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みかんの箱

怪盗騒動や革命団の話は聞かなくなってしばらく。

ヘルムート達はいつものように何事もなく暮らしている。

アルとベリンダもすっかりこっちの生活に染まりきっていた。

そんな中この季節には嬉しいものが洵の関係者から届いていた。


「また大量によこしたもんだな」


「季節ですしね、知り合いに農家などはたくさんいますし」


「また何か届いたのね、ってかこの箱なに?」


「みかんって書いてありますね」


アルとベリンダは先日みかんジュースは飲んでいる。


だがみかんの実物ははじめてのようだ。


「お前この前言ってたろ、こいつがみかんだよ」


「この箱に入ってるのがみかんなの?」


「ええ、私の地元だと冬はこたつにみかんがお約束ですよ」


「こたつ?ってなんですか」


「悪魔の機械だな」


こたつは悪魔の機械というヘルムート。

だがまんざらでもないのがある意味皮肉を効かせている。


洵もこたつは人間を堕落させてしまうと言っているのだ。

アルとベリンダはよけいに気になってしまっている。


「おや、みかんが箱で届いたんですね、日の当たらない場所に置けばいいですか?」


「ああ、そうしてくれ」


「せっかくですし一つ食べません?箱で三つですし冬はなくなりませんよ」


「なら食べたいわね」


「私も食べてみたいです」


とりあえずアルとベリンダに食べさせる事に。

食べ方も洵が丁寧にレクチャーしてくれる。


「みかんはまずヘタに指を当ててそこから花が開くように皮を剥くんです」


「えっと、こうですか?」


「お上手ですね、そして皮を剥いたら中の白い筋は取ってから食べてくださいね」


「ええ、分かったわ」


「その白い筋は食えないってわけでもないんだがな、ただ取って食う奴が多いか」


みかんの皮を剥いて中の果肉を口に運ぶ。

それは西の国にはない甘さだった。


「美味しい…凄く美味しいわね」


「みかんは季節的には冬の果物なのですよ」


「果肉も一口サイズで、それに凄く甘くて…凄く美味しいです」


「こいつはあとを引くんだ、気づいたら五つぐらい消えてたりする」


「ヘルムートさんもすっかり東の国の習慣などが染みついていますね」


そうしているうちにみかんを食べ終える。

箱はとりあえず木花が日の当たらない冷暗所に置いてくれる事に。


これで冬の蓄えは充分である。

出来ればこたつも欲しいと思うところだが、流石にそれは難しいかと思った。


「ってか東の国ってなんでこんな食べ物が美味しいのよ」


「別に西の国でも食べ物は美味いとワシは思うがな」


「でもなんていうのか、食べ物へのこだわりが違う気はします」


「ふむ、それはありそうですね、実際農家なんかも自分の作る作物に誇りを持っています」


「ただ西の国の方が美味いものも当然あるがな」


ベリンダの言う食べ物へのこだわり。

それは東の国は職人など仕事に誇りを持つ人間が多いからではと洵は言う。


実際に工芸品一つ取っても細かい部分にもこだわる仕事をするらしい。

そういった仕事への誇りや信念が美味しい食べ物や美しい工芸品を作れる理由だろう。


「東の国は職人が多いんですよね、細かい作業に関してはピカイチですし」


「確かに洵の刀もそうだし木花の着物を見ても美しさは感じるわね」


「東の国は聞いた話ではいつからあるかも分からないぐらい歴史があるらしいな」


「つまり国の歴史が凄く長いという事ですか?」


「ええ、西の国の歴史が2000年ぐらいですが、東の国はその倍ではすまないとか」


国の歴史にも諸説はある。

だが洵も国の歴史を調べた際にあまりの途方もない歴史に驚いたらしい。


「なんにしても東の国は仕事を誇りとする文化があるという事です」


「西の国とか北の国も確かに凄い国なのに霞むわね」


「まあそこは感じ方の違いだ、それが国の歴史や文化だよ」


「国民性とかそういうものですね」


「さて、みかんは好きに食べていいですけど食べすぎないように頼みますよ」


冬の蓄えも出来たのだが、アルとベリンダはそれからもよく食べている。

みかんがよほど気に入ったのだろう。


冬はこれから始まるのである。

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