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消える刀身

年も明けいつもの暮らしに戻ったヘルムート達。

そんな中アルが洵に少し訊きたい事があるらしい。

それは東の国における剣戟の話。

西の国との違いについてらしいのだが。


「ねえ、洵、訊いていい?」


「はい、何か?」


「なんだ?珍しいな」


「アルが洵に質問なんて確かに珍しいわね」


散々な言われようだが、アルはどうしても気になる事があるらしい。


それは先日見た東の国の時代劇の話だ。


「この前洵に見せてもらった時代劇あったでしょ、あれの刀の使い方よ」


「あれ?姫様が珍しく真面目に」


「ベリンダも何気に失礼ね」


「そういやこの前確かに洵の持ってきた時代劇のビデオを見てたな」


「それで刀の使い方ですよね?」


アルはその時代劇のワンシーンに気になるところがあったという。

そのシーンは刀を鞘から抜いてきちんと構えるシーン。


なぜいちいちきちんと構えるのかという事だ。

西の国の剣術は相手を斬るよりも突いたりする事がメイン。


一方で刀は斬る事がメインの剣だ。

その使い方の違いらしい。


「あれなんでいちいちきちんと構えてから斬るの?」


「そうだな、刀の面白さを見せてやるか、外に行くぞ」


「そうですね、なぜ刀をきちんと構えるのかをお教えしましょう」


「なんか面白そうね」


「私も興味があります」


そんなわけで家の外に出る。

そこで洵が刀の面白さを見せてくれるという。


とりあえず刀を鞘から抜く洵。

そして刀を構えてよく見ているように言う。


「よく見ておいてください、刀の刃の部分ですよ」


「えっ?待って、刀身が消えていくわよ!?」


「どういう事なんですか!?刃の部分が消えましたよ!?」


「違うわ、あれは景色に同化したのよ」


「メアはよく見ているな、その通りだ」


メアが言う景色に同化したという事。

洵が刀の向きを変えるとそこには確かに刀の刃があった。


「刀ってのは刃の部分が鏡のようになっていてな、それで消えたように見えるんだ」


「つまり刀に景色が映り込んで消えたように見える、そういう事ですか」


「正解です、きちんと構えるのは相手に刃の長さを悟らせないためなのですよ」


「そんなのずるいわよ!消える剣なんて反則じゃない!」


「確かに西の国の剣にはない特徴よね、凄いわ」


刀の刃の部分は鏡のように光を反射する。

それによって景色と同化して刃が消えたように錯覚するのだという。


侍が刀をきちんと構えるのはそんな刀の性質を理解しての事。

見えない刃に相手は距離感を掴めずそのまま斬られてしまうという。


元々刀は斬撃に特化した剣だ。

それこそ業物ともなれば鉄をバターのように斬り裂けるとも言う。


実際東の国の歴史において銃より刀の方が敵に致命傷を与えた事例もある。

それだけ刀はよく切れる刃物なのだ。


「剣をきちんと構えるのは刃を景色に同化させるため、納得ですね」


「刀ってのは玉鋼っていう東の国にしか存在しない金属で作るからな」


「東の国にしか存在しない金属なんてあるのね」


「刀がよく斬れるのは有名ですよ、刃に止まったトンボが切れたという事もあります」


「まさに斬る事に特化してるってわけね」


洵の言う刃に止まったトンボが切れたというのは蜻蛉切の話だろう。

刃に止まったトンボが真っ二つになったという逸話である。


「分かっていただけましたか?」


「ええ、刀って凄いのねぇ」


「東の国の刃物自体切れ味がとにかく凄いからな」


「国柄の違いが分かるわね」


「刃に止まったトンボが切れるとか怖すぎますね」


アルの疑問もこれで解決はしたようである。

刀の恐ろしさを知ってしまったのもあるが。


刃が消えるその剣は相手を惑わす妖刀さながらである。

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