怪盗推参!
王都に滞在し夜を迎えた。
予告状通り怪盗は出現するのか。
ヘルムート達は資産が保管されている場所の近くに潜み様子を見る。
警備も厳重なその資産の保管庫に本当に出るのか慎重になっていた。
「静かね、流石は王国の警備だわ」
「怪盗はあの程度の警備は簡単に抜けるわ」
「メアも本を読んでいて覚えたのか」
「でもこうも静かだと逆に不安ですね…」
ベリンダの不安も分からなくもない。
そんな中資産の保管庫の方から声がした。
「出たぞ!馬鹿な!?すでに侵入されている!?手際がよすぎる!急いで向かえ!」
「ほらね、手際がいいでしょ」
「ってか警報とかあるのにどうやって侵入したの?」
「やっぱりそういうのを熟知してて…」
「地上から逃げるとも思えんな、上を見ておけ」
ヘルムートに言われた通りアル達は空を見る。
すると機械製のグライダーで逃走を図る怪盗の姿を目撃した。
「あいつ…警備は何をしてるのよ!」
「下手に発砲も出来んだろうな、怪盗とはいえな」
「でも法律上では余地なしの場合のみ射殺可能では?」
「どうやって追いかけるの?」
「決まっているだろう?走るんだよ!」
そうして怪盗の行先を追いつつ走る。
ヘルムートの足の速さにアル達も必死についていく。
「ヘルムート、あんた、なんでそんなに、足が速いのよ!」
「若いもんには負けるつもりはないだけだ、さっさと走れ!」
「国の警察も近いうちに追いつくわ、それまでに墜とせれば勝ちよ」
「はぁ、はぁ、私も足には自信はあるんですけど、ヘルムートさん、速い…」
「情けない、今回は我慢だ!」
そのまま怪盗をひたすらに追いかける。
そして面倒になったのかベリンダが自分の喉に手をかける。
「クェーッ!」
「なんだ!?この鳴き声は…ハゲタカか!?」
「怪盗のグライダーが揺れてる!墜ちるわよ!」
「そっちに急ぐわよ」
「だがハゲタカの姿などどこにも…」
そうしてグライダーが墜ちた先へ走る。
そこには先程の鳴き声に一瞬でも動揺したのか、見事に広場に墜ちていた。
「観念なさい!」
「さっきの鳴き声…あれはあなたの仕業ですね」
「そうです、少し意地悪させてもらいました」
「それで?その悪趣味なパピヨンマスクを取ってもらおうか」
「ふふ、お断りですよ」
怪盗はこの期に及んでも余裕の表情を見せる。
逃げられる余裕があるのか。
「うふふ、逃げ道は全て記憶しています、それでは、失礼致します!」
「なっ!?ワイヤーですって!?」
「ワイヤーを巻きつけて屋根の上に!」
「あいつ逃げ道は全て記憶していると言っていたな、つまり…」
「ああ、もうっ!私としたことが!」
その直後に警察が駆けつける。
ヘルムートは一応事情を説明し逃げられた事もきちんと伝えた。
「そうでしたか…まさかあの警備を抜けられるとはこちらも驚いていて…」
「クロードは悪くないさ、相手の方が上手だったというだけの話だ」
「はい、ですが怪盗については今後も国として情報を周知させます」
「そうか、お前は若い、その若さを国のために使え、いいな?」
「はい!ヘルムート殿に少しでも褒められた事は光栄に思います!」
そうしてクロードは怪盗についての情報を公開にかかった。
国としても革命団の事もあり、こういう事は慎重にならねばならない。
ヘルムートはそんなクロードが国に潰されない事だけを願っていた。
ガラシャ革命団、怪盗メルトリリス、この国も騒がしくなったものだと感じていた。
「さて、ベリンダの事も説明してもらおうか」
「それは帰ってからでもいいですか」
「構わんぞ、早朝の航空便で街に帰ってからな」
「ベリンダ…」
「怪盗は今後も現れそうね、どうなるかしら」
そうして怪盗には結局逃げられた。
ヘルムート達は国に今後を任せ街へと帰る。
ベリンダの事も気になる以上話は聞いておく事にした。




