姫様の店番
正月も終わりいつもの生活に戻ったヘルムート達。
そんな今日はヘルムートは所用で少し店を空けていた。
洵は剣術を教えに行っているし木花は買い物に出ていた。
大人達がいない店番を任されたアル達はどうするのかというと。
「なんで今日は大人達が揃って外に出てるのよ」
「ま、まあまあ、そんな機嫌を損ねずに」
「そうよ、店番ぐらい出来るわ」
「接客は流石に経験がないんだけど」
そうしているうちに客が来たようだ。
一応ヘルムートのやっていた事は見ているので記憶はしているのだが。
「すまないけど柴漬けをもらえるかしら」
「柴漬け…少し待ってて」
「大丈夫でしょうか」
「ヘマはしないと思いたいわね」
「今日は子供達だけで店番なのね、偉いじゃない」
そうしているうちにアルが柴漬けを持ってくる。
値段は棚に書いてあるのでそれを見ていた。
「えっと、350デリね」
「はい、ありがとう、可愛い店員さん」
「えっと、ありがとうございました!」
「ええ、それじゃあね」
「…アルは仮にも王族だしね」
アルも少しハラハラだったようだ。
そりゃ一国の姫が漬物屋の店番とか想像もしないだろう。
そんな時またしても思わぬ客が来る。
それは思わぬ助け舟かもしれない。
「やあ、アル、ヘルムート殿はいるかな」
「今は留守よ、役所に保険証の更新とかで手続きに行ってるわ」
「えっと、王子様はヘルムートさんにご用ですか?」
「うん、でも留守か、なら僕も仕事を手伝ってあげようか」
「それは流石に申し訳ないと思うのだけど」
ちなみに王子はこっそり城を抜け出して喫茶店で働いているという。
もちろん身分は隠しているのだが、その店のコーヒーが美味しいとか。
「好きにしたら、どうせ客なんてそんな来ないわよ」
「うん、なら勝手にそうさせてもらうよ」
「…なんか大変な事になってきましたね」
「というか王子が王都の喫茶店で働いている事の方が衝撃よね」
「あのー、すみません、えっと、たくあんをもらいたいんですけど」
そう言っているうちにまたしても客が来る。
そこはアルがたくあんを持ってきて代金を受け取る。
「はい、280デリよ」
「ありがとう、それにしても主人が留守で店番なんだね」
「はい、とはいえこのお店は繁盛はしているのですか?」
「繁盛はしてると思いますよ、一般家庭なんかではよく買われているそうです」
「そういえば夕方とかになると客足が増えてる気がしますね」
ベリンダが見ている限りでは家庭で夜の食事の時間にはよく売れているらしい。
食事に出すのはもちろん、酒の肴としても結構人気らしい。
結婚している家庭などでは旦那の酒のツマミによく買われているという。
あとはある程度歳を取った人には結構売れているとか。
「これは東の国の食べ物なんですよね、美味しく食べているのなら何よりです」
「ええ、僕も酒のツマミによく食べてるんです、意外とお酒に合うんですよ」
「なるほど、時間を取らせてすみません」
「いえ、それでは失礼します」
「兄上も興味あったりするのかしら」
王子も意外とグルメな一面はある。
ちなみに王子の好物はオムグラタンという料理らしい。
オムグラタンはチキンライスを丼の底に敷いて卵とチーズを乗せて焼いた料理だ。
王子曰く高級な食材は安全だが美味しいものは意外と庶民的なものと言う。
「店番はしてるか」
「ヘルムート、やっと帰ってきたのね」
「お帰りなさい」
「ああ、ヘルムート殿、お待ちしていました」
「アレク王子、あなたまで…とりあえず用事なら話は聞くので中へ」
そうして王子とヘルムートは王子の来た目的を話すため家の中へ。
もう少しだけ店番をアル達に任せ話を聞く事に。
王子が用事を済ませた帰りに漬物を少しもらって帰ったらしい。