爺さんと娘達
年末も近づくいつもの日々。
そんな今日はクリスマスイブなのだが。
せっかくなので少し盛り上がる事にした。
先日突然言われたもののこっそりと準備はしていたようで。
「ふぅ、あいつらは寝たか?」
「はい、ぐっすりですよ」
「前夜祭とはいえ少し騒いでしまいましたからね」
「そうだな、とはいえきちんと寝かしつける辺り木花は流石だ」
クリスマスの豪華なご馳走などでアル達も満足した様子。
それで疲れたのか風呂に入りそのままぐっすりである。
「さて、日付が変わるぐらいのタイミングでこっそり持っていくか」
「実はこっそり用意してたなんて言えませんよね」
「全くだ、本当は先日振られる前から用意してたんだぞ」
「ヘルムート殿らしいと言えばらしいですよね」
「うるさい、まあこの歳で娘が出来た気分ではあるからな」
そんな大人達の夜の会話。
ヘルムートも隅に置けないものである。
それで何を用意したのかと言えばなのだが。
何が欲しいかとは分からないものだったので、普段の様子から用意した。
アルとベリンダには東の国の本を用意したわけで。
メアには少し難しいかもしれないが画集を用意した。
三人と一匹はぐっすり寝ているのを確認する。
木花の集音機能を使いそれを確実に確認しておくのだ。
「問題なく眠っているようですよ」
「ならいいんだが」
「こういう時の木花さんは便利でいいですね」
「流石はテクノロジーの結晶だ、大したもんだよ」
「ふふ、甘く見ないでいただきましょうか」
そんな木花の余裕の笑みにも性能の高さが窺える。
東の国の技術の粋を集めて作られたメイドロボは伊達ではない。
「それにしてもすっかり年末ムードか、冒険者達も仕事が増えそうだな」
「里帰りの人達の護衛なども頼まれますからね」
「航空便なんかもあるにはあるが、そのターミナルまで行かねばならんしな」
「それに以前の革命団の一件もあって護衛の需要は高まっているようです」
「襲われたらたまらんからな、無理もない」
洵は東の国に里帰りはせずここで過ごすようだ。
アルとベリンダも国には戻らずここで年を明かすという。
洵はともかくアルとベリンダは国に戻る理由もないのだろう。
一応東の国の文化を体験したいという事で年賀状は書くと言っていたが。
「クリスマスとはいえ雪は降らんか、まあ無理もない」
「この街の場所自体雪は降りにくいですからね」
「そうだな、気象庁の予報でも晴れると言っていたしな」
「雪は何かとありますからね、仕方ないと言えばないですよ」
「それにクリスマス自体元々は生誕祭だしな、騒ぐものでもなかったんだが」
ヘルムートはクリスマスの本来の意味は知っている。
だから今は家族同然のアル達とのんびりしたのだ。
それは爺さんなりの優しさなのだろう。
騒ぎすぎると体に障るという事もある。
「健康とはいえ騒ぎすぎるわけにもいかんからな」
「ヘルムートさんは好きなものばかり食べたりしている割に健康体ですよね」
「あのな、寧ろ健康のために好きなものを断つぐらいなら好きに食うぞ」
「それがヘルムート殿の健康の秘訣かもしれませんね、ふふ」
「はぁ、それよりワシはプレゼントをこっそり置いてくるからな」
そうしてヘルムートは寝ている娘達の枕元にこっそりプレゼントを届けにいった。
この歳になってサンタをやる事になろうとは思わぬものである。
イブの夜は過ぎていき明日がクリスマス本番なので日付が変わってからなのである。