ジャンクなお味
冬に向け準備も終わりいつものように暮らすヘルムート達。
そんな中今日はキッチンの調子が悪く修理業者を呼んでいた。
そのため昼食は適当に何か買ってきたもので済ませる事に。
たまにはいいかとそんなジャンクなものを食べる事になる。
「やれやれ、まさかキッチンが不調とは」
「メンテナンスは我々では難しいですからね」
「業者の話では修理は出来ますが、昼食時に使うのは無理だそうです」
「それじゃお昼はどうするんですか」
だがそこは木花だ、当然抜かりはない。
買い物帰りに街の店でハンバーガーのセットを人数分買ってきていた。
「ハンバーガーのセットを買ってきてあります、これで我慢ですね」
「ただいま、ってなによ?お昼は?」
「キッチンが調子が悪くてな、昼はこいつだ」
「たまにはハンバーガーもよろしいでしょう」
「姫様はこういうのはじめてでしたっけ」
アルもこっちに来てからいろんなものを食べてはいる。
だがジャンク的なものは今思えば食べた事がなかった。
ちなみに木花が買ってきたのはダブルバーガーである。
ビーフのパテを二枚使った少しガッツリしたものだ。
「ハンバーガーね、私は構わないわよ」
「メアの奴は帰ってこんのか、まあ仕方あるまい」
「とりあえず食べますか」
「ちなみに飲み物はアイスコーヒーです、あとポテトはミドルですので」
「それじゃいただきます」
そうしてハンバーガーにかぶりつく。
ヘルムートも結構な年齢とは思えぬ食いっぷりを見せる。
「ねえ、これ紙に包んだまま食べればいいのよね?」
「そうですよ、そうしないと汚れてしまいますから」
「にしてもハンバーガーもたまにはいい、街も広いし店も出店してて助かる」
「ヘルムートさんはその歳で結構なんでも食べますよね」
「確かに…油ものとか普通に美味しそうに食べてます」
ヘルムートも年甲斐もなく肉や揚げ物をガッツリ食べる。
それは歳を感じさせないのと同時に、健康な事を窺わせる。
ヘルムート曰く健康になろうとしても健康にはなれないというのが持論らしい。
寧ろ適度に好きなものを食べまくる方が体にいいと言っている。
「そもそも健康なんか気にしてマズイものしか食わない食生活などワシは願い下げだ」
「なのでヘルムートさんは年甲斐もなくなんでも食べます」
「それでこの健康体か、恐ろしい爺さんだわ」
「ふふ、私もお二方が来る前にもよく頼まれていろいろ作っていましたからね」
「好きなものを食べるのが健康の秘訣…ヘルムートさんって凄いです」
そうしているうちにハンバーガーを綺麗に平らげる。
ポテトもしっかり完食しアルも満足気だ。
アイスコーヒーはヘルムートと洵はミルクのみで飲んでいた。
アルとベリンダはガムシロップもきちんと入れて飲んでいる。
そこは大人と子供の味覚の違いを感じさせる光景だった。
ヘルムートが言うにはブラックで飲んでも味気ないのでミルクだけ入れるらしい。
「アルもハンバーガーには満足か?」
「ええ、たまには悪くなかったわ」
「キッチンの修理はもう少しかかりそうですね」
「でもハンバーガーはやっぱりシンプルが美味しいですね」
「結局は原点に帰るものですよ、美味しい限定品とかを食べても」
洵曰く美味しい限定のメニューや新メニューも一度は食すらしい。
だが最終的にはシンプルにダブルチーズバーガーなどに戻ってくるという。
「にしても洵ってハンバーガーとか好きなのね、意外だわ」
「洵はワシと同じでなんでも食べるぞ、あと限定品は一度は食べる主義らしい」
「洵さんは限定品に弱いんですよね、期間限定とか言われると誘惑に負けるんです」
「恥ずかしながら、飲食店などで期間限定と書かれているとどうしても」
「なんか難儀な性格ですね、洵さんも」
そうしているうちに時間は過ぎキッチンの修理も終わる。
業者に修理の費用を払い夕食はキッチンを使えそうである。
たまに食べるジャンクな味は格別に美味しく感じるものなのだ。