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ベリンダの夢

革命団の町長襲撃から一週間と少しが経過した。

国はそれを受け国内の警備を厳しくするように通達を出した。

当然この街にも兵士は増員される事となった。

だがどこかお気楽なその兵士達にヘルムート達は何を思うのか。


「兵士の増員か、まああんな事件が起こったんだから無理もないだろうな」


「でも兵士を増やしたところで防げるものなんでしょうか」


「単純に数を増やしたって無理だな、兵士達も随分とお気楽なものだ」


「あれがうちの国の兵士?たるみすぎでしょ」


正直アルの方が強そうに見える程度には士気は低い。


とはいえ仮にも国の軍人なのだからそれなりの訓練は受けているはずである。


「でもやっぱりそれしかないんですよね、私はそれは…」


「ベリンダは兵士に何か嫌な思い出でもあるのか?」


「ベリンダは西大陸の出身なのよ、確かエインセルっていう国ね」


「エインセルといえば西大陸の中でも特に歴史のある国か」


「はい、私はそこの技術者の家の生まれで」


ベリンダは技術者の家の生まれだそうだ。

だが今はアルの侍女として働いている。


恐らく何かしらの理由があるのだろう。

ヘルムートもそこは深く詮索しない事にした。


「おや、何をなさっているのですか」


「木花か、少し兵士達のたるみ具合を見ていた」


「ヘルムートさんも意地悪ですね」


「…私は逃げたんですよね、だから国には帰りません」


「ベリンダは夢もあるのよね、その道は険しそうだけど」


ベリンダの過去については触れないでおく。

だがエインセルで何があったのかはなんとなくではあるが察していた。


「…あの、もし私がお菓子屋さんを開きたいって言ったら笑いますか?」


「お菓子屋な、女の子らしい夢でワシは悪いとも思わんぞ?」


「私もですね、特にエインセルはお菓子の美味しさに関しては世界最高峰と聞きます」


「私はベリンダの夢に投資してるから言うまでもないわね」


「姫様も何気にいい奴だな」


とはいえ何か複雑な過去があるのも確かなように感じる。

ベリンダは兵士を見てその顔を少し歪ませていた。


「なんにしても革命団の脅威がなくなるまでは兵士はこのままだろうな」


「ヘルムートは嫌なの?」


「嫌ではない、だがあのお気楽さを見ていると危機感も何もないな」


「兵士は国のために命を捧げるもの、私の国ではそう教わりますから」


「それは本来あるべき教えですね、軍隊は国に命を捧げてもいい人の集まりです」


木花の言う事も尤もだ。

だがこの国の兵士達のたるみ具合にヘルムートは悲しげな目をする。


尤も戦争にそんな簡単になるような事もないので無理もない。

それでも革命団の存在がある以上気を引き締めねばならないはずだ。


「ベリンダが私に出会うまでどんな過酷な人生だったのか、想像したくないわね」


「私はアル様に仕えていくだけです、それが恩返しですから」


「義理堅い奴だな、だがその義理堅さを大切にしろよ」


「はい、そうしますね、ヘルムートさん」


「それにしても革命団ですか、情報の限りでは全世界にその拠点はあるそうで」


ガラシャ革命団は今や世界規模なのだという。

西の国で生まれ悪徳政治家を憎むその集団はその規模を大きくしていったのか。


この国にも当然革命団の拠点はどこかにあるのだろう。

頻繁に起こすとは思えなくとも、そのうちまた何かが起きそうな気がする。


「目的は手段を正当化しない、忘れるなよ」


「何よその言葉、でもその通りなのかしら」


「目的は手段を正当化しない…」


「ヘルムートさんは本人なりの考えがあるんですよ」


「世の中は嫌なもんだな、革命団が生まれる程度には、か」


ヘルムートが政治の世界を引退した理由もアルはなんとなく察している。

兵士のたるみ具合からもそれに納得するには充分だった。


革命団の行動はしばらくは鳴りを潜める事となる。

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