アルのチョイス
王子の相談があった日から数日。
王都では貴族の少年の失踪がニュースになっていた。
久しぶりに起こった怪奇事件の捜査は相変わらず進展しない。
そんな中アルも国王へのプレゼントを考えていた。
「むぅ~、なにかいいものってないのかしら」
「国王もそんな若くはないからな、まあ意外と雑食らしいとの事だが」
「姫様も姫様なりにお父様へのプレゼントを考えてるんですよ」
「アルさんもなんだかんだで家族の事は気にかけているのですね」
そんなアルのプレゼントは何にするか。
何か東の国の食べ物を贈ろうとは決めたものの、これといったものが浮かばない。
「ねえ、洵、何かそれなりの歳でも美味しく食べられるものってないの」
「そうですね、西の国だとパン食が主流ですし、ジャムとかはどうです?」
「東の国のジャムですか?」
「確かに東の国の果物は甘みが強いから、ジャムも結構甘いんだが」
「国王陛下は雑食だとヘルムートさんも言っていましたよね」
木花もヘルムートからそれは聞いている。
国王でありながら意外と庶民的なものもよく口にすると。
特に菓子類には目がないとアルは記憶していた。
だとしたらここは菓子類で何かをチョイスする事に。
「何か東の国のお菓子でいいものってない?地域限定の銘菓とかそういうの」
「あの国王は意外となんでも食べるんだがな、何かあるものなのか?」
「そうですね、なら東の国のお菓子で庶民的ではありますがお煎餅などはどうです」
「確かにお煎餅は美味しいですけど、あれ結構固いですよね」
「国王の年齢からしても歯が弱い可能性は否定は出来ないような気がしますね」
とはいえアル曰く国王は筋の多い赤身肉などもがっつくらしい。
つまり咀嚼する力は衰えていないと考えられる。
ならば煎餅でも問題はなさそうだ。
とはいえ安物を贈るのも流石にあれなので、それなりにお高いものをチョイスする。
「そうだわ、お煎餅よりあれよ、おかきとかあられの詰め合わせ、あるでしょ?」
「なるほど、煎餅だとどこか味気ないがそれなら意外と悪くないな」
「ではそれにしますが、値段とかは指定があれば」
「陛下は庶民的なものも結構食べるので高すぎず安すぎずがいいと思います」
「ですね、それなら一番いい間を取れるかと」
そんなわけでアルの贈り物はおかきやあられの詰め合わせに決まった。
洵に頼んで東の国の知り合いの店から送ってもらう事に。
誕生日当日には間に合わせてくれるそうなのでとりあえずは安心である。
アルも構ってもらえなかったと言う割にはよく見ていたようだ。
おかきやあられはそれなりにお高いものも存在する。
だからこそのチョイスなのだろう。
「それにしてもヘルムートさんもよく国王の食事情とか知ってましたね」
「外交官をやってた関係で仕事のついでに食べ物のお土産に散々頼まれててな」
「父上ったら何やってんのよ、まあらしいと言えばらしいけど」
「国王陛下は意外と食通なんでしょうか」
「そんな気がしますね、外国の食べ物をお土産に頼む辺りは」
意外とお茶目な国王の一面を聞いたアル。
そんなアルのプレゼントは後日東の国から届く事になる。
国王は意外となんでも食べるというのはらしくない事なのかもしれない。




