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怪盗再び

怪盗や革命団の話を聞かなくなってしばらく。

ヘルムート達はいつものようにのんびり過ごしていた。

だがそんな中新聞で思わぬニュースを目にする。

それは怪盗が再び出現したというものだった。


「なんだ、また怪盗が出たのか」


「新聞の記事には一応なるのね」


「今度は何が盗まれたのかしら」


「今度は王都の企業の溜め込んでた現金だと」


怪盗が再び出たらしい。


相変わらず手口は正確無比かつ巧妙のようだ。


「国は一応動いてるのよね?」


「動いたところで捕まえられるとも思えんがな」


「ヘルムートは信頼してないのね」


「少なくとも怠慢な国に怪盗を捕まえられるとは思っとらんよ」


「あんた元国の政治家なのに国をボロクソに言うわね」


ヘルムートが外交官を辞めた理由もそんな国にあるのは察している。

とはいえアルとしては国を変えられるほどの力がないのが悔しいのだろう。


「あ、姫様、相変わらずですね」


「ベリンダじゃない、珍しく飲み物なんか買ってきたのね」


「この季節限定のグレープジュースですよ、飲みます?」


「ならもらっておくか」


「私はいいわ、オレンジジュースならもらってたけど」


そうしてベリンダの買ってきたグレープジュースを飲む。

ベリンダは新聞の記事を見て怪盗の事を思い出していた。


「また出たんですね、久しぶりに」


「ああ、相変わらず見事な手口だったそうだぞ」


「怪盗とか革命団が出る程度にはどこの国も中身は酷いもんなのかしら」


「政治家に清廉潔白を求めるもんじゃない、まともな奴から消える世界だぞ」


「ヘルムートは辛辣ね、そんなに嫌なの?」


ヘルムートが見ていた世界はそんな汚れきった世界なのだろう。

自分は国をよくしようと努力してきたつもりだった。


だがそれの足を引っ張るのが他ならぬ政治家達だった。

結局は逃げただけなのかもしれない、それをアルも複雑そうに見ていた。


「でもヘルムートは努力はしてた、それでも何も変えられなかったのよね」


「まあな、まともな奴は政治家ではなく学者になる、そんな風にも言うぐらいだ」


「まともな人ほど政治家になりたがらない、って事ですか?」


「言葉の解釈はそんなところだろうな、外交官として他の国も見たがそんなもんだ」


「つまり政治家はまともじゃない人の集まりなのかしら」


他国の政治家にも触れているからこそその言葉の意味を理解したのだろう。

外交官として他国の政治家達を見て、その人達もクセの強い人ばかりだった。


結局政治家なる人間にまともな人間は少ないのだろうと感じたらしい。

その一方で学会などにも呼ばれた事があるらしく、そちらは印象も違ったらしい。


学者の人達が言う事は多くが的を射ていた。

破綻した事を言う学者も当然いたが、政治家よりは筋の通る事を言っていたそうな。


「まあなんだ、政治家は黒い生き物なんだろうよ、ワシはそう思っている」


「私はそれが全てとは思いたくないわ」


「そりゃ全部じゃないさ、ただまともな事を言う政治家は悉く負けるもんだ」


「正しい事が封殺されるのが政治の世界なんですね」


「全部ではないにしても、黒い世界なのね」


ヘルムートは政治家は黒くてなんぼだと感じたのだろう。

今回も怪盗を簡単に逃がす辺り、何をするにも後手後手なのだと感じる。


結局何かを変える事の難しさだけは知ったのだ。

変えるというのはとても難しい、それが現実だ。


「結局政治家より学者の方が筋の通ってる奴は多い、そう感じたな」


「ヘルムートさんは努力はしてたのに…」


「その悔しさは本物なんでしょうね」


「老兵は去るのみ、結局そうなってしまったな」


「ヘルムートの悔しさは強いのね、それだけ」


怪盗は今後も現れるだろう。

それに対応する国の姿勢が国の今を表すのかもしれない。


国の人間だったヘルムートとアルはそんな国に何を思うのだろうか。

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