リンゴとベリンダ
怪盗騒動も静かになりつつあるいつもの日。
ヘルムート達は特に変わる事もなく暮らしていた。
そんな中洵の関係者から美味しそうなリンゴが届く。
東の国のリンゴの味を久しく味わう事となる。
「リンゴが届きましたよ」
「お、来たな、東の国のリンゴか」
「これが東の国のリンゴなんですか?」
「ええ、蜜がたっぷりで美味しいですよ」
ベリンダはそんなリンゴに興味津々だ。
お菓子作りなどが好きな身としてはやはり気になるのだろう。
「とりあえず一つ食べてみます?数はあるので」
「いいんですか?なら食べたいです」
「あんた達だけずるいわよ!」
「お前の嗅覚はなんなんだ?」
「では一つ剥いてあげますね、少しお待ちを」
そうして木花がリンゴを一つ持ってキッチンへ行く。
そこで丁寧なうさぎさんに切り分けて持ってきてくれた。
「どうぞ、うさぎにしてみました」
「お前は相変わらず変なところに一手間使うな」
「では、いただきます」
「…美味しいわね、蜜が凄く甘い」
「東の国のリンゴは蜜を多く含むからこその甘さなのですよ」
確かに甘さは抜群のようだ。
アルとベリンダの反応からもそれが窺える。
以前も洵が言っていたが東の国は食べ物へのこだわりが強い。
それ故にこのような甘いリンゴを作れるのだという。
「これでアップルパイを作ったら凄く美味しくなりそうですね」
「お、いいな、なら今度アップルパイを焼いてくれ」
「分かりました、近いうちにアップルパイを焼いてあげますから」
「やった、楽しみにしてるわよ、木花」
「なんていうのかお二人はカルチャーショックでも受けてますよね」
確かに最初に東の国の食べ物を食べた時から虜である。
ただ決して西の国の食べ物が不味いのではない。
西の国の美味しい食べ物に親しんでいた二人の味覚ですらそれより美味しいと感じた。
それぐらい衝撃的な経験だったのだろう。
東の国の食べ物へのこだわりの並々ならぬものを感じたのか。
二人はそれだけその美味しさに衝撃を受けたようだ。
「にしても東の国って食べ物へのこだわりがハンパないわね」
「輸入品で食中毒でも起こそうものならその国に凄まじい抗議が飛びますからね」
「あの国は食べ物へのこだわりは国難レベルの話になるからな」
「なんですかそれ、凄いですね」
「何の話をしているのかしら?」
そこにひょっこりメアが戻ってくる。
とはいえリンゴには興味はなさそうだ。
「少し東の国の変わったお話です」
「そう、でも確かに聞いていると不思議な感じよね」
「なんか変人の集まりみたいな国ね」
「それも外れてはいないがな、東の国はずっと昔から変態の国だぞ」
「は、はあ…それはどういう…」
ヘルムートも東の国については多少なりとも勉強している。
それで知ったのが東の国の人間は昔から変態だったという事らしい。
「東の国ってもう変な話ばかり聞くわね」
「そういう国だからな、あの国にエロで勝てる国はそうそうない」
「エロって…アダルト的なあれですよね」
「こんな子供の前で何を言っているのよ」
「とはいえそれが東の国ですよ、一芸を極めた変態みたいな人が多いのです」
アルとベリンダもそれには言葉もない。
とはいえ一芸を極めたからこそこのような美味しいリンゴも作れるのかとも思った。
「リンゴは食べ終えましたね、お皿は下げますよ」
「ああ、にしても農家にしても芸人にしても一芸を極めてる奴が多いな」
「東の国って職人の国なのかしら」
「そんな感じはしますね、洋菓子ですら西の国のパティシエを唸らせますし」
「洋菓子の本場の西の国のパティシエを唸らせるって…」
そんなこんなで洵から東の国の凄さを聞いていた。
リンゴは後日アップルパイにもする事に。
ベリンダのお菓子作りは東の国の果物を使うべきかと悩み始めていた。




