甘いリンゴ
騒動も聞かなくなってしばらく。
ヘルムート達はいつものように暮らしていた。
街も冒険者で賑わい人の出入りも活発になっている。
それでもヘルムート達はそれを眺めつつ特に変わりなく暮らしている。
「焼きリンゴが出来ましたよ」
「ほう、木花もたまにはシャレたものを作るな」
「焼きリンゴ…いいわね」
「早速いただきましょう」
そうして焼きリンゴを食す事に。
ちなみにメアはどこか行っているし、洵は今は剣術の稽古をしているので留守だ。
「それにしても東の国のリンゴって本当に甘いわよね、蜜が凄いわ」
「東の国ってのはなんでも甘く作るからな」
「それは前も聞きましたね、なんでそんな甘さにこだわるんですか?」
「甘い方が美味しくはありますよ、ただ甘いのが嫌いな人もいますが」
「リンゴがハチミツみたいに甘いのは流石に驚いたけどね」
そう言いつつアルも焼きリンゴを頬張る。
ベリンダも美味しそうにそれを食べていた。
「それとアップルティーです、美味しいですよ」
「木花さんって本当に料理上手ですよね」
「メイドロボだからな、当然といえば当然ではある」
「東の国ってそういうのも作っちゃう辺りガチよね」
「技術では西の国も負けてないだろ、まあここは中央大陸なんだがな」
とはいえ地図的には中央大陸も西の国にカテゴライズされるらしい。
地理的にはこの街のある場所は中央大陸の西寄りに近い位置だからだ。
北国や南国も地理的には扱いは難しくはある。
ここは西大陸になっているが地図上では中央である。
地図は数年に一度更新され改訂版が発売される。
なので国の位置や大陸の扱いなど意外と微妙なのだ。
「地図は数年に一度改訂されるからな、まあ大体は変わらんから気にするな」
「ふーん、地図を作る人って何かと大変なのね」
「とはいえ東の国は技術の変な使い方は多いですよね」
「天才と技術の無駄遣いとは言われるな、それは歴史が語ってるんだが」
「東の国ってなんか夢に溢れてるような」
ヘルムートも行った事があるから言える東の国の奇抜さ。
それは技術の無駄遣いとすら言える変態な天才の多さでもある。
そんな東の国の歴史が国民性にそのままなっているのだろうと言う。
現実にそれを見たからこそ東の国の事は驚きも多かったらしい。
「このリンゴにしたってそうだ、独自に品種改良してこんな甘くしてる」
「まさに職人なんでしょうか」
「東の国の人は一つの物事へのこだわりが強いんですよ」
「だからリンゴは甘くなるし洋菓子のコンテストで優勝したりな」
「こだわりが強いから一芸を極める人が多いっていう事かしら」
ヘルムート曰く東の国の人は多芸よりも一芸の傾向にあるという。
農家ならその育てている作物を徹底的に極めるように。
今食べている焼きリンゴもそんなリンゴに情熱を注いだ農家のものだ。
東の国の人は一芸を極める人が多いからこそ美味しい食べ物や細かい技術が出来るとか。
「一芸を極めるからね、それにしても美味しいアップルティーね」
「それはどうも」
「結局は一つの道を極めるというのは貢献も大きいんだろうな」
「このリンゴがそんな一芸のいい例ですよね」
「東の国って本当に凄いもんよね」
そうして焼きリンゴとアップルティーを美味しく堪能した。
多芸より一芸、それが東の国の食べ物が美味しい理由なのかもしれない。
それは国の文化であり国民性なのだろうとアルとベリンダも思っていた。




