってくる、そういうもんだぞ」


ヘルムートなりの言える事でもあった。

アルの疑問は完全には晴れなかったが、少しはスッキリしたようだ。


仇討ちは理不尽に打ち勝つためにする。

相手に理不尽を与えてやるのが復讐、ひいては仇討ちなのだと。


「だから復讐を否定しか出来ない奴はそれは他人事という事だな」


「なんかヘルムートの意外な言葉を聞いてこっちが驚いたわよ」


「ふふ、ヘルムートさんがそういう事を言う理由もありますからね」


「理不尽、ですか」


「反省はするべきだが後悔はするな、そういう事だ」


なんとなくではあるがアルも納得はした。

理不尽を知るヘルムートなりの言葉でもあった。


世の中には被害者に追い打ちをかけるような理不尽が確かにあったのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ