男の飯
怪盗騒動から数日、街に戻ったヘルムート達は元の生活に戻っていた。
とはいえ怪盗に革命団と何かと騒がしいのには少し疲れ気味である。
国になんとか出来るとも思わないが、一応任せておく事に。
そんな中今日の昼時に思わぬ事になる。
「お腹空いた、何かご飯」
「あのな、っと、そういえば今日は木花は少し遅くなる用事があったのか」
「つまりご飯を作ってくれる人は…」
「ベリンダさんは作れるのでは?」
とはいえ木花がいないとなると食事にも困る。
そんな中洵が一つ提案をする。
「では私とヘルムート殿で何か作りますか、大層なものは作れませんけどね」
「やれやれ、洵、確かに簡単なものなら作れるんだがな」
「変なもの出さないわよね?」
「流石にそれはないと思いますよ?」
「私はオレンジがあればいいわ」
メアはオレンジがあればいいと言うがどうにも心配である。
とはいえ空腹のままでも仕方ないので、ヘルムートと洵がキッチンに立つ事に。
「冷蔵庫になにかあるか?」
「ハムと卵が少々、あとはピーマンと玉ねぎ…それと青ネギがあります」
「ならチャーハンでいいな、店のようなパラパラは作れんがな」
「本当に作るのね」
「食べられるものは出ますよ、たぶん…」
とりあえずヘルムートがその具材を適当に細かく切っていく。
木花は毎回多めに炊いた米を冷凍して保存している事が多い。
幸い冷凍庫にも先日の米が冷凍して保存してあった。
レンジで米を解凍し先ほどの具材と一緒にフライパンにぶち込み炒めていく。
「技術の発展というのも生活を便利にするものだな」
「ですね、ガスや電気、そういった生活に必要なエネルギーは人類の知恵です」
「洵は何を作ってるのよ」
「私ですか?鶏ガラスープの粉末があったので卵スープですよ」
「あ、いい匂いがしてきました」
そうしているうちにチャーハンが出来上がる。
洵の卵スープも程なくして完成する。
ついでに野沢菜の漬物が少しあったのでそれも一緒に出す。
こうして男の作る飯で食卓が彩られる。
「店のものに比べたら大した事はないがな、最低限食える味には出来てるぞ」
「野沢菜の漬物があったのでそれも出しました」
「確かに少し不格好ではあるけどいい匂いね」
「ではいただきます」
「一応料理そのものは出来るんだが、立派なものは作れん、木花には勝てんさ」
そうしてそのチャーハンを堪能する。
漬物も美味しいし洵の作った卵スープも美味しそうに食している。
「美味しいわね、確かにお店のものには劣るけど家で作るチャーハンって感じ」
「そうか、なんだかんだで美味そうに食ってるならそれでいい」
「こっちのお漬物も少しピリッとして美味しいです」
「東の国の特有の野菜ですからね、こっちだと手に入りにくいですから」
「にしても姫様もすっかりこういう飯に舌が慣れたもんだな」
ここに来た当初はアルも食事にはある程度文句を言っていた。
とはいえ木花の料理を食べているうちに舌が馴染んだのだろう。
ベリンダも木花に料理を教わっているうちに舌が肥えたようだ。
豆腐ハンバーグや焼きおにぎりを好きになる辺り、味には納得したのだろう。
そうしているうちにヘルムートのチャーハンは完食されてしまった。
漬物と卵スープも見事に完食である。
「美味しかったわ、また機会があったら何か作りなさいよ」
「やれやれ、まあ機会があればな」
「木花さんには敵いませんがね、それでも簡単なものなら我々にも作れますし」
「メアさんは相変わらずオレンジなんですね」
「これがあれば充分だから」
そうして食後の休憩を取っていると木花が帰ってくる。
買い物も済ませてきたらしく夕食の仕込みにすぐに入っていった。
ちなみに食事の食器はきちんと洗ったし丁寧に乾かした。
意外とマメなのもヘルムートらしさである。
「そういえば食事は誰が?」
「ワシだ、冷蔵庫にあったものを適当に使ったが構わんだろう」
「別に構いませんよ、元々そのために意図的に余らせていますし」
「流石は木花さんですね、抜かりがありません」
「ふふ、メイドロボですからね、こういう事も計算していますよ」
そんな木花には脱帽である。
とはいえ男飯にアル達もなんだかんだで満足していた。
機会があればまた作るかとヘルムートも嬉しそうだった。