最初の怪奇事件
メアに必要なものを揃えに王都にやってきているヘルムート達。
そんな中ふらっとメアが姿を消す。
ヘルムート達はあと少し待って戻ってこなければ探しにいく事に。
だが最初の事件はすぐそこに迫っていた。
「あのね、今日私の誕生日なの、でもあまり嬉しくないんだ」
「なぜ?祝ってもらっているわよね?」
メアは貴族街の家で少女、メアリと話をしていた。
彼女は誕生日を祝ってもらっても嬉しくないという。
「確かにいろいろもらえるのよ、でもそれは仕事での宣伝ばかり」
「嬉しくないの?」
「本当に欲しいものなんかもらえないの、お祝いに来る人もお父様のお仕事の関係者よ」
「お仕事の関係者?友達はいないの?」
「友達も一応来ているのよ、でも蚊帳の外なの」
どうやらメアリは誕生祝いなのに疎外感を感じているらしい。
友達も一緒に蚊帳の外で楽しくなんかないのだそうだ。
「それに外の世界に出たくても許してくれないの、不満なのよ」
「そうなの、外の世界に行きたい?」
「ええ、だけど許してなんかくれないわ」
メアリも知らずのうちにメアに不満を打ち明けていた。
そしてそれは起こるのである。
「だからね…えっ?」
メアのスカートからその手は伸びる。
その後メアリがどうなったのか、それは誰も知らない。
「メアリ!どこにいるの!」
「あの子はどこへ行ったんだ?部屋に戻ると言ったが、部屋にはいない…」
「メアリどこ行ったんだろう、まさか家出かな」
「そんな事…ないと思うよ…」
だがすでにメアリはこの世にはいないのだ。
「あの子は悪い子じゃないわ、でもタマが望むのなら」
そうしてメアは貴族街を立ち去る。
「メア!どこに行っていたんだ!」
「心配したんですよ、必要なものは買い揃えました、帰りましょうか」
メアはそのままヘルムートの手を握る。
そうしてターミナルから飛空艇に乗り込み家への帰路につく。
だがヘルムート達が出発した次の便から突然運行が止まる。
メアリの両親が警察に駆け込んだのだ。
だがメアリが見つかる事は決してないだろう。
「おや、お帰りなさいませ」
「洵、特に変わった事はなかったな?」
「はい、こちらは特に変化なしです」
「ならよかったですね」
とりあえず服などはそのままメアの部屋に持ち込む。
家具などは数日のうちには届く予定だ。
だが王都で騒ぎになっているとは今は知らない。
「そういえばさっき緊急ニュースが流れていましたよ、王都で貴族の娘が消えたとか」
「物騒な話だな…ん?」
「何か思い当たるのですか?」
「いや、気のせい…だと思う」
メアはそのまま家の中へ駆けていった。
洵に言われるまま家の居間のテレビを見る。
そこには王都の貴族の娘が突然消えたニュースが流れていた。
「確証がないからな、とはいえ…」
「恐らく今後も起こるのでしょうか?」
「どうだろうな、まあなにもないと思いたいもんだ」
メアの秘密を知っているのは今はこの家族だけ。
とはいえ事件は次に起こるまでしばらくかかる事となる。
「まあいい、明日からは店も再開しないとならんからな」
「昨日仕込んだ分も近いうちに出来ますよ」
「まとめて仕込まないとならん商売だからな、とりあえず他の仕込みもやっとくか」
「では私はメアさんの荷物の整理をしておきますね」
そうして買い物を終えたもののどこかモヤッとした事になった。
とはいえ王都では謎の怪奇事件が街を賑わせる事となってしまったのだった。