メアの出会い
怪盗騒動もすっかり落ち着いた様子の日々。
とはいえ今後も油断は出来ないのだろう。
この街はいつものように何もなく時間はすぎる。
そんな中メアが珍しくベリンダと外に出ていた。
「メアさんって本当に口数が少ないというか」
「感情表現はあまり得意じゃないの」
「そうなんですか?」
「よけいな事は喋りたくないもの」
そうしているうちにケーキ屋の前にやってきた。
するとメアが鋭く反応する。
「…ベリンダ、あれ」
「ん?えっと、オレンジパイ?あれが食べたいんですか?」
「ええ、食べたい」
「まあ買っても大丈夫ですよね…」
「美味しそう」
メアがすっかりオレンジパイに釘付けである。
ベリンダも仕方ないのでそれを3ピースほどお買上げになる。
近くのベンチでそれを食べる事に。
メアはとてもキラキラした目をしていた。
「どうぞ、パイは生地がポロポロするので気をつけてくださいね」
「ええ、いただきます」
「にしてもオレンジパイですか、先日まではなかったので新商品みたいですね」
「美味しいわ、とても美味しい」
「…メアさんってオレンジを使ってあれば普通にご飯食べるんでしょうか」
そんな考えもしつつメアの美味しそうな顔を見る。
こんな可愛い顔をしているがスカートの中には怪物が住んでいるのだ。
「タマ?タマも食べたいの?いいよ、あげる」
「へっ、メアさんのスカートから…な、なんですか、これ?」
「タマ、私の友達」
「は、はぁ、タマさんですか…」
「ベリンダはいい人、襲っちゃ駄目」
その姿にベリンダはどこか冷や汗をかいていた。
このスカートの中から伸びるものはなにかとてつもなく恐ろしい何か。
そんな感じがしたのでごくりと唾を飲む。
とはいえメアの様子からしても襲われる事はないと思っておく事にした。
「美味しかった」
「そ、そうですか…それじゃ帰りますか?」
「うん、帰ろう」
「タマさん…なんか凄い…」
「タマは友達よ」
そうして家に帰る二人。
帰ってからベリンダはヘルムートと木花に少し相談する事に。
「あの、メアさんの事で訊きたい事が…」
「なんだ?あいつの偏食の事か?」
「それもあるんですけど…えっと、タマっていうあれは…」
「タマさんですか、あれは彼女に懐いてしまっているんですよ」
「は、はぁ、でもなんか凄い怖いような…」
それも無理はない。
ベリンダは確かにタマから何か恐ろしいものを感じていた。
「とはいえタマも馬鹿じゃない、メアがきちんと躾ければ襲いやしないさ」
「な、ならいいんですけど…」
「それともう一つ何かありますよね」
「あ、はい、えっと外でオレンジパイを食べたんです、それについてで」
「オレンジパイ?話してみろ」
メアが美味しそうにオレンジパイを食べていた事を話す。
それから二人はメアはオレンジを使ってある料理なら彼女も食べるのかと考える。
とはいえオレンジを使ってある料理自体レパートリーは意外と少ない。
そもそも果物を普通の食事に使うのは敬遠される事も多いからだ。
「オレンジを使った飯のレシピか、菓子ならともかくな」
「あるにはあるんですけど美味しいんでしょうか」
「難しい問題ですね、オレンジの炊き込みご飯などもありますが好みは分かれますし」
「やっぱりお菓子類で妥協するしかないんですかね」
「あいつに食わせるためとはいえそれは流石のワシでもきついぞ」
そうして考えた結果やはりお菓子類で落ち着く事になった。
やはりオレンジを使った食事は好みがあるという結論である。
「でもいい情報を感謝しますね」
「あ、はい、私も偶然だったので」
「オレンジパイな、菓子類なら他にもレシピはある」
「ですね、偏食も少しは改善されるといいですけど」
「試しにいろいろやってみます、物は試しですね」
そうしてメアの意外な食事の事情を知る。
とはいえオレンジばかりの偏食は変わりそうにはない。
メアの食事の事情は難しいものである。




