東の国の変わり種
怪盗や革命団の話も聞かなくなったそんな日。
ヘルムートはいつも通りの生活に戻った事に安心していた。
そんな中洵の関係者から少し面白いものが送られてくる。
それは東の国の少し風変わりな食べ物の詰め合わせだった。
「また面白いものを送ってきたものですね」
「こいつは東の国の食べ物か、しかし風変わりな…」
「また東の国の食べ物が送られてきたのね!」
「今度は何が送られてきたんですか!」
どこから嗅ぎつけたのかアルとベリンダもやってくる。
とはいえ今回は少し風変わりなものなので口に合うのだろうか。
「…まあいいのか?」
「とりあえず見てみます?今回は口に合うかは分かりませんけど」
「何よ、なんか言葉を濁すわね」
「今回は何が送られてきたんですか?」
「東の国の地域限定と言うか、そういう食べ物だ」
ちなみに箱の中身は鍋や粉物の調理セットなど。
他には限定品の惣菜パンやお菓子、飲み物などが入っていた。
「レモン牛乳?他には…お好み焼きセットとか鍋の素…なにこれ?」
「たぶんこういうのは簡単な調理セットですね、あとは…」
「東の国っていうのはどうにも風変わりでな、地域限定の食べ物がやたらとある」
「なので食べ物を制覇する気になると旅行状態なんですよ」
「ふーん、とりあえずこのチョコもらっていい?」
早々にアルが興味のあるものに手を伸ばす。
それは抹茶の生チョコだった。
「まあ日持ちはそんなしないしな、さっさと食ってしまうか」
「調理セットはあとで木花さんに作ってもらえばいいですかね」
「やった!それじゃいただきます!」
「わ、私も!」
「…すっかり食い意地が張っちまってるな、この二人は」
そうしてそれを食べてみる。
無難なチョイスなのか露骨に不味いものは入っていない様子。
「美味しいわね、変わり種って言う割に」
「露骨に変な味のものは流石に入れてないとは思いますよ?」
「このいきなり団子?っていうやつ美味しいです」
「…こいつはやめとくか」
「今取り上げたの何よ」
ヘルムートが今取り上げたもの、それはジンギスカンキャラメルだった。
自分も食べた事はないものの壮絶な味との噂は聞いている。
アルはそれにも食いついてくる。
とはいえ洵ですらおすすめしないと太鼓判を押す。
「本当に食うのか?どうなっても知らんぞ?」
「いいから食わせなさい」
「完全な自己責任ですよ?同意書にサインします?」
「そ、そこまで言うキャラメルってどんな味…」
「逆に気になるわ…サインとかいらないから食べさせて」
とりあえずどうなっても知らないとだけは言っておく。
その上でアルとベリンダはジンギスカンキャラメルを口に運ぶ。
「…なんかこの世の不味さという不味さを凝縮した味だわ」
「これ完全な罰ゲームですよね、拷問にでも使うんですか?」
「だから言ったんだ、しかも散々に言うな」
「これ考えた人は本当に偉大だと思いますよ?私でも二度と食べたくないです」
「東の国の食べ物は美味しいっていう考えをぶち壊したわね」
本当に散々な言われようである。
洵ですら二度と食べたくないと言い切るのだから。
そうして他にも手を伸ばす。
他には露骨に不味いものはないようで。
「このカステラっていうの美味しいわ!甘いしふわふわで!」
「あの、このうなぎパイってあのうなぎ…ですか?」
「うなぎパイはうなぎを使ってるわけじゃないから安心して食え」
「わ、分かりました」
「味が露骨に不味いものは流石に入ってないですが、たまにこういうのもいいですね」
全部ではないがそこそこ食べてしまった。
アルとベリンダにも意外と好評だったようだ。
「このみかんジュースって美味しいわね」
「みかんってオレンジとは違うんですか?」
「説明しろと言われると難しいな、まあ東の国のオレンジ的な立ち位置なのか?」
「だとは思いますけどね、はっさくとかキンカンだって柑橘類ですし」
「なんかよく分からないけど美味しいからいいわ」
そんなこんなでお菓子に舌鼓を打ったアルとベリンダ。
とはいえジンギスカンキャラメルはそれ以降触ろうとすらしなかった。
お好み焼きや鍋、ラーメンや肉などはあとで木花に任せる事にする。
東の国の変わり種は意外と新鮮のようだ。
アルもベリンダもお菓子は大好きである。