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突然の来訪

騒動もすっかり落ち着いたいつもの日。

アルも完全にヘルムートとの生活に馴染み居着いていた。

ヘルムートは国の内情も気にしつつ商売をする。

そんな中思わぬ人物がやってくる。


「アル、お前なんだかんだで気になってるのか」


「別に、でもヘルムートみたいな人が今は隠居ってもったいないなって」


「ヘルムートもお爺ちゃんだものね」


「我々も若くないですからね、アルさんが羨ましいですよ」


そんな中店の前に顔立ちのいい男性が立っているのに気づく。


ヘルムートはその気品からただの客ではないと察する。


「そこの青年、ワシの店に何かご用ですかな」


「あなたがここの店主ですか?」


「そうですよ、何か買うのですか?」


「それにしても気品があるわね」


「兄上!?なんで兄上がここにいるのよ!」


アルのその言葉からやはりと思ったヘルムート。

ただまさかアルの兄、つまり王子というのは完全に想定外である。


「これは失礼しました、まさか王子殿とは知らずに」


「兄上!こんなところで何をしているのよ!警護もつけずに…」


「自分の身ぐらいは守れるよ、それに母上と父上にも内緒で来たんだ」


「つまり完全なオフという事でよろしいのですか?」


「意外と大胆なのね、驚いたわ」


アルの兄、つまりは国の王子であり王位継承権もアルより上の人間。

とはいえそんな王子が一体何をしにきたというのか。


「僕としてもアルが帰ってこないから少し心配でね、こっそり見に来たというわけさ」


「私は帰らないわよ、どうせ国にいても出来る事なんて大してないんだから」


「と、この子は申していますが」


「アルは頑固なのよ、昔からなのかしら」


「メアさん、せめてそこは敬語を使ってください」


王子はそれに対して別にかしこまらなくてもいいと言ってくれる。

今は完全なプライベートなので敬語を使われると堅苦しいらしい。


公の場では敬語を使うのは当然としても、オフなのだからそこは自由でいいと。

とはいえヘルムートも流石に王子相手にそれは少々躊躇ってしまう。


「そういえば王子と申していましたが、確かアルさんの兄君は三人いましたよね?」


「うん、僕は次兄だね、長兄殿は流石に僕ほど自由はないから」


「そうだ、簡単なものしかないがお茶でもお出しします」


「流石に失礼だものね」


「にしても何をしにきたのよ、まさか私の偵察かしら」


ヘルムートが少しして簡単なお菓子とお茶を持ってくる。

王子相手に質素ではあるが、そんな大したものもないので仕方ない。


「こんなものしかありませんが」


「すまないね、それとアル、母上も父上も心配しているよ、顔だけでも出せないか」


「それは無理ね、私は私に出来る事をするために勉強してるのよ」


「アルも国にいなくても出来る事を模索しているのよね」


「兄君ならアルさんの頑固な性格も存じているでしょう」


確かに王子もその性格については理解していた。

とはいえ仮にも王女のアルの事は心配なのだ。


でも今の様子を見て無理に連れ帰ろうとはしない。

寧ろアルを応援しようとも言ってくれる。


「アルさんも本気なんですよ、我々も悪くは扱いませんから」


「そうか、なら両親には適当に嘘を言っておくよ、アル、体は大切にね」


「兄上…でも私は私に出来る事をして別の形で国に貢献したくはあるわ」


「それにアルも分かってて言っていると思うから」


「なので面倒はしっかりと見させていただきます、家族ですからな」


その言葉に王子もアルを少し羨ましく思ったのか。

家族には適当に言っておくと言い、国の方は自分達に任せてくれと言ってくれる。


「それじゃ僕は帰るよ、オフとはいえあまり長く帰らないとどやされるしね」


「分かりました、それではアルさんの事はお任せください」


「王子様も国をよくしてね」


「ありがとう、兄上」


「大したおもてなしも出来なくてすみませんでしたな」


王子もヘルムートにきちんと頭を下げてくれた。

相手があのヘルムートというのは知っていたようだ。


それと帰る前にこっそり携帯端末のプライベート用の連絡先を教えてくれた。

王子は仕事用とプライベート用の端末は分けているらしい。


家族には秘密として何かあれば連絡してくれていいと言う。

そうして王子は国に戻っていった。


その来訪にヘルムートも流石に緊張していたのは内緒である。

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