余り物の餅
正月気分もすっかり抜けたいつもの日々。
ヘルムート達はすっかりいつもの生活に戻っていた。
そんな中新聞の怪奇事件の記事を見ているが、あえて言わないでいる。
それはそうと正月の余り物が出ていたので。
「どうしましょうか」
「木花さん、どうかしましたか?」
「そういや餅が余ってたのか、あまり置いとくとカビるぞ」
「ならさっさと食べないとマズいじゃない」
正月の餅が少し余っている様子。
何か食べる方法を考えていたそうだが。
「そうだな、そのまま食うのも味気ないし、何かないものか」
「おや、どうかされましたか?」
「あ、洵さん、余り物のお餅の利用法を考えていて」
「洵は何かいいレシピとか知らないの?」
「アレンジレシピとかありませんか」
餅を使ったアレンジレシピ。
そこで洵が閃いたようで。
「ふむ、ではあられにしてしまいますか、元はお米なので出来るはずですよ」
「あられですか、それなら作り方のデータはありますね」
「いいじゃない、私は塩がいいわ」
「私は醤油の方が…」
「ならいっそ砂糖醤油にするか?適度に甘さとしょっぱさがいい感じになるぞ」
砂糖醤油で味付けしたあられというのも乙なものだ。
アルとベリンダもそれには興味があるようで、それに決まる。
そんなわけで木花が余り物の餅を使ってあられを作ってくれる事に。
しばらくしてそれが完成したようなので。
「出来ましたよ、砂糖醤油のあられです」
「美味しそうね、いい匂いもするわ」
「砂糖醤油は醤油だけでは味が濃い時などにはいいですからね」
「ではいただきましょう」
「だな、結構出来たみたいだしな」
そんなわけで砂糖醤油で味付けしたあられをいただく。
いい具合に味が染みていてとても美味なものだ。
「でも醤油に砂糖を混ぜるなんて東の国は変わってるわね」
「醤油は味が混ざりやすいですからね、わさび醤油とかも一般的ですよ」
「他にも生姜を溶いたりもしますね、お刺身にはわさびや生姜をよく溶きますよ」
「へぇ、醤油って意外と面白いんですね」
「生姜は消化を促進したり体を温めてくれるからな、冬にはいいぞ」
ヘルムートも知識だけはそれなりにある。
東の国の文化などに魅入られて独自に勉強したりもした。
そもそも東の国と西の国では同じように見えて違う食材も多い。
東の国の野菜などは西から伝わり独自の進化を遂げたものなども多いのだ。
「そもそも東の国は独自の進化を遂げたものが多いからな、野菜でも果物でもな」
「そうですね、西の国から伝わったものも多くそれが独自に進化していますから」
「そうなの?つまり外国の作物とかを自分達に合うように改良したのね」
「東の国は得意分野が魔改造ですからね、あらゆるものが独自に魔改造されています」
「魔改造ってなんか言葉だけ聞くと悪の科学者みたいな…」
そんな東の国の事情もあるが、元々あったものも多い。
洵が言うには、東の国は昔は外国との交流がなくその関係で寛容なのだそうだ。
当然人種や肌の色での差別もなく、それを気にする人もいないらしい。
開国したのがそれこそ100年程度昔の話であり、それこそ最近だからだ。
「東の国の人はそもそも外国の事を知らなかったという事もありますからね」
「その関係で差別なんて知らんという国民性だ、気にする方が変というな」
「なんか東の国って鎖国の影響がモロに出てる気がするわね」
「ですがそれが過去に外国に染まらなかった理由ですよ」
「東の国の文化って想像以上に深い気がします」
そんな東の国の事も聞きつつあられを平らげる。
余った餅からは結構出来たようだが、ペロリである。
洵も意外と料理の知識があるのだから侮れないものである。




